第15話 お嬢

「オーーッホッホッホッホ!!!そうですわよね!!!現役冒険者である貴方ですら見蕩れるアタクシの超絶スキル!!!凄いですわよね!!!」



 褒めた。純粋に彼女のスキル【女王の言霊】は強力なものだった。

 【女王の言霊】は言葉に魔力を込めると、自分が発した言葉のとおりに相手を強制させるスキルらしく、今回はゴブリンに自分より頭を低くしろと命じたそうだ。

 であれば自害しろ、と命令すればいいのでは、とも思ったがそうもいかないらしい。



「アタクシのこのスキルは基本的に全ての生き物に通じますが、アタクシ言葉を理解出来ない生物だと効果が半減しますの。それにアタクシの魔力量だと今のが全力ですわ!!」



 加えてスクイーより魔力量が多い相手には効かないという制限もあるらしい。強力なことに間違いはないが、今のスクイーだとゴブリンの足止めを、もって30秒が限界らしい。



「それでも凄いよ。スクイーの魔力が強くなれば出来ることも増えるんだろ?まさに貴族のようなスキルだ。」


「まさに、ではなくアタクシは貴族ですのよ?もっと褒めてもいいですわよ?」



 そろそろ調子に乗りすぎているから褒めるのをやめよう。俺たちは村へと向かった。




△ △ △




 根源山の近くの村はそれからすぐに到着した。村長の事情を話し、子供の元まで案内してもらう。村長や村人達はミスリルローズを見つけたことはただの見間違いか何かだろうとそもそも相手にすらしていなかった。

 それもそうだろう。確かに小学生がUFO見たと騒いでも誰も相手にしないだろう。今回の俺達は子供の与太話を聞きに来た酔狂な奴らと思われてるみたいで、好機の目で見られていた。



「ヨニカ、お前さんにお客だ。」


「…?こんにちわ。」


「貴方がミスリルローズを見た子供ね!!こんにちわ!!」



 スクイーが手を差し伸べる。困惑した様子のヨニカ。



「ええとだな、君がミスリルローズを見たっていう話を聞いてね、ちょっと気になったから聞きに来たんだ。どうかな?話してくれないかな?」


「…はぁ、わかりました。……僕とマニク…友達なんですけど、隠れんぼしてて、僕が隠れようと探してたら迷子になっちゃって……。それで怖くなって帰ろうとしてたら洞窟があって、そこに綺麗なお花があって。」


「それがミスリルローズですわね!!!??」



 突然の大声に怯えるヨニカ。



「ちょっとスクイー黙ってて。…それで、そこまでの道はわかる?」


「…途中までなら。」


「案内してくれるかな?もちろん案内料としてお金も払うよ。」


「お金!?いいですよ!?いらないです!」


「そう言わずに受け取りなさい!お仕事に報酬は付き物ですのよ!!」



 そう言ってヨニカに無理やり銀貨を握らせるスクイー。



「…じゃあいただきます!今から行きますか?」


「もちろんよ!!」



 ヨニカの案内の元、俺達は根源山のミスリルローズがあるとされる場所へ向かった。




△ △ △




「ここから先はちょっとわかんないです…すいません。」


「構いませんわ!!さぁ行きますよアキ!シトゥン!!」


「ありがとうねヨニカくん。気をつけて帰ってね。」



 ヨニカは急いでその場を去る。どこか表情に焦りを感じていたが俺は気にせず周囲の探索を開始した。



「それじゃあ俺が二手に別れてゴーレムで探索するから、2人は俺の周辺を警戒してもらってもいいか?」


「構いませんわ!」



 地魔法を展開し、イメージを作りあげていく。探索に向く、小回りの効く体…。昔テレビで見た事のある狼を想像しながら地面から浮かび上がる土を混ぜ合わせていく。



「これはなんとも…。」


「素晴らしいですわ!!」



 俺達の目の前に2匹の狼型のゴーレムが出来上がる。動物特有の呼吸や毛の動きは、あくまで土でできているためなく、無機質な印象を与えた。細かなディティールは見世物では無いため拘っておらず、作りかけの木彫りの人形のような見た目となっている。


 2体のゴーレムを左右に移動させ、周囲を探索していく。俺の視界はゴーレム2体を通じており、大量の視覚情報が脳に流れ込んでいく。

 まだキャパシティに余裕があるが、万が一を考え慎重に歩みを進めていった。


 すると右方向へ進んだゴーレムの目の前に洞窟が見つかる。

 洞窟の周りは蔦や草木で隠れており、一見では分からないようになっていた。如何にも怪しいその洞窟は、最近人の出入りがあった形跡が残されており、それがヨニカの者だと連想するのは容易かった。



「見つけたかも。ちょっと歩くよ。」


「もうですの!?それじゃあ向かいましょう!!」



 片方のゴーレムの魔法を解き、洞窟前のゴーレムの魔法を残しつつ意識を肉体にむける。

 本来であればゴーレム操作はゴーレムに意識を投入しなければ魔法を持続させることは難しかったが、入院中のゴーレム操作の練習により座る、真っ直ぐ歩くなど本当に基礎的な行動は遠隔で行えるようになったのだ。

 これもホランドからのアドバイスがあっての事のため、アイツには感謝している。


 木々を掻き分け、俺たちはゴーレムの元へ向かう。



「ここがミスリルローズのある洞窟ですわね…?」



 俺達の前に身の丈倍はある大きさの洞窟の入口が姿を現した。

 

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