王都のギルドへ行くぞ
「さあ、今日は王都のギルドへ行くぞ」
山での蜘蛛の巣騒動は、チユーブから連れて来たプルン分隊と川でテイムしたカエル2匹が解決してしまった。ビーゼンの皆さんにすごく呆れられちゃった。
ポヨンに誘導されて僕を襲ってきた蜘蛛だけど、5匹とも僕の両肩にいたカエルの餌になったらしい。隣で見ていたワッキさんが「カエルが長い舌で蜘蛛を絡めとって食べた」って教えてくれた。
だけど次はそれを見ていた蜘蛛が10匹くらいで襲ってきた。驚いて仰け反る僕だったけど、血胸その10匹も僕の肩から降りた2匹のカエル達がそれぞれ5匹ずつ食べてしまった…みたい。蜘蛛が捕まる瞬間は見えなかったんだけどね、2匹のカエルが口をモグモグしていたから多分食べたんだろう。カエルって凄い。
蛇の餌のはずのカエルが蜘蛛を餌にしている。自然の中ではこうやって命が繋がっていくんだな。そんなふうに感心していたら残りの蜘蛛が散るように逃げていった。
しばらくして覆っていた蜘蛛糸の布を溶かして穴を空けたプルン分隊がポヨンポヨンと出てきた。蜘蛛がいなくなったのを知ってか、残った蜘蛛糸の布も全部シュワシュワしてた。
そこからは再びプルン分隊が力を発揮していった。さっきの悔しさもあったのか、皆すごい勢いで蜘蛛の巣を溶かしまくってた。
日が低くなる前には山道の蜘蛛の巣はすっかり駆除された。もう、きれいなもんだ。ほんと。
で、今は王都の冒険者ギルドに来てる。
もう暗くなってて柄の悪い人たちもいるだろうから明日にしたかったんだけど、ギルドへの報告は今日中の方がいいんだって。まあ、ビーゼンが一緒だから大丈夫だろう。
ギルドの中は受付カウンターとは別に酒場も開かれていた。昼間は食堂だった場所だ。酒場があるんなら柄が悪い人がいると言われるのもわかる。緊張してた僕だけど、ふと気が付いた。酒場にいる人たちは僕なんか見ていない。皆ビーゼンを見ているんだ。しかもビーゼンがギルドに入った瞬間から建物内が凄く静かになった。銀虎級ってやっぱ凄いんだな。
ワックさんが進んでいって受付カウンターで一声かけると、奥から長身で髪の毛の長い男の人が出てきた。結構若そうだ。そしてワックさんを見て手を上げる。
「よう、ワック。ワッキの鳥から聞いてるぜ。こっちだ」
カウンターの奥へビーゼンを案内する長髪の人。僕も入っていいのかなって戸惑っていると、ワックさんが「お前が来なくて報告できるかよ」って、腕を僕の首に巻き付けながら連れてってくれた。
連れて行かれた部屋はとっても豪華な部屋だった。広くてキラキラした部屋の真ん中にテーブルとふかふかの長い椅子が3つ。そこにビーゼンの4人と僕と長髪の人が座る。なぜか僕は長髪の人の隣。ちょっと緊張する。だってこの人絶対に偉い人でしょ。
そう思って固くなっていると、ワックさんからこの人がこの国の冒険者ギルドをまとめているギルドマスターだと聞かされる。つまりチユーブのギルド長のもっと偉い人だ。さらに緊張させるようなことを言うワックさんの目は意地悪に笑っていた。
それを感じてか、ワックさんの膝に乗っていたプルンがワックさんの顔にペチャリとくっつく。息が出来なくなったワックさん、もがきながらプルンを引きはがそうとするけどプルンは剥がれない。ワックさんの顔が赤くなって動きがすごく速くなったところでプルンがしれっと膝に戻る。
肩で息をするワックさんに部屋にいる全員が笑う。ワックさんはプルンを睨んだけど、プルンが体をプルルンと震えさせるとワックさんもニンマリ。こういうところがプルンがワックさんに懐いている理由なんだろうな。
笑いが収まったところで報告に移った。まずは、蜘蛛の巣がどれくらいあったか、蜘蛛がどのくらいいたかを推測も入れながらワックさんが話す。時々ワッキさんがそれに付け足す。ジョートさんとコ・ジーマさんはそれを頷いて聞いているだけだ。
次にスライムに蜘蛛の糸を溶かす力があることに話が移ると、ギルドマスターの表情が引き締まる。そしてプルン隊の組織的な駆除作戦を聞くと目をまん丸にして驚いてた。でも「信じられない」って言うからワックさんが袋を持ってきてプルン隊を部屋に登場させる。
プルン隊はプルンを筆頭に班ごとに分かれて整列。そしてプルンに合わせて一緒にプルルンって震える。それを見てギルドマスターも吹き出し、ようやく信じてくれた。
それから蜘蛛がカエルに食べられたことを話すと、ギルドマスターは天を仰ぐようにしてから両手で顔を覆う。「なるほどな」って一言。「そういうことだ」とワックさん。どういうこと?
ワックさんが僕に説明してくれた。今、王都で人気を博している蛇。その蛇の餌用にカエルが必要になって、王都に近いあの山のカエルが商人の人に沢山捕まっちゃった。それで蜘蛛を食べるカエルが少なくなって蜘蛛の数が増えちゃった。と言う訳らしい。
ギルドマスターは商人ギルドにこのことを報告して対処を依頼するって。これで報告は終わり。と思ったら、ワックさん、チユーブの街のダンジョンの話も始めちゃった。
それを聞いたギルドマスターは腰を浮かすほどに前のめりに話を聞いていた。そして一言。
「よし、きーめた」
それで僕のダンジョンが新人冒険者の訓練所になることが決定した。そして明日からギルドマスターが現地調査に行くことになった。王都に来たばかりなのにまたすぐにチユーブに戻ることになってしまった。
ギルドマスターはルンルンした足取りで部屋を出て行った。僕たちはその場で待たされている。なぜかと思ったら、部屋に豪華な食事が運ばれてきた。お肉がいっぱいだ。お菓子にジュースもある。なんで僕の好きなものをギルドマスターが知っているんだろうって思ったら、これ全部ワックさんの好きなものなんだって。銀虎級の冒険者が子供みたいな食事をしてることに思わず笑ってしまった。もしかしてプルンが懐いたのはこういうところなのかも。
その日は冒険者ギルドの宿舎というところに泊まれることになった。ベッドも布団もきれいでふかふか。窓からはいい風が吹き込んでくる。今夜はポヨンを枕にしないで、初めて一緒に寝た時みたいに、ポヨンに半分だけ毛布を被せてあげた。キラキラ光るポヨンを見ながら僕も静かな眠りについた。
―――――
ミーノ(跳兎級テイマー)
従魔:ポヨン隊(スライム50体)
プルン分隊(森探索中)
ポヨヨン分隊(美容サロン手伝い中)
カエル2匹
持ち物:赤い宝石・無料馬車券・チユーブダンジョン
同行者:ビーゼン(銀虎級)・王都ギルドマスター
0317最後尾に現況追加
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