ポヨンとポヨンポヨン
「さあ、今日もテイムするぞ」
今日のテイムは相棒と一緒だ。昨日テイムしたスライム。名前は『ポヨン』だ。
昨日はポヨンと一緒に街に戻った。街のみんなは僕が肩にスライムを乗せているのを驚いた顔で見てきた。何人も聞いてくるからテイムしたことを伝えるとみんな大笑い。
学校の友達にも聞かれたからポヨンを紹介すると彼らも大笑い。あの双子に至っては転げまわって笑っていた。僕を笑うのはいいんだけど、ポヨンを笑うのは正直腹が立つ。こんなにかわいくて、こんなに優しくて、こんなに素直で、こんなにポヨンポヨンしてるのに。もう、笑うなったら。
家に帰って母さんに見せると、母さんは「おめでとう」って言ってくれた、でも口元がヒクヒクしてるのを僕は知ってる。本当は母さんも笑いたかったんだろう。
なんかイライラしてしょうがなかったから、早めに部屋に入ってポヨンと過ごした。ポヨンは部屋の中をポヨンポヨンとひとしきり動き回ると僕の横にピトッてくっついて動かなくなった。体が一定のリズムで動いていたから多分寝たんだろう。
ポヨンを両手で掬ってベッドに置く。毛布を半分かぶせてやる。月明かりに光るポヨンは綺麗だった。僕はそんなポヨンをずっと見つめながら幸せな気持ちで寝たんだ。
で、今日も森にやってきた。
今日テイムするのは…スライムだ。またスライムかって? そうだよ。だってポヨン一人じゃ寂しいだろ? スライムが集団で動いているところは見たことがないけど、ポヨンは寂しがってる。僕の横にくっついてきた時にそう感じたんだ。だから今日もスライム。
あ、早速いた。ん? お前は初対面だよね。なのになんで五歩の距離? あ、もしかしてポヨンがいるから? そっか、なるほど。じゃあ、今日はお前についていこうかな。
ポヨンがポヨンポヨン。スライムがポヨンポヨン。二人で楽しそうだ。スライムって一緒に遊ぶんだな。初めて見た。僕も一緒にポヨン…あ、だめか。ごめんごめん。今は五歩の距離だよな。
夕方になった。ポヨンとスライムはずっと一緒に遊び続けていた。よく飽きないもんだと感心するけど、それをずっと見ていて飽きない僕も相当なもんだ。今日は三歩の距離まで縮まった。この調子なら明日にはテイムできるかもしれない。
「さあ、今日もテイムするぞ」
今日もポヨンと一緒に森に来た。お、いたいた。昨日のスライムだな。今日もよろしく。
ポヨンが一緒にポヨンポヨン。僕は三歩の距離でポヨンポヨン。体を弾ませて真似をする。なんだか楽しくなってくる。ポヨンポヨン、ポヨンポヨン。ポヨン…ん?
ポヨンとスライムが止まってこっちを見つめている。僕のポヨンポヨンが間違ってたのかとふと心配になる。だけど心配はすぐになくなる。ポヨンとスライムが僕に近寄って、二人そろって僕の足にピトッてくっつく。あれ、もしかして…
ポヨンの時と同じようにスライムを両手で掬う。スライムと目が合う。見つめ合うこと5秒ほど。スライムが光る。僕の手も光る。そこにポヨンが飛び乗った。ポヨンも光る。三人が光に包まれる。そして僕らは繋がった。
「よし、お前の名前は『プルン』だ」
プルンがプルンと震えれば、ポヨンもプルンと震える。二人とも納得してくれたようだ。プルンをテイムできたところで僕のお腹がググっと鳴った。空を見ると太陽が高い。もうお昼だ。
切り株に座って母さんのお弁当を広げる。ポヨンとプルンは二人でじゃれ合ってる。僕はおにぎりを一口食べ、モグモグしながらふと疑問に思う。
「スライムは何を食べてるんだろう」
ポヨンを呼ぶとプルンも一緒についてきた。二人に何を食べてるのかを聞いてみる。え? なんでも食べるの? 食べなくても平気? なんだそれ……とっても便利じゃん!
おにぎりを少し取ってポヨンにあげるとポヨンは体の中におにぎりを取り込む。ポヨンの体の中でおにぎりから泡が出始めた。じっと見てるとおにぎりがどんどん小さくなって…なくなった。
「すごいね。スライムがおにぎり食べるなんて誰も知らないよ。じゃあ、今度はプルンにこれ。嫌なら教えてね。おにぎりにするから」
僕はプルンに干し肉を千切ってあげる。プルンはそれをポヨンと同じように体の中に取り込む。体の中でシュワシュワが始まる。おにぎりよりも時間がかかったけど干し肉もなくなった。
「スライムがおにぎりも干し肉も食べたぁ」
僕は両手を空に突き出して叫ぶ。これはすごい発見だ。スライムが人と同じものを食べるなんて。
僕が感動しているとポヨンがポヨンポヨンと動き出す。どこへ行くのかとついていくと、切り株の元にある拳くらいの石の上に乗っかる。そして上からスッポリと石を体に取り込んだ。
ちょっと、ポヨン、何となくやりたいことは分かるんだけど、それはさすがに無理だよ。頑張りすぎないで。
ポヨンはチラリと僕を見て…え、笑った? 数分後、ポヨンの中の石はなくなった。
スライムってすっげーー-!
―――――
ミーノ(テイマー)
従魔:スライム(ボヨン、プルン)
スライムが、食べ物を食べることを発見
0316最後尾に現況追加
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます