スライムをたくさんテイムしよう
王国のスライム事情
金色の紙吹雪が舞い散る広い部屋。
その下で口をあんぐり開けているのはゴツゴツ鎧のマグン将軍。
エード国王様とシナーノ王子、ギルドマスターはキャッキャッキャッと飛び跳ねて喜んでいる。僕は…そんな4人を見て楽しんでる。
天井の金色飾りがなくなり、紙吹雪もほとんどが床に落ちた頃、マグン将軍の口が一文字に塞がった。そして大きな鼻息をフン。
「王様、まさかこれほどとは。これではスライム一匹で軍が壊滅いたしますぞ」
「はうっ…そ、そうであるな。儂もこれは想像しておらなんだ。こんなのが軍に飛び込んでいったら…考えるだけでも恐ろしいのう」
「父上、スライムは氷系の魔法に弱いという弱点があります。それを利用すれば大丈夫かと」
シナーノ王子様がそんなことを言う。僕はそんな事知らなかったからすごく焦る気持ちに。でも、そこでポヨンからのダイレクトメッセージ。
『ミスリルだから魔法には強んだよ~』
そのことを4人に伝えると4人とも一瞬固まって、そのあと無表情のまま一斉に首を振る。
「ミ、ミーノよ。そのスライムはミスリル…なのか?」
王様が凄く慎重に聞いてくれたけど、どんなに慎重に聞かれてもポヨンがミスリルスライムだという事実は変わらない。それに、今、王様たちと一緒に首を振っていたギルドマスター、あなたには既に話してあったはずですけど?
「本当に、本当なのだな?」
「はい。ミスリルの粉を取り込んで
『ミスリルスライム』になりました」
僕の言葉にまた4人とも首を横に振ってる。いやいや一人は違うから。
「ミスリルは国が管理しているはずだが? どこで?」
僕はチユーブの街付近の川のキラキラの川底のこと、ミスリルが何故かカエルにくっつくことを話す。
4人とも首を振る。いつまで続くんだろ、この首振り。
「ミーノはカエルもテイムしておるのか?」
「はい…」
僕はケロン隊113名のことを話す。また首が振られる。首疲れないのかな。
「そうか、なるほどのう。ミーノ、ちなみにスライムは皆ミスリルスライムになれるのか?」
僕がポヨンに聞くと、『今のところポヨンだけだよ~』とのこと。それをそのまま国王様に伝える。すると、ここでやっと4人がほっとした顔をする。
「ということは、先ほどのような真似ができるのは隊長のポヨンだけということでよいかな?」
僕が首を縦に振ると4人とも肩の力が抜けたように表情が緩む。
「それはよかった。ではミーノ、そなたにお願いがあるのだが聞いてはくれぬか」
「はい、どんなことですか?」
「これ以上ポヨン隊を大きくしないでほしいのだ。いや、率直に言うと、ポヨンのようなスライムがこれ以上増えないようにしてほしい。おそらく、ポヨンがそれほどの力を持つのは、スライムの組織化が原因であろう。大きな組織を持てば持つ程、スライムは強くなる様子。であるから…」
バタン!
いきなり部屋のドアが勢いよく開かれる。あれ? 母さん? と誰だろ。
「あなた、今すぐ王国中のスライムを探してください」
「おお、どうした王妃よ。今は極秘の…」
「あなた、そんな事より、今すぐ王国中のスライムをそこのミーノさんにテイムしてもらってください」
「……?」
「……?」
「……?」
「……?」
うん、そうなるよね。今までの話からして真逆だもん。
「そんな呆けた顔してないで。ほら、見てください。ミーノさんの母ヒーダさんの髪を。この艶と潤い、三十路を過ぎてこの髪質はありえませんわ。これでは二十歳と言っても通用します。この髪どうやったと思われますの? そこのミーノさんのスライムがたった2分で仕上げたのです。これは王国の美容分野に革命が起きますわよ…って、あなた、聞いてますの?」
こうして王妃様の登場によって、王国中のスライムをテイムすることに決まった。
§
「ではくれぐれもミスリルスライムは作らんでくれよ、ミーノ殿」
マグン将軍に何回も念を押されながら見送られ、僕は馬車に乗りこむ。ここでも無料乗車券を見せたら赤いきれいな馬車が登場した。僕はポヨンとケロンを肩に乗せて席に座る。
プルンとポヨヨンは王都トキオに置いてきた。王妃様と王女様がうるうるした目で頼んでくるから仕方なくだ。王妃様にプルン。王女様にポヨヨンがしばらく専属で就くことになった。
母さんはシナーノ王子兼領主様と一緒に馬車でチユーブの街に帰っていった。ビーゼンのメンバーはギルドマスターと一緒に馬でチユーブに向かった。こちらは一日も早く新人冒険者訓練ダンジョンを完成させるためだ。
馬車に揺られながら僕はマグン将軍から貰った地図を開く。地図にはスライムがたくさん生息している地域が記されてる。王国全土に7か所あるみたい。そんなに行けるんだろうか疑問なんだけど、まあ、近いところから行ってみればいいと思う。
地図を見ながらずっと馬車に揺られていたから気持ちが悪くなって途中で止まってもらう。きれいな川があったから丁度気分転換になりそう。ケロンも水に入りたいだろうしね。
いつものようにポヨンを川面に浮かべて川底探索。ケロンは川面をスイスイ気持ちよさそうに泳いでいる。そんな長閑な雰囲気の中にいたらだいぶ気持ち悪さがなくなってきた。
そろそろ馬車に戻ろうかと思った時、川底をニョロニョロと動く影。あれ、これってもしかして蛇じゃないか? ケロンが食べられちゃわないように守らないと。
ケロンは蛇に気づいていないみたい。蛇が川底をすごい勢いでケロンに向かっていく。これはまずい。ポヨンたす…
僕が助けを求める前にポヨンはもう動いていた。ニョロニョロ動く尻尾の先を長く伸びた手でクルンを掴む。蛇は何度もクネクネしながらそれを外そうとするけど、ポヨンの手は一度掴んだら離れない。だって吸い付くんだもん。
蛇はポヨンの手で川辺に引っ張り上げられる。水の中ではよくわからなかったけど、陸に上がってみると赤い蛇だった。しかも、なんか口からボワって火が出てる。なにこの蛇。
ポヨンがこの蛇をどうするのか見ていると、首と尻尾を抑え込んで何もしない。なんでかなって思ったら、ケロンがやって来た。そして蛇を見るとピタリと動きを止める。火を吐き続ける蛇をじっと見つめること10秒ほど。ケロンの口が開くと一瞬で蛇がケロンの口の中に納まった。
ゴックン ケロケロ ボワッ
―――――
ミーノ
職業:テイマー
階級:白狼級
従魔:
ポヨン隊(スライム50体)
プルン分隊(訓練ダンジョン内)
ポヨヨン分隊(美容サロン)
ケロン隊(カエル113体)
特殊個体:
ポヨン(ミスリルスライム)
プルン(黒鋼スライム)
ポヨヨン(橙色のスライム)
持ち物:赤い宝石・無料馬車券・チユーブダンジョン・白い布・白い網
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