ポヨン隊

 さあ、今日もテイムするぞ。


 昨日はポヨンとプルンにいろんなものを食べてもらった。

 おにぎりと干し肉から始まって、石、草、木と食べたところでポヨンが僕の頭に乗っかった。そのままビヨーンの伸びて帽子のように頭に被さる。そして僕の頭がシュワシュワシュウワー。髪の毛がツヤツヤのサラサラになった。


 続いてプルンがビヨーンと伸びて僕の靴を被う。僕の靴がシュワシュワシュウワー。靴がピカピカのツルツルになった。なんかポヨンとプルンでお店が開けそうだ。


 夕方になって街に帰ると、街の人たちは僕の両肩に乗っかってるポヨンとプルンを見て鼻の穴を大きくしていた。笑ってはいけないと思ってくれてるみたいだけど、気を使われているのも結構居心地が悪い。


 友達の中には一人だけポヨンとプルンを見て「かわいい」って言ってくれた女の子がいた。あとは大笑いだ。スライムが二倍になって笑いも二倍だった。


 母さんも口元をヒクつかせていたけど、ポヨンに髪の毛をきれいにしてもらったら鼻息を荒くして興奮してた。あ、もちろん、ポヨンが頭に乗っかった時は悲鳴を上げてた。そりゃしょうがない。


 

 ってことで、今日も森に来てる。


 今日もスライムかって? もちろん今日もスライムだ。ポヨンはプルンが増えただけですっごく喜んでるのが分かる。で、ちょっと先輩風を吹かしているようなんだ。なにかする時はいつもポヨンが我先にと動き出す。プルンはいつも二番手。これって先輩風吹かせてるよね。まあ、それでもとっても仲良くやっているんだけどね。


 でもそんな二人の姿を見ていたらプルンにも先輩風を吹かせさせてあげたくなったんだ。だから今日もスライムだ。


 おっと、早速いた。このスライムは…二日目に出会ったやつだ。間違いない。ポヨンとプルンと一緒に過ごすようになって、スライムの違いもはっきりとわかるようになった。僕はスライムに近寄る。スライムもポヨンポヨンと近寄ってくる。まだ近寄ってくる。そして止まる。


 あれ、いきなり二歩の距離? なんで? まあ、いいか。スライムにもいろいろ事情があるんだろう。


 ポヨンがポヨンポヨン。プルンもポヨンポヨン。スライムもポヨンポヨン。僕も二歩下がってポヨンポヨン。うん、楽しい。スライムの数が増えるとポヨンポヨンも楽しさ倍増だ。


 ポヨンポヨンで森を歩き回っていたらあっという間にお昼になった。お弁当の時間だ。今日も母さんのお弁当。でも今日は少しだけ量が多い。母さんが髪の毛をきれいにしてくれたポヨンにもお弁当を作ってくれたんだ。もちろんプルンにも。


 僕はお弁当を三人分広げる。ポヨンの前に一つ。プルンの前にも一つ。ごめん、スライムのは持ってきてないんだ。だから良かったら僕のおにぎりを少しどう?


 スライムは不思議そうにこっちを眺めている。ポヨンが小さなおにぎりを体に取り込みシュワシュワが始まる。それを見てプルンも同じおにぎりを取り込む。先輩のやることを見て真似るプルン。お前ももうすぐ先輩だぞ。


 ポヨンとプルンのシュワシュワが終わる。次は二人とも干し肉だ。今度は選択肢がそれしかない。ポヨンとプルンは同時に干し肉を取り入れる。シュワシュワシュウワー。


 おや、スライムが僕に近寄ってきた。なんだ、もしかしてお弁当が欲しくなったのか。いいよ、おにぎり食べるかい?


 僕が二歩のところに置いたおにぎりの片割れをスライムは体に取り入れる。シュワシュワが始まっておにぎりが消える。もう少し食べるかなとおにぎりを分けて前を向くと、僕の目の前にこっちを見つめるスライム。距離ゼロだ。


 両手でそっと掬ってやって見つめ合うこと5分、スライムが光り出す。僕の手も光り出す。ポヨンもプルンも乗っかってくる。四人全員で光にのまれ、僕たちはみんな繋がった。


「よしお前の名前は…えっと…ええっと…ポ、ポヨン、じゃなくて…えっと、そう、『ポヨヨン』だ」


 ポヨヨンはその場で伸びたり縮んだりを繰り返す。そしてプルンの隣へポヨンポヨンと移動する。左からポヨン、プルン、ポヨヨン。三人並んでポヨンポヨン。


「よし、ではお前たちに名前を授ける。これよりお前たちは『ポヨン隊』だ」


 三人のポヨンポヨンが少しだけ早くなる。喜んでるのが伝わってくる。良かった。ポヨヨンも自分がポヨン隊の一員だってことですぐに馴染めるだろう。三人だとどうしても一対二に分かれがちだからね。僕のところでは三人揃ってポヨン隊だ。


「ではこれよりポヨン隊に任務を与える。僕を先導して他のスライムの元へ連れて行くこと。大丈夫であるか?」


 僕が敬礼ポーズをとって胸を張ると三人はそろって動きを止める。二秒間だけ。そして足並み揃えてポヨンポヨンが始まった。


 すごい、ポヨンポヨンが揃ってる。これって連携ってやつだよね。スライムってすっごい賢いじゃん!


 街の学校でも連携の練習として整列して行進をすることがあるけど、こんなにきれいに揃ったことはない。スライムの連携は人間以上だ。


 スライムすっげー--。



 ―――――

ミーノ(テイマー)

従魔:スライム

ポヨン隊(ボヨン、プルン、ボヨヨン)

 スライムの連携を発見する


0316最後尾に現況追加

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