新分隊の誕生
「よし、君たちはこれよりポヨン隊の分隊に任命する」
僕が敬礼ポーズでそう言うと、シガ湖でテイムしたスライム達がピョンピョンと飛び跳ねて応える。
ポヨンとケロンが連れて来たシガ湖のスライム。彼らは…一味違った。
何が? えっと、一言で言えば「色」だ。
なんかみんな緑っぽい色をしてるんだ。青色じゃなくて薄っすら緑かかった透明な丸っこいプルプル。青もきれいだけど緑もきれいだ。
その中でもひときわ緑がきれいなスライムがいたから彼を分隊長として任命することにした。名前は「プワン」。ポヨンにスライム達がどこにいたのか聞いたら、「湖の真ん中でプワプワ浮いてた」って言ってたから。
あの短い時間でよく真ん中まで行けたなあって言ってたら、御者のおじさんが風があったからって教えてくれた。シガ湖は風向きが時間で変わるんだって。でもなんでおじさんそんな風のことまで詳しいのかな。ま、いいか。
そこからはいつものようにプワン分隊の任命が始まった。
プワンをポヨン隊の分隊長に任命した後、緑が濃いスライムを5名選んでプワラン、プワリン、プワルン、プワレン、プワロンを班長に任命する。そしてそれぞれの班員を5名ずつ任命。分隊長1名、班長5名、班員5名が5班。これで31名のプワン分隊が任命できた。
ただ、それでもまだいっぱい残っちゃった。どうしようかと思ってポヨンに聞いたら「残りは湖にいてもらったら?」って。なんかシガ湖の水がすごく澄んで綺麗だったのはこのスライム達がいたからなんんだって。水中の小さい水草をスライムが好んで食べてたらしい。ついでにゴミも。
だから残りはテイムしたまま湖に返すことにした。
プワン分隊の任命が終わった時、それまで僕たちの姿をポカンと見ていた御者のおじさんが声をかけてきた。
「このまま旅を続けるか、一旦王都に戻るかどうする?」って。
馬車にはまだ余裕があるからこのまま旅をしてもいいかな?
そのことをおじさんに伝えると、先に進むにはさっき通った蜘蛛の巣の山を通らないといけないんだって。もう日がだいぶ傾いてきてるから山を越すのは夜になりそうで、さすがに夜の山は危険すぎるから平和なこの辺で一泊してから進みたいって。
僕は別に急いでないから全然大丈夫。
それを伝えると、おじさんがニンマリ。なんで嬉しそうなのかと思ったら、また水草を採ってきて欲しいって頼まれた。なるほど、そう言うことか。
ってことで、再びポヨンの出番。ポヨンにお願いすると快くオッケーしてくれた。湖にピョンピョン向かっていくポヨン。なんかプワン分隊ができてポヨン隊が大きくなったからか、隊長のポヨンがさらに早く動けるようになったみたい。
湖に「ポチャン」と飛び込むポヨン。水面に浮かびながら形が変化していく。うん、これは船だね。小さな船。でも船のお尻の部分になんかお花みたいなのが付いてる。あ、お花が回り出した。
船のお尻のお花が勢いよく回り出したらポヨン船がすごい速さで進んでいった。唖然とする僕とおじさん。なんかポヨンがどんどん変になってく気がする。ちょっと前まではただポヨンポヨンしてる青くて丸っこいだけの子だったのに。
そんなポヨンはすぐに帰ってきた。たくさんの水草を引っ張りながら。陸に上がって大量の水草をひょいっと陸に引っ張り上げる。ポヨンがすごい力持ちになった。
御者のおじさんはポヨンが持ってきたたくさんの水草を見て大興奮。早速白い布を持ってきてスープを作り始めた。僕とポヨンは嬉しそうなおじさんの姿を眺める。
プワンとプワン分隊たちは湖にプワプワ浮いている。湖の小さな水草がとっても好きみたい。なんか嬉しそうな気持が伝わってくる。でも、そんな水草があったんだな。僕には全然見えなかった。もしかしてすごい小さいのかな。
おじさんは白い布鍋でスープを煮ながらその横でヒラヒラした水草を糸風船に張り付けて、ケロンに下から火を吹いてもらってる。水草は乾燥させると日持ちするんだって。で、時々何かを塗っているみたい。なんだろ。
おじさんのやってることを見てたらあっという間に時間が過ぎて夕飯時になった。スープはお昼と同じでとっても美味しかった。そして驚いたのが、おじさんが糸風船に張り付けて作っていた水草。パリパリして甘い味がしてすごくおいしかった。あの塗っていたのは甘い調味料だったんだって。
心も体も満たされて、その日は青くてキラキラのポヨンの枕でぐっすりと眠ることが出来た。
翌朝、馬車で出発した僕たちは1時間後に蜘蛛の山に到着する。僕とポヨン、新隊員のプワン分隊は馬車の中だ。ケロンは馬の頭の上で蜘蛛に警戒してもらってる。
蜘蛛に注意しながら進んでいったんだけど、蜘蛛は一匹も現れなかった。もしかしてケロンを怖がってるのかな。僕たちはそのまま進んで前に蜘蛛の巣で道が塞がっている場所に到着した。
ここでは数匹の蜘蛛が巣で何かをしていたんだけど、ケロンを見ると一目散に逃げていった。ケロン、いるだけで蜘蛛が退散していくなんてすごい。
そこからはポヨン隊の出番だ。ポヨンとプワン分隊31名で蜘蛛の巣をシュワシュワしてもらう。見る見るうちに道を塞いでいた蜘蛛の巣がなくなっていく。御者のおじさんもその様子を興味津々で見ている。
プワン分隊長は任命されたばかりだというのに各班長にどんどん指示を出していく。班長は班員に指示を出し、班員は自分の持ち場に行ってシュワシュワ。どの隊員も一定の間隔を空けて蜘蛛の巣を除去している。いつ見てもスライムの連携はすごいね。
そんな感じで、どんどんなくなっていく蜘蛛の巣を見ていたら急に一部分の作業が止まった。持ち場の班長が見に行く。そして班長がポワン分隊長に報告しにくる。ポワン分隊長がポヨン隊長に報告すると、ポヨンから僕にダイレクトメッセージ。
「なにかが蜘蛛の巣に捕まってるらしいよ」
へえ、何だろ?
―――――
ミーノ
職業:テイマー
階級:白狼級
従魔:ポヨン隊(スライム50体+31名new!)
プルン分隊(訓練ダンジョン内)
ポヨヨン分隊(美容サロン手伝い中)
プワン分隊(蜘蛛の巣除去)new!
ケロン隊(カエル113体)
特殊個体:ポヨン(ミスリルスライム)
プルン(黒鋼スライム)
ポヨヨン(橙色のスライム)
ケロン(火吹きカエル)
持ち物:赤い宝石・無料馬車券・チユーブダンジョン・白い布・白い網・糸風船
0319最後尾に現況追加
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