新しい仲間
蜘蛛の巣の除去が一旦止まった。
目の前にもごもご動いている大きな糸玉。チユーブのダンジョンの罠に引っかかってワックさんがこんな糸玉になってたのを思い出す。でもこの糸玉はあの時の半分よりもだいぶ小さい。
もしかしたら人間の子供かもしれない。もしそうだったら大変だ。
ポヨンに頼んで糸玉を溶かしてもらう。糸玉が上から徐々に溶かされていく。少しして中の一部が見えてきた。なんか緑色した丸いのが動いてる。緑と言ってもポワンみたいに透明のポヨンポヨンじゃない。なんか頭みたいなんだけど。
緑色だから人間じゃなさそうだ。ちょっとホッとする。そのまま溶かしてもらおうとするとポヨンからダイレクトメッセージ。
『ゴブリンだよ~』
ゴブリン? 聞いたことはある。人間の子供くらいの大きさで、弱いくせにいたずら好きで畑を荒らしたり家畜を盗んだり、時々すごく大勢で村や町を襲うこともあるって。あまり喜ばれない…というか、かなり嫌われてる魔物だ。
どうしようかな。このままにしておいた方がいいかも。
するとポヨンから再びダイレクトメッセージ。
『なんかすごく弱ってるみたい』
そうか、弱ってるのか。それじゃあ急に襲ってくることもないかな。まあ、ポヨンやケロンもいるし、襲われても大丈夫そうだけど。
隣のおじさんを見るとすごく嫌そうな顔をして剣を持っている。今にも緑の頭を剣で切りつけそうだ。うーん、弱ってるしな、なんだか可哀そうかも。もしかしたらこのゴブリンはまだ悪いことしてないかもしれないし。
よし、ここはおじさんにお願いしよう。
おじさんにこのゴブリンを助けてほしいとお願いする。でもおじさんは首を横に振る。なんでも昔、ゴブリンに大切な馬車の馬を襲われて食べられちゃったことがあるんだって。そりゃ嫌いになるはずだよな。
僕がどうしようかと悩んでいると、ポヨンがゴブリンの糸玉を再び溶かし始める。おじさんが剣を握ってゴブリンに向かう。ポヨンに溶かされてゴブリンの顔が見えてくる。顔はゴツゴツしてしわだらけ、鼻は鷲鼻で顎が細い。口からは二本の牙。そしてすこし酸っぱい匂いがする。
次に上半身が見えてきた。首も肩も腕も見えてきたけどすごく細い。肋骨がくっきりと見えている。ものすごく弱ってるみたいだ。
でもおじさんはそんなゴブリンに剣を振り上げ…そして振り下ろす。
「ガキン」
ミスリル化したポヨンがゴブリンを覆っておじさんの剣を弾いた。おじさんは目を丸くして驚いてる。さすがにポヨンに切りつけることはできないみたいで、おじさんは首を横に振りながら戻ってくる。剣を鞘に納めて腰に戻す。
ポヨンは器用にゴブリンを覆いつつ糸玉を溶かしていく。そして全部溶かし終わった時には、ゴブリンの全身はミスリルの不思議な銀色に包まれていた。
そしてミスリルが七色に光り出す。
どうやらポヨンが何かをしようとしているみたい。
数秒の間、七色に光り続けたポヨンの光が収まる。そしてポヨンがゴブリンの覆いを解いて元に戻ると、中のゴブリンが姿を現す。あれ? さっきみたいに体が細くない。っていうか、だいぶ小さくなってる。それに色が薄くなって明るい黄緑色だ。
出てきた黄緑色のゴブリンは僕の腰ほどの背丈で顔も体も手も足もふっくらしていた。ついでにお肌もツヤツヤ。
ゴブリンが僕を見て目をパチパチ。そしてにっこり笑って走ってくる。あ、転んだ。でもすぐに立ち上がってまた走ってくる。
ドンッ
僕はゴブリンに体当たりされて勢いよく後ろに吹っ飛ばされた。でもポヨンがビヨーンと飛んできて僕を捕まえて着地させてくれた。ああ、びっくりした。このゴブリンすごい力だな。
ゴブリンは吹っ飛んで着地した僕をキョトンとして見ていたけど、僕が笑顔を見せるとゴブリンもニコッと笑った。
ゴブリンが今度は歩いて近寄ってくる。そして僕の前まで来ると丸っこい手を差し出してくる。僕も手を差し出してその小さな手を取る。ゴブリンの手はプニプニして柔らかかった。
僕とゴブリンが手を握り合うとその二つの手が光り出す。ゴブリンは満面の笑みだ。なんか楽しい気持ちが流れ込んでくる。子供の僕が言うのもなんだけど、無邪気で子供っぽい感じ。そんな幸せな気持ちを感じながら僕らは繋がった。
―――――
ミーノ
職業:テイマー
階級:白狼級
従魔:ポヨン隊(スライム81名)
プルン分隊(訓練ダンジョン内)
ポヨヨン分隊(美容サロン手伝い中)
プワン分隊(蜘蛛の巣除去)
ケロン隊(カエル113名)
ゴブリンnew!
特殊個体:ポヨン(ミスリルスライム)
プルン(黒鋼スライム)
ポヨヨン(橙色のスライム)
ケロン(火吹きカエル)
持ち物:赤い宝石・無料馬車券・チユーブダンジョン・白い布・白い網・糸風船
0319最後尾に現況追加
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