第14話 出発
スクイーの召使い、シトゥンが言うには、情報屋から大枚叩いて得た情報の中にミスリルローズらしきものの情報があったそうだ。
「ミスリルローズはここマルトル街から離れた根源山の洞窟の中に生えているそうです。根源山近くの村に住む子供がそれらしきものを見つけたらしく……。ここ暫くミスリルローズに関する情報がゼロに近いことを考えるとかなり有力かと。」
「でしょ!アキ!!行きましょう!!」
スクイーが俺の袖を引っ張る。先程までのワガママっぷりはどこへ行ったのか、親戚の女の子にしか見えなくなっていた。その様子にシトゥンさんも苦笑いしている。
俺はスクイー達に準備してくるから待っていてくれと声をかけ、装備を整えに行く。
△ △ △
「それでお前依頼受けてあげんのか?」
偶然ゾラ婆ちゃんの薬屋であったホランド達にスクイー達の依頼を受けることを話す。
高ランク冒険者などではギルドを通さず個人で依頼を受ける者もいる。仲介料分も貰うためだったり、依頼主と個人的な仲だったり。後は今回のような場合だったりとよくある話ではあった。
当然、依頼の際に起きたアクシデントや報酬の未払いなんかも冒険者本人の自己責任となる為、デメリットも存在する。
「依頼というか、手伝いだな。ギルドは通してないし。」
「まぁ結構そういう人いるらしいけど……なんかあったら言えよ?」
「そうよアキくん。…まぁホランドと違って大丈夫だと思うけど。」
カティがホランドをじろりとみる。申し訳なさそうに違う方向をみて口笛を吹くホランド。
「ホランドってば、ゴブリンの討伐依頼で魔核ごとぐちゃぐちゃにしたのよ!?信じらんない!」
「あれは急に動き出すゴブリンが悪い。」
やいのやいのと喧嘩する2人を宥めて俺はスクイーの元へ向かう。
スクイー達と俺用に回復ポーション、話を聞くところによれば、シトゥンは元々騎士団に勤めていたらしく、スクイーも強力なスキルを持っているそうだ。……内容は後でのお楽しみだと不敵に笑っていたが大丈夫だろうか…。
今の俺は地魔法による戦闘がメインになるため防具もある程度整備しておく。いざという時のために動きやすい革鎧に油をさし、丁度良かったので革も張り替えておく。
さすが異世界といったところか、張り替えた革はすぐに使えるレベルに変化するし、すでに新品同然の姿に変貌していた。
どうも魔物の素材を使用した防具や品物は魔力により変化が異常に早いらしい。最初見た時は驚いたが、この世界ではこれが普通なのであった。
△ △ △
「さぁアキ!!冒険の始まりよ!!」
スクイーが目を輝かせながら根源山へと向かう。まずはその発見者である子供に話を聞きに行く。
根源山はでてもゴブリン程度の比較的安全な魔物の生息地で、複数体でたとしても俺とシトゥンさんで対応できるレベルだった。
スクイーが俺の冒険者としての話が聞きたいと言い出したため、道中今まで受けた依頼を軽く話す。特に彼女が気に入ったのはサクリファイスオーガとの一件だった。
「やっぱり冒険者といえば血湧き肉躍る冒険活劇ですわ!!!あぁシトゥン!アタクシも冒険者になろうかしら?」
「お嬢様…。」
流石のシトゥンさんも呆れている様子だった。そんな話をしている最中、目の前にゴブリンが2匹現れる。
「スクイー達は後ろに下がって」
「ここはアタクシに任せてくださいまし!」
スクイーが前に出る。シトゥンさんを見ると首を横に振っていた。
「アキ様、少し見ていただけますか?」
決して甘やかしている訳では無い、スクイーならば問題がないという意志を感じる目だった。何かあればすぐに対処出来るよう魔法を展開しつつ後ろへ下がる。
俺が後ろへ下がるのをみてスクイーはニヤリと笑い、息を吸い込む。
「【貴方達、頭が高くてよ?】」
スクイーの口から魔力の込められた言葉が放たれると、前方にいたゴブリン2匹が突然地面にめり込んだ。ゴブリン達はなぜ自分達が地に伏せているのか理解出来ない様子で必死にもがくが、透明な手のひらに押しつぶされているかのように身動きが取れずにいる。
「……ハァハァ…さぁシトゥン!おやりなさい!」
スクイーが命令すると俺の横にいたシトゥンさんがいつの間にかゴブリン達の目の前に移動しており、腰に携えたレイピアでゴブリンの頭蓋を一突きしていく。
的確に狙われた一撃はゴブリンをすぐ死へと誘った。
「……オーッホッホッホ!!これがアタクシがもつ特別なスキル、【女王の言霊】よ!!どうかしらアキ!!」
凄く褒めてもらいたそうな顔をしたスクイーがこちらを振り向く。
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