王都への道中
「さあ、王都へ行くぞ」
昨日は森で見つけた宝箱の盾がまさかの英雄王の盾だったことが発覚してしまって凄く驚いた。しかも僕まで王都に行くことになってしまった。でもまあ、これも王都へ行ってテイマーの冒険者を探すためだと思えば大丈夫。王都ならテイマーの冒険者もたくさんいるはずだから。
昨日は領主様との話の後にそのまま森に行った。そしてポヨン隊と一緒に暗くなるまで宝箱探しだ。他にもすごい宝箱が見つかるかもしれないから。ワクワクしながらみんなで楽しく探索をした。
そしたら発見があった。
プルン分隊のプルリン班のプルリロが岩の小さな隙間から入れる洞窟を発見したんだ。
その場に行ってみると、岩はごつごつした見上げる程の大きな岩で、すぐ横を川が流れていた。岩の下の隠れたところに小さな割れ目があって、そこにプルリロがお宝探しに入って行ったら地下の洞窟に落っこちてしまったらしい。幸い、天井が低くて目一杯に体を伸ばしたら出口に届いたんだって。
翌日の王都行きがなければすぐにでも探索を始めたんだけどね。さすがにもし何かあったら王都行きに支障が出ちゃうからさ。ちゃんと我慢したよ。でもそこで僕は考えたんだ。そしてプルン分隊を呼んだ。
「この洞窟の探索はプルン分隊に任せる。プルン分隊長、この洞窟を探索し、変わったことがあったらプチポヨン経由で僕に連絡すること。よいか?」
プルン分隊長はプルルンと体を震わせて応える。どうやら自分の分隊が洞窟を発見したことでやる気満々な様子だ。一方のポヨヨン分隊長は「いいな~」って感じで見てる。いやいや君たちにも指令があるぞ。
「次に、ポヨヨン分隊、君たちには僕の母さんの美容サロンを手伝ってもらう。ポヨヨン分隊長、こちらも忙しくなるけど、よいか?」
僕の指令を聞いたポヨヨン分隊長はピョンピョン跳ねて答えてくれた。うん、どちらもやる気満々だ。結構結構。
こうして各分隊の役割を決め、家に帰って母さんにポヨヨン分隊のことを説明して僕の準備は終わった。持ち物とかは全部母さんがやってくれるから、僕はカバンを持って馬車に乗るだけ。お供はポヨン隊長一人だけだ。いろいろあって凄く疲れた日だったから、その夜はポヨンに顔をくっつけてすぐに眠っちゃった。
で、翌日朝早く、僕は領主館の前に来た。館前にはしっかりした屋根付き馬車が2台停まっていて、近くには御者の人に護衛の男の人が4人と女の人が1人、それに領主様と僕が加わって計8人、あ、いや、ポヨンを入れて計9人の旅だ。王都までは馬車のゆったり移動で4日の距離。ここチユーブの街から村を1つ挟んだ西側に王都がある。1日は村で宿泊、2日間は馬車での寝泊まりになる。だから泊まれるように馬車はどちらも大きい。出発には執事さんと使用人が全員出てきて見送ってくれた。
前を走るのは領主様と僕が乗っている馬車。御者の人も加えて3人が乗っている。こちらは乗り心地重視の快適馬車だ。後ろは荷物をたくさん積みこむ機能性馬車。護衛の人たちが御者も兼ねて交代で乗っている。2人が馬車に乗り、残りの3人が馬に乗って周りの警戒だ。
まあ、そんな体制での旅だから、僕は必然的に領主様の話し相手になる。始めは少し緊張したけど、それもすぐに慣れた。だって領主様は僕の隣で馬車の振動に揺れてプルンプルンしているポヨンに夢中なんだ。
始めはツンツン突っついたり、撫でてみたり、持ち上げてみたり、顔をすりすりしてみたり、こそぐってみたり、話しかけてみたりしていたけど、僕が「なんでも食べるんですよ」って言ってしまったばかりに、道中に拾った草や、石や、木なんかをずっと楽しそうにポヨンに食べさせてた。そして今は自分の指にはめていた宝石のついた指輪を食べさせている。高そうな指輪だけど大丈夫かな。ポヨンは平気なんだろうけど。
そんなことをしているうちにあっという間に1日目が過ぎ、2日目の目的地のトカイ村に到着した。道中一度も魔物に出遭うことがなくてちょっと拍子抜けって感じだ。だって、護衛の人がすごく強そうだったからさ、もっといろいろと魔物が出てくるのかと思ってたんだ。
僕たちが村に入ると、前もって聞いていたのか村長さんが出迎えてくれてそのまま宴会になった。でも、領主様はお酒を飲まないし、御者の人も、もちろん護衛の人もお酒は飲まなかった。みんな楽しんではいたんだけどね。でもお酒だけは「仕事中だから」って断ってた。こういう姿はとてもお手本になる。僕も大人になったらこの人達みたいな大人になるんだ。
僕とポヨンは小さいからということで先に部屋に戻された。馬車に乗ってるだけだったけど結構疲れてたから、早く部屋にこれたのは正直嬉しかった。部屋に入ったらすぐに寝る準備をする。ポヨンと二人だけの夜はなんだか懐かしい。馬車では領主様が一緒にいたからね。こうやってると初めてポヨンをテイムした日の夜を思い出す。月明かりにキラキラ光って綺麗だったなあ。
ウトウトしかけていると静かにドアが開く。薄目で見ると領主様だった。
「あ、起こしてしまいましたか? すみません。少しだけポヨンさんが見たくなって」
領主様はポヨンのファンになったみたい。でもその気持ちはよくわかる。僕はもうポヨンがいない夜は考えられないから。ポヨンを真ん中に挟んでそのまま僕と領主様は眠りについた。
翌朝は早くに馬車が出発した。なんでも3日目は魔物が多い山を越えるためらしい。山は平地よりも魔物が多いから、領主様のような立場のある人が進む場合は山の安全を1日かけて確認する必要があるんだって。だから今日は山の麓に着いたらすぐに宿泊準備、それを終えたら護衛の人たちは交代で山道の安全を確かめに行くらしい。
トカイ村を出発後、平地では全く魔物が出ず、お昼過ぎには山の麓に到着してしまった。宿泊準備が終わると、護衛の2人が山の中へ入って行った。領主様と馬車を守るのは3人の護衛。領主様はその3人と山越えの行程について打ち合わせを始めた。だから僕はポヨンと一緒に近くを散歩することにする。
「山に入ることがなければ安全」と言われたので、山との境に沿って歩く。ポヨンも久しぶりに地面を移動するのが楽しいようでいつも以上に体を揺らしてポヨンポヨン。
楽しくなってチユーブの森の時みたいにポヨンポヨンして歩いていると、山から小さな小川が流れ出ていた。
もしかして、お魚とかいたりして。
辺りに魔物のいる感じはしないので、ポヨンと一緒に小川に入る。足を浸すと結構冷たい。季節はもうすぐ夏だというのに、この冷たさは山の湧き水が出ているんだろう。プカプカ水面に浮かぶポヨンを見て、「スライムって浮くんだな~」って思っていたら発見があった。透明なポヨンを通して水中を見ると水中が凄くはっきりと見えるんだ。水中で目を開けると目が痛かったり、ゴミが入ったりするんだけど、ポヨン越しに水中を見ていくと川底までがくっきりと見えた。ポヨンは僕が川の中を見ていることを知ると、形を平たくしてもっと見やすいようにしてくれた。
水中がとても綺麗だったからずっと川底を見ながら歩いていたら急に影が現れた。びっくりして顔を上げるとそこにいたのは小さなカエル。目がクリクリして黄緑色一色。なんとなく毒はなさそう。近寄ってみるとピョンっと遠ざかる。また近づくとピョン。あれ、なんか見たことあるなこれ。
そのまま川からあがって川沿いでカエルを追いかける。カエルがピョン。僕もピョン。ポヨンがポヨン。ああ、なんか懐かしい。で、楽しい。夢中でピョンピョンポヨンをしていたら、気が付いたら夕方になっていた。急いで馬車に帰ると領主様が心配していた。護衛の男の人からしっかりお説教をされた後、夕飯をとって馬車で寝る。今日もポヨンを挟んで僕と領主様は眠りについた。
―――――
ミーノ(テイマー)
従魔:スライム プルン隊(洞窟探索中)
ポヨヨン隊(美容サロン手伝い中)
山でカエルとピョンピョンポヨン
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