ポヨン隊の実力

「さあ、午後もテイム…じゃなくていろいろするぞ」


 午前中に47体のスライムを新たにテイムできた。だけど一気にテイムしたことで困ったことがいくつか出てきた。


 まずはお弁当。母さんからもらったお弁当は4つ。ポヨヨンまでの3人と僕の分。その他47人分のお弁当はないし、さすがに分けてあげる訳にもいかない。


 ポヨンに聞いたらみんな大丈夫だって言ってるみたい。だから今回は僕ら4人だけでのご飯になった。


 そして困った事の二つ目は名前だ。ポヨン、プルン、ポヨヨンと来たから次はプルルンかなっていうぐらいにしか考えていなかったんだ。だって一体ずつ連れてくると思ってたから。まさか森中からスライムを連れてくるなんて思ってもみなかった。


 スライムの総数が50になったことで、名前の前に考えていた計画を前倒しすることにした。さすがに50体ものスライムを僕一人で管理することはできない。だからポヨン隊をいくつかの分隊に分けていくことにする。


 まずはじめにポヨン隊長のもと、プルンとポヨヨンを分隊長として任命した。プルン分隊長には24体のスライム、ポヨヨン分隊長には23体のスライムを受け持ってもらう。ポヨヨンは後輩ができた途端に分隊長への任命になっちゃったから心配したけど、ポヨヨンの様子を見るにすごく張り切ってる感じが伝わってくるから大丈夫そう。


 任命が終わると、ポヨン隊長とプルン、ポヨヨン両分隊長が集まって何やらプルプルしだした。なんとなく話し合いをしているみたい。なので、僕は手狭になったポヨン隊の待機場所の拡大作業をすることにする。


 予定の倍の数に膨れ上がったので、だいぶ木を切らないといけなくなった。でも、すごく太い木も何本かあるので僕の持ってきたのこぎりでは無理そうだ。なので、今日のところは太い木はそのままに柵だけでも広げよう。


 柵を作るために小さな木を切っていく。何本か切ったところで何かが僕の足をツンツンするのを感じた。作業を止めてツンツンされているところを見ると、ポヨンが器用に体を手のように伸ばして僕の足をツンツンしていた。


 僕が気づいたのを知ると、ポヨンが足にピトってくっつく。こういう時は何かを話したい時だ。僕はポヨンを手に載せて意識をポヨンに集中する。こうするとポヨンの気持ちが伝わってくんだ。


 そして今回もポヨンから僕にある考えが伝わってきた。その内容は、プルンとポヨヨンの分隊をそれぞれ6人ずつの班に分けたいということだった。そして僕にその班長を任命して欲しいらしい。


 つまり、ポヨン隊長のもとにプルン分隊、ポヨヨン分隊があり、2つの分隊それぞれに4つの班があるという形だ。僕からの指令はポヨン隊長からプルン、ポヨヨン両分隊長に伝わり、両分隊長からそれぞれの4つの班に伝わるということだ。


 僕はもちろんそれを了承する。僕、班のことまで考えられなかったし。


 あ、そうだ。じゃあ、名前を付けるのもそれぞれの分隊で… あ、ポヨンがそれはダメだって。テイマー自身が名前を授けないと繋がりが保てなくなるんだって。


 じゃあ、取り敢えず、プルン分隊の4人の班長から決めよう。


「えっと、プルン分隊で班長やりたい人はいる?」


 おお、凄い、ちょうど4人手が上がった。


「じゃあ、まず君たちの名前を決めよう。君から順に、プルラン、プルリン、プルレン、プルロン」


 4人はそれぞれプルンと震えて応えてくれた。


「プルラン班はプルララ、プルラリ、プルラル、プルラレ、プルラロ、

プルリン班はプルリラ、プルリリ、プルリル、プルリレ、プルリロ、

プルレン班はプルレラ、プルレリ、プルレル、プルレレ、プルレロ、

プルロン班はプルロラ、プルロリ、プルロル、プルロレ、プルロロ」


 全員が何回もプルプル震えて答える。


「じゃ、次にボヨヨン分隊で班長やりたい人? 4人必要なんだけど」


 お、3人手が上がった。あと1人なんだけど…お、もう1人挙げてくれた。空気が読めるとは。末恐ろしいスラムがいるもんだ。


「じゃあ、君たちにまず名前を授けよう。順にポヨラン、ポヨリン、ポヨレン、ポヨロン」


 4人とも答えてくれる。じゃあ次だ。


「ポヨラン班、ポヨララ、ポヨラリ、ポヨラル、ポヨラレ、ポヨラロ、

ポヨリン班、ポヨリラ、ポヨリリ、ポヨリル、ポヨリレ、ポヨリロ、

ポヨレン班、ポヨレラ、ポヨレリ、ポヨレル、ポヨレレ、ポヨレロ

ポヨロン班、ポヨロラ、ポヨロリ、ポヨロル、ポヨロレ」


 こちらも全員プルプルで答えてくれた。


 よし、これでポヨン隊が決まったな。


 あ、念の為、隊長のポヨンにこの他にスライムがいる可能性を確認しとこうかな。


 僕の質問にポヨン隊長が「今はいないよ〜」と答えてくれた。これで一安心だ。


 これで問題は解決した。あとはポヨン隊の待機場所を完成させるだけなんだけど…これって、ポヨン隊に待機場所作りの指令を出したらどうなるのかな。


 思い立ったらすぐ実行したくなってしまう僕。ポヨン隊長を呼んで、ポヨン隊の待機場所のことを相談してみる。


 ポヨン隊長は「任せろ」と右手のような形に変化した体で親指を立てる。どこでそんなサインを覚えたんだ?


 僕の疑問をそのままに、ポヨン隊長はプルン、ポヨヨン両分隊長の元に説明しにく。両分隊長とも親指を立てている。なんか変なの。そして今度は両分隊長がそれぞれの班長を集めて説明をする。班長達も親指を立てる。どうやらポヨン隊でOKサインが作られたみたいだ。変だけど、まあ、いいか。


 OKサインを出した班長達が今度はそれぞれの班のもとへ行って作業の説明をする。もちろんここでも班員一斉のOKサイン。辺り一面で青色のOKサインが出てるのがなんだがちょっと…


 僕の気持ちを置き去りに、ポヨン隊は班ごとに四方へ散っていく。すでにそれぞれの持ち場が決まっているらしく、班長が班員に指示を出している。分隊長のプルンとポヨヨンは僕の前と後でそれぞれの作業を見守りながら、時々班長の元へ行って指示を出す。


 ポヨン隊長はずっと僕の横にいてその場でクルクル回りながら作業の様子を確認している。何回か班長が分隊長の元へ来て何やら話していたけど、分隊長が指示を出すと班に戻っていった。


 そしてまた、一人の班長がポヨヨン分隊長の元にやって来た。班長から話を聞いたポヨヨン分隊長が様子を見に行った後にポヨン隊長のもとにやって来た。隊長のポヨンまで報告が来るのはこの作業が始まって以来初の事だ。ポヨン隊長はポヨヨン分隊長から話を聞くと僕のもとに来て足をツンツン。


 僕がポヨン隊長に意識を集中して話を聞くと、ポヨヨン分隊のポヨリン班で何かの発見物があったとのこと。どうやら宝箱のようで、大木を倒そうと根元を溶かしていたら幹の中から出てきたらしい。


「よし、行ってみよう。ポヨン、折角の発見だからみんなを集めてくれる?」


 ポヨンはOKサインをして分隊長に指示を出した。僕はポヨン隊長とポヨリン班のもとに移動する。


 現場の大木の根元は溶かされて斜めに大きく傾いていた。僕らはポヨリン班長の案内で大木の根元を確認しに行く。すると根元には確かに空洞があり、そこに宝箱があった。


「よし、ポヨン、開けてみようか。罠とかないよね?」


 冒険者登録するときに聞いた冒険者の心得の中に、宝箱の罠のことがあった。だから念のために確認だ。


 僕からの質問にポヨンは宝箱のもとに移動してく。そして体の一部を僕の指先よりも細くして鍵穴にスルスルと入れていく。数秒後にそれを抜き取ると、「大丈夫!」とばかりに僕にOKサインを出してきた。


 それを見て僕は宝箱に移動して蓋を開ける。


 蓋の開いた宝箱の中に入っていたのは、一枚の錆びたボロボロの盾だった。



―――――

ミーノ(テイマー)

従魔:スライム

ポヨン隊

 隊長ポヨン

  分隊長プルン 隊員24名(4班)

  分隊長ボヨヨン 隊員23名(4班)


 ポヨン隊を組織する

 錆びた盾を発見する

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る