集まれスライム

 さあ、今日もテイムするぞ。


 昨日はポヨヨンが加わってポヨン隊を結成した。家に帰る途中にスライム3体を引き連れて街を歩いていたら、街の人の何人かが僕たちを応援してくれた。てっきり笑われるとばかり思ってたからびっくりした。


 でもそれ以外の人たちは鼻の穴を広げながらの挨拶だ。笑いたいのを我慢してるのがバレバレだ。それならもういっそのこと笑ってくれた方がいい。「笑うな」とも怒れない、「我慢してくれてありがとう」っていうのもなんか違う。この僕の気持ちはどうしたらいいんだ。


 モヤモヤしながら家に帰ると母さんが嬉しそうに待っていた。多分、髪の毛シュワワンをやってもらいたいんだろう、って事で直ぐにシュワワンの時間にする事にした。今回はプルンにしてもらった。


 艶々の髪の毛をかき上げて母さんはご飯の準備。僕はポヨン隊とひとしきり遊んだ後はご飯を食べて部屋に戻る。ご飯はポヨン隊の分もしっかり机に並んでいたよ。


 部屋ではポヨン隊がポヨンポヨンとあちこち動き回る。新入りのボヨヨンに部屋の案内をしているようだ。


 それが終わるのを待って僕らはベットにはいる。頭の周りに集まるポヨン隊。そのプルンとしてひんやりした感触に頭を囲まれて僕は心地いい眠りについた。


 翌朝、やたらぐっすりと寝る事ができたと思ったら、僕の頭の下に何故かポヨンがいた。あ、言っておくけど、僕がポヨンを枕代わりにしたんじゃないから。ポヨンが勝手にそうしてただけだから。



 で、今日は森じゃない場所に来てる。


 ここは『冒険者ギルド』っていうところだ。冒険者の人が仕事の依頼を受けたり、魔物を倒してその素材を売りに来るところ。


 学校では用もないのに近づかないようにって言われてる。でも、今日の僕はこの『冒険者ギルド』に用がある。冒険者登録をするんだ。まだ8歳だから親の許可がいるんだけど、母さんはノリノリで冒険者ギルドに承諾の連絡をしてくれた。


 僕は怖そうな男の人の後ろに並ぶ。みんな始めは僕を睨んできたけど、それを見たポヨン隊が僕の危機とばかりに両肩と頭に乗っかって来た。で、冒険者の怖い人はそれを見ると納得したように睨むのを止めてくれた。どうやら僕がテイマーだってわかったみたい。


 『冒険者ギルド』は怖いとこだけだど、ちゃんとしたところなんだってわかった。


 僕の番になって受付の女の人がポカンと僕を見る。そして目がウルウル。頭の上のポヨンに触れてもいいかと尋ねられ、ポヨンも大丈夫そうなのを見てOKを出す。すると受付さんは指でツンツンと優しくポヨンを突っつく。突かれる度にポヨンの身体がプルルンって揺れているのが分かる。


 受付さんは三回ツンツンして机に突っ伏した。そして起きると立ち上がって別の人を呼んできた。その人を受付の席に座らせると、僕を端っこの椅子のある受付に案内する。どうやらここで冒険者登録をするようだ。


 紙に色々と書いて登録が終わるとテイマーの決まりを教えてくれた。受付さんが言うには、テイマーがテイムした魔物には他の魔物と区別するためにギルドが発行する名札を付けないといけないみたい。それがないと他の冒険者とかに攻撃されっちゃうんだって。


 受付さんは僕に金属製の名札を三つくれた。そこにはこの街の名前と僕の名前が刻まれてあった。ポヨンに名札を渡すとポヨンはそれをおでこと思われる部分に張り付ける。貼り付け用じゃないんだけど、引っ張っても吸い付いて離れない。スライムって本当に便利だ。


 「最後に」って、ポヨンを三回ツンツンしては机に突っ伏して動かなくなった受付さんを放っておいて、僕は冒険者ギルドを出た。


 で、今森に来たところ。


「では、ポヨン隊に今日の指令を伝える。今日は君たちだけでここにスライムを連れてくること。できるか?」


 僕が敬礼ポーズをとって司令を伝えると、ポヨン隊はそろって体をプルルンと震わせる。そしてポヨンを先頭に森の中にポヨンポヨンと入っていった。うん、頼もしい姿だ。


 ポヨン隊が姿を消した後、僕は僕で自分のするべきことをする。何をするかと言うと、ポヨン隊の集合場所を作るんだ。3体目のポヨヨンが仲間に入って僕の体にはこれ以上乗れなくなってしまった。それにこれ以上家に連れて帰ったら母さんのご飯づくりがとても大変になってしまう。


 ポヨンは「スライムは食べなくても平気」って言ってた。だから別にうちでご飯を食べる必要もない。母さんの髪の毛シュワワンのためにポヨンを連れて帰ればいいだけだ。


 ということで、あとの隊員はこの森で待機だ。待機と言っても森の中で自由行動なんだけど。


 ただ、僕が森に来るときは全員が集まっていて欲しい。だからここに待機場所を作るんだ。


 僕は大体の広さを決める。広めの方がいいだろうと、小さな木はのこぎりで切っちゃう。そして落ちている木を集めてその場所を囲むように柵を作る。


 不揃いの木に草の蔓で止めただけの歪な柵。それが午前中いっぱいかけてなんとか完成する。これだけの広さがあれば20体は待機できるだろう。


 柵を完成させて細かいところをチャックしているとそこにポヨン隊が帰ってきた。なんか大量のスライムをぞろぞろと引き連れてる。いったい何体いるんだろう。とりあえず、ポヨン隊には連れて来たスライムたちを柵の中に入れてもらう。


 いち、に、さん、よん、ご…


 柵の外からスライムを数える。ポヨン隊にみんながなるべく動かないようにってお願いして何とか数え終わる。


 新しいスライム47体が柵の中をポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨン。


 うん、これはもうスライムの国だ。


 そしてポヨンが柵を越えて僕の足元にやってくる。プルンもポヨヨンもやってくる。スライムたちも次々とやってくる。


 ボヨンボヨンの青い絨毯。


 僕はその絨毯の真ん中に座る。スライムたちが光る。僕の全身が光る。ポヨン隊も光る。そして僕らは繋がった。



ーーーーーー

ミーノ(テイマー)

従魔:スライム

ポヨン隊(ボヨン、プルン、ボヨヨン、他47体)

 



0316最後尾に現況追加




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