第10話 友人
「……人ですよ。少なくとも、あのオーガよりはね。」
ライオネルは、明らかに俺の秘密について気づいている。少なくとも、俺が何かを抱えていることが分かっているんだろう。
俺が禁術を用いて肉体を改変したことを。
俺の魔力がかなり多いのも、スキルが1年足らずで進化したことも、禁術によるものだった。
正直なところ、初めて禁術を使用してから俺は心のどこかで疑問に思っていた。俺って今本当に俺なんだろうか、と。
禁術により体をドロドロに溶かし、魔核と融合した俺は、本当に以前と同じ「土田晶」なんだろうか、と。
「何言ってるんですか!?ライオネルさん!こいつは正真正銘人間ですよ!」
ホランドが俺を助けるため割って入る。少しだけ心にチクリと痛みが走った。俺はホランドを騙しているんだ。本当の俺はもしかしたら魔物なのかもしれない。いやすでに…。
「それに、コイツが人間じゃなかったとしたら何なんですか!?」
「ここはオペラシー王国!獣人もいればエルフもいる!どんな種族でも受け入れるそういう国なんです!……コイツが、アキが魔族でもなんでも、コイツは俺を救ってくれた、友達なんです!」
「えーと……ごめんね?僕の言い方が悪かった。別にアキくんが人間だろうが、人間じゃなかろうが、僕としてはどうだっていいんだ。」
「アキくんがもつスキルが何なのか、とそれに伴いサクリファイスオーガにどんな攻撃をしたのかさえ分かれば、後はどうだっていいんだ。僕の知り合いにも人間じゃない奴なんていっぱいいるしね。不安にさせたなら謝るよ。」
ライオネルの声に嘘は感じられなかった。きっと本当にただの確認だったのだろう。ホランドは黙ってしまった。
そこから俺のスキルが土魔法から地魔法へと進化したこと、それを使いサクリファイスオーガに攻撃したことを話す。
話している最中、ライオネルは頷きながら空中に文字を描いていた。
「うーん、よし、ありがとう!聞きたいことは聞けたよ!今回は運良く生き残れたけど、次からはこんなことしちゃダメジャン?じゃあね!」
そう言い残すとライオネルは去っていった。
病室に静寂が訪れる。
「俺はお前が人間じゃなかろうが、友達だからな。」
「……ありがとうホランド。でも俺人間だから。」
「急にドラゴンとかに変身すんなよ?」
「そんなことできねぇわ!」
△ △ △
地魔法。僕も冒険者に成り立ての頃に聞いたことのあるスキルだった。
大地の龍脈を操り、無限の魔力を得る。地面や岩、金属さえも自由に操り、天魔戦争の時に魔族の大群を一撃で屠ったという話さえある伝説のスキル。それであれば、あの生み出されたミスリルにも納得ができる。
本来ミスリルがあのサイズで発見されることなどない。
ミスリルは龍脈から漏れだした魔力が岩に浸透し、変化したことで生まれる金属だからだ。あのサイズ、ドラゴンより大きなあのミスリルであれば軽く国家予算程度で取引されるだろう。
オペラシー王国が急いで引取りに来るわけだ。
今の僕ならまぁ彼には勝てるだろうけど、時が経てばどうかは…正直分からない。
僅か1年でスキルが進化したのもそうだが、彼が纏う魔力には違和感があった。
あれは10年以上前に戦った死霊術師と同じ…いやでも少し違う。
…悩んでいてもしょうがないか。一先ずお貴族様に報告しなきゃな。憂鬱だ。
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