スライム編
スライムをテイムしよう
テイムするぞ①
僕はテイマーだ。
テイマーっていうのは魔物と仲良くなれる職業だ。魔物を弱らせて、こっちの力を見せつけてから仲間になるかを聞く。
もし相手が「仲間になってもいいよ〜」って思ったらそこで契約成立。意思疎通が出来るようになって一緒に行動するんだ。
僕は今朝、テイマーになったばかり。街の子供はみんな8歳になったら教会で祈りを捧げて職業を貰うんだ。自分の希望する職業になれるかはわからない。だけど、与えられた職業で頑張ると沢山いいことがあるんだって。
学校の友達は剣士や魔道士っていう魔物と戦う職業や、商人や鍛冶師っていう仕事をするための職業が多いみたい。みんな楽しそうに将来について話してた。僕がテイマーだって言ったらなぜかみんなに慰められた。魔物を仲間にできるのにどうしてそんなハズレ職業みたいな扱いなんだろう。
僕も早速魔物を仲間にしに行く。仲間にすることをテイムするって言うんだ。テイマーの職業は珍しくて、いろんな魔物を仲間にできるんだけど、ただそれには条件があるんだ。その魔物と戦って自分自身の強さを示さないと仲間になってくれない。ほとんどのテイマーは身体能力自体に恩恵がないから、そこそこの魔物をテイムして終わるらしい。魔物を使役して農家をやってる人も多いって話だ。
僕は冒険者になりたかったから、職業を貰った時に「テイマーについてよく知りたい」って言ったら、教会の人がテイマーの冒険者を紹介してくれた。テイマーは珍しいからこの街にはたった一人しかいないらしい。だから紹介された先輩テイマーに話を聞きに行ったんだけど、「坊主にはまだ早い」って笑われて追い返された。「一人でオークを倒せるようになったらまた来い」って。
『オーク』について学校の先生に聞いたら豚顔の魔物でとても強い。力が強くていっぱしの剣士でも一対一で勝つことは難しいって教えてくれた。そんな魔物を僕が一人で倒すなんて少なくともあと十年は無理だ。だからもうテイマーについて聞くのは止めた。だって与えられた職業で頑張る事が大切なんだから。十年も職業を使わないなんてもったいないもんね。
だから僕、これから近くの森に魔物をテイムしに行くところ。森は普段から遊んでる場所だから危険はないんだ。でも魔物はいるんだよ。僕が今、仲間にしたいのはスライムっていうプルプルした青くて透明できれいな魔物。ギリギリ片手で持てる位の大きなお団子を上から抑えたみたいな形の魔物だ。プルプルしながら形は変わるんだけど全然襲ってこないし、子供の姿を見ただけで逃げて行ってしまうくらい臆病なんだ。あんまり強くはないんだけど、それを言ったら僕も同じだ。だから強くないもの同士でいい仲間になれるんじゃないかって。始めから強くなくたって、一緒に強くなればいいと思う。
そんなことを考えながら森に入ると早速見つけた。青色でプルプルして、ポヨンポヨンって動いてる。うーん、こんなかわいい魔物を攻撃するのか…なんか嫌だな。捕まえるのもなんか違う気がする。攻撃したり捕まえたりしないで仲良くなれないのかな。
いろいろ考えながら僕はポヨンポヨン動き回るスライムの後をずっと追いかけた。近寄り過ぎると怖がっちゃうから一定の距離を保ちつつ、付かずかず離れずただ後を付いていく
お昼前から始めて今は夕方。そろそろうちに帰らないと母さんが心配する。しょうがないから今日はここまでにするとしよう。スライムは相変わらずポヨンポヨン動いている。
じゃあね、またお前と会いたいけど、明日は別のスライムかな?
―――――
ミーノ(テイマー)
スライムの後を追いかけ始める。
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