ブラボーブラボー
ポヨンとケロンがフワフワと降りてくる。
二人とも満足げな顔だ。御者のおじさんも拍手喝采。「ブラボー」って何回も叫びながら二人に駆け寄っていく。
ポヨンもケロンも二人でピョンピョン跳ねて、そこにおじさんも混じって楽しそうだ。そんな三人を見ながら僕はあることを思いついた。でもこれはちょっと難しいかも。御者のおじさんに聞いてみようかな。
三人でピョンピョン跳ねて楽しんでるところをちょっとだけお邪魔して、おじさんに僕のアイデアを耳打ちする。おじさんはそれを聞いて目を見開いてびっくりしている。そして、僕の手を両手で握ってブンブン。これって、どういう意味?
おじさんは僕の手を離すと、地面に何かの絵を描き始めた。変な文字や数字をいっぱい書きながらあれこれ考えている。僕とポヨンとケロンはそんなおじさんの顔と地面の文字を覗き込む。
しばらくすると、おじさんが「できた」って言って嬉しそう。なにが出来たんだろう。
不思議に思っていると、おじさんが僕に白い布の作り方を聞いてきた。だからポヨンが蜘蛛の糸から作ったことを教えてあげた。そしたら今度は「ブラボーブラボー」って。どうやらまた白い布を作ることになるみたい。
それから1時間後、僕たちはシガ湖近くの山まで来た。この山にもたくさん蜘蛛がいるんだって。それを聞いてケロンが嬉しそう。いやいや、ケロン、いきなり蜘蛛を全部食べたら駄目だからね。白い布を作りに来たんだからね。
山を馬車で進むと山道が蜘蛛の巣で塞がっていた。以前、ビーゼンと一緒にいた時にもこんな道があった。ってことは、蜘蛛もたくさんいるんだろうな。そう思っていると、蜘蛛の巣からたくさんの蜘蛛が出てくる。そして僕たちを見ると、結構な数の蜘蛛が空中に跳び上がって糸を吹きかけてきた。
そこでポヨンが前に出る。おじさんは水の入った桶を用意している。ポヨンは事前に話していた通りに薄っぺらい丸い形に変形する。おじさんの国では「風船」って言うらしい。
僕とおじさんがスッポリ入るくらい大きい風船。ポヨンったら前よりもすごく伸びるようになってる。さすがミスリルスライム。
大きな風船ポヨンが蜘蛛に向かって飛び跳ねる。すると蜘蛛は風船ポヨンに一斉に糸を吹きかける。ポヨンは蜘蛛の糸が万遍なく付くようにクルクルと回転しているみたい。そして蜘蛛の糸で真っ白になったポヨンが水桶の中に落ちる。水桶の中でもクルクル回転してる。まんべんなく水に浸すためだろう。
そしたら待ってましたとばかりにケロンが次々と蜘蛛を食べていく。あっという間にその場に蜘蛛はいなくなった。
水の中でクルクルしていたポヨンは出来上がった糸の風船の一部を溶かして外に出てくる。中のポヨンが出てきちゃったから糸風船はペシャンコになって水桶の中でプカプカ。おじさんはその糸風船を引っ張り出して調べている。そして出る笑顔の「オッケー」サイン。
糸風船を作った僕たちはまた1時間かけてシガ湖まで戻った。
シガ湖に着くと、おじさんの合図でポヨンが四角い箱になる。その箱にケロンが飛び乗ると、ポヨンは4つの細い腕を出して糸風船の端を持つ。最後におじさんが糸風船をポヨン箱につめこんで…
ピヨーーン
ケロンと糸風船を積み込んだポヨンが大空高く跳び上がった。次第に勢いをなくして落ち始めると、糸風船がバサッと開く。そこへケロンが「ボワッボワッ」と火を吹くと、糸風船はまた上がり始める。
どんどん上がっていく糸風船。今度は湖の上に移動していく。どうやらケロンが上だけじゃなくて横にも火を吹いているみたい。
うん、ポヨン隊隊長とケロン隊隊長が二人でそのまま空の旅に行っちゃった。おじさんは隣で「ブラボーブラボー」って拍手をしている。さて、僕はこれからどうしよう。
何かしようかと思ったんだけどポヨンとケロンがいないと何にもできないのがテイマーの僕だ。だから馬車でお昼寝をすることにした。なんだかんだで2日間馬車に揺られて体も疲れてるみたいだしね。
おじさんが番をしてくれてる中、僕は久しぶりにポヨンなしで眠った。なんかポヨンがいないと馬車の椅子がゴツゴツと頭に当たって痛かった。
だいぶ眠った後におじさんの「ブラボーブラボー」の声で目が覚める。起きて馬車から降りるとポヨンとケロンがフワフワと帰ってきているところだった。
でもなんか飛んでる高さが低いし、上下にゆらゆら。ケロンが「ボワッボワッボワッボワッ」って連続で火を吹いてるみたい。
あれ? 糸風船が小さくなってる? 破れちゃったのかな?
だんだんと近づいてくる糸風船。だけどなんか変。あ、これ、糸風船が小さくなったんじゃないな。箱のポヨンが出発した時よりも大きくなってる。しかも底が丸く膨らんでるみたい。
うん、これはどうやら何かを積んでるようだ。
ようやく陸に着いたポヨンとケロン。二人ともかなり疲れてるみたい。でも僕の心は二人を心配するよりも別のことでいっぱいだ。
なんでって? だって箱になったポヨンから次々とスライムが飛び出てくるんだもん。えっと、総勢…うん、わかんない。
とりあえず、疲れ気味のポヨンが回復するのを待ってみる。するとしばらくしてポヨンが僕の頭に跳び乗った。ポヨンが光り出す。周りのスライム達が光り出す。スライム達の思いが伝わってくる。
そして僕らは繋がった。
―――――
ミーノ
職業:テイマー
階級:白狼級
従魔:ポヨン隊(スライム50体+?)new!
プルン分隊(訓練ダンジョン内)
ポヨヨン分隊(美容サロン手伝い中)
ケロン隊(カエル113体)
特殊個体:ポヨン(ミスリルスライム)
プルン(黒鋼スライム)
ポヨヨン(橙色のスライム)
ケロン(火吹きカエル)
持ち物:赤い宝石・無料馬車券・チユーブダンジョン・白い布・白い網・糸風船new!
0319最後尾に現況追加
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