魔銀薔薇編
第11話 可能性
あれからひと月が経った。俺とホランドは病室で苦すぎるポーションをがぶ飲みしてはリハビリし、飯を食い睡眠を摂るというサイクルを延々と繰り返していた。
退屈過ぎるが、ホランドがいたからまだ飽きずにいられた。
「っっっよし!!!完全回復!!」
「…長かったーーー……。」
体を伸ばす。俺もホランドも流石に身体中が鈍って仕方がなかった。
しかしこのある種の休暇中に得るものもあったのは確かだ。
「これで新たな必殺技を試すことが出来るぜ……。フッフッフ……。」
「付き合うよ練習。」
不敵に笑うホランドの体からゆらりと魔力が滲み出る。
病室でただ横になっているのも勿体なかったため、効率的な魔力の使い方を考えながらずっと地魔法を使用していた訳なんだが、その様子を見たホランドが魔力について教えて欲しいと頼んできたのだ。
魔力は全ての人間に備わるモノだが、魔法使いなどの魔力を扱うスキルがなければ認識することは難しい。武道の達人であれば殺気として感じることができるらしいが、その意気に達するのは至難の技だ。
俺はホランドに自分の魔力を動かしながら軽く説明する。すると不思議なことに、ホランドは感覚で自らの魔力を認識し始めたのだ。
そこから面白くなった俺は魔力の動かし方と魔法の使い方を説明していく。ホランドも真剣に聞いていた。
そんなある日。
「おおおおい!!アキ!!?これどうなってんだ!?!?」
リハビリから戻ってくると、ホランドの折れた腕が輝いていた。光は魔力を伴っており、それは明らかに…。
「魔法…?」
「呟いてねーでどうすれば……あっ…消えた……。」
光がおさまるとそこには完全に癒えている無傷の腕が現れた。そしてホランドは気を失った。
「ホランドーーー!!!!???誰かーー!!!」
△ △ △
そこから検証すると、ホランドは肉体に魔力を集中させることで治癒能力を爆発的に増加させられることが分かった。
後でギルドで確認してもらったが、スキルが変化している訳ではなく、これはホランドが持つ体質なのでは?という意見も見られた。
他にも全身に魔力を行き渡らせることで怪力を実現したりと、かなり応用が効くこともわかりホランドは大興奮。
俺も試しにやってみたが、どうも地という属性が邪魔をしているらしく無理だった。
俺とホランドはお互いに魔力を高めていったのだった。
「よっしゃ!とりあえず簡単な討伐依頼受けてリハビリがてら成果をみるぞ!」
「そうだな……ゴブリンとかどうだ?」
ゴブリン。腰ほどの大きさの小人のような外見に緑の皮膚。そして環境に適応する能力と繁殖能力が異常に高い魔物である。大抵の魔物の生息地に存在しており、1匹みたら100匹はいるとされていた。
「そうと決まればよっしゃ行くぞ!!」
△ △ △
俺とホランドはギルドの常駐依頼である魔物の魔核納品を受けるとマルトル街から近い魔物の生息地、魔性の草原へと向かう。
「いたぞ、ゴブリンだ…。」
周囲を警戒しながら進むと前方にゴブリンが3匹いる。まだ俺らに気がついていない様子で、ホーンラビットの剥ぎ取りを行っていた。
「周囲の警戒を頼む。アキはアイツらの足元を緩くしてくれ。」
「了解。」
俺は地魔法を展開しゴブリン3匹の足元の地面を沼状に変化させる。
突然バランスが崩れ驚くゴブリン。意識が下を向いている瞬間にホランドが勢いよく飛び出し剣を振るう。
一閃。1匹のゴブリンの頭が胴体と離れ宙へ浮く。仲間の死を悼むことなく敵意をホランドへ向け襲いかかろうとするゴブリン。
ホランドは魔力を全身へ巡らせ、もう1匹のゴブリンに向かい全力で剣を振るう。
「オラァア!!!!!」
剣は異常な速度で振り落ち、ゴブリンを溶かしていく。近くにいたもう1匹は剣が落ちる衝撃波で全身の骨が砕けていた。
俺のところまで剣圧が飛んでくる。ホランドの振り下ろした剣からの衝撃はゴブリンを通り越し、遠くにあった木を切り倒した。
「「……。」」
「……大成功だな!」
「無茶苦茶じゃねぇか……。」
ホランドが使う魔力を全身に巡らせ、身体強化するこれは本当にスキルでは無いのかと思うほどに強力だった。
本人はかなり喜んでおり、俺も何だかんだで友達が喜ぶのは嬉しい。
俺たちはぐちゃぐちゃになったゴブリンの死体から魔核を取り出しギルドに戻った。
それにしても、スキルがなくてもこうした技能を習得出来るのかと1人考える。スキルがランダムで得ることの出来る能力だとしたら、ホランドが使ったアレは努力次第で習得できる共通の能力か何かなんだろう。
つまり俺もきっかけが掴めればああいう何かを知ることが出来るはず……だといいなぁ…。
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