第5話 ギルド

 そこから2日間。ちょこちょこ休息をとりながらも進んだ俺は無事オペラシー王国にたどり着くことが出来た。

 道中出会った商人に俺のポッケのスマホや文房具何かを銀貨で買い取って貰ったのはかなりラッキーだったといえる。


 どうやらオペラシー王国への入国において、冒険者などの身分証明が出来ない者は銀貨を支払わなければいけないらしい。

 腹芸なんか到底できず、それらの情報を精査出来るほどこの世界を知らない俺はスマホをさっさと売り払った。歩いている最中に確認していたが、スマホは電源すらつかなかった為無用なものとなっていた。

 帰れなければ意味が無いため、必要となる貨幣に変えれたのはかなり僥倖だった。




△ △ △




 見上げるほどに高い、白い外壁の元へ長蛇の列が出来ている。入国のために並ぶ人々であった。

 オペラシー王国へは世界各地から人が集まる。他種族が持っもと集まる場所であり、成り上がるには絶好の場所でもあるからだ。



「はい、次の方!」



 俺の番が来たようだ。少し緊張しつつも兵士の前に立つ。



「入国目的は?」


「働きに来た。」


「そうか……身分証明は何かあるか?なければ銀貨3枚払ってもらおう。」



 ポケットから銀貨3枚を手渡す。



「ええと、丁度だな。ではあちらの列に並んでもらおう。」



 そう促された先には城門よりは少ない列が出来ていた。



「あそこで犯罪歴が無いかどうかを検査する。」



 並んでいる人と話すと、この列の先には巨大な魔法陣があり、そこの上に立つと本人が各国で犯した罪等が現れるそうだ。罪がなければ魔法陣は青く光り、あれば赤く光る。

 なんとも不思議なシステムだが、この世界も地球と同様に殺人は罪となるらしい。この魔法陣は魂に刻まれた殺人の色を判別するそうだ。

 加えて、各国で逮捕され、有罪判決を言い渡された者は全て【罰魔法】と呼ばれる魔法により魂に罪が刻まれるらしい。……なんとも恐ろしいものだ。


 俺の番になり、魔法陣に立つ。直ぐに陣は青く光りだした。



「よし、ではようこそオペラシー王国へ。」



 順調に入国することが出来た。




△ △ △




 オペラシー王国はさすが王国といったところでかなり賑わっていた。東京を彷彿とさせる人混みの多さと、中央に山ほどの大きさはあるだろう王城がそびえ立っている。

 街並みは西洋というか、ファンタジーゲームそのものといった様子だった。鍛冶屋や露店、その中でもやはり目を引くのは冒険者ギルドだろう。

 城門からでて直ぐに鎮座している冒険者ギルドには今もひっきりなしに人が出入りしている。某狩猟ゲームの装備のような、魔物の素材から作られたであろう鎧を纏う大男や、身の丈より大きな杖をもつ妖艶な女性など、本当に異世界に来てしまったのだと改めて実感させられる。

 容姿も明らかに日本人とは異なり、かなり美しかった。……全員がそうとは言わないが。


 冒険者ギルドは見たところかなり混雑していたが、冒険者登録の為の場所は見るだけですぐに分かる場所にあった。

 というか上に書いてあるし。何故か効いている翻訳能力により登録場所に向かう。受付場所には30代くらいの男性が立っていた。



「いらっしゃいませ、冒険者登録で間違いありませんか?」



 頭に犬の耳が生えた男性が愛想良く尋ねてくる。



「はい、これ、登録料です。」



 そういってポッケから銀貨をとりだす。これで後5枚といったところだ。



「はい、確かに受け取りました。それでは名前とスキルをこちらにご記入ください。」



 俺は自分の名前である土田晶、のアキと、スキルである土魔法を記入する。土魔法はクラスメイトと比べると格段に落ちるが、そもそも一般的なスキルではあるのだ。



「アキ様、スキルは土魔法ですね?それでは戦闘確認のため訓練場へ案内致します。着いてきてください。」




△ △ △




 訓練場へと着いた俺は辺りを見る。体育館ほどの広さで、奥では俺より年下の子供達が大人から剣を習っている様子だった。



「ええと、アキだな?俺はアンタの試験官のバルだ。よろしく頼む。」



 黒い皮鎧に身を包み、胸まで届く髭を生やした大柄な男性が俺に話しかける。



「よろしくお願いします。アキです。」


「アンタのスキルは…土魔法か。どんなことが出来るんだ?」


「土魔法でできることは大半ですね。」


「なら少し戦闘してみるか。俺を魔物と仮定してやるぞ。」



 魔力を感知できる身だからわかるが、このバルという男は俺の数倍は強い。恐らく一太刀も当てることは出来ないだろう。

 彼の胸を借りるつもりで、俺は土魔法を展開していく。



「ほう、なかなかの練度だな。」



 俺はゲームのキャラクターをイメージし、土魔法を作っていく。俺の腰ほどの大きさの小人。頭に帽子をかぶり、髭を生やし、不機嫌そうに顔を顰めている壮年の男性。しかし筋骨隆々で、斧を片手に熊すら相手取れる力強さ。

 魔力を込めてその名を呼ぶ。



「【ノーム】!」



 俺の目の前に生み出された土人形、ノームはバルさんへと真っ直ぐ向かっていく。自律式ではないため、操るのは俺なのだが、筋肉などは全て魔力で補っているためゲームのように操作できる。


 ノームは片手に持った斧をそのままバルへと振り下ろすが、バルはそれを腰にあった短剣でいなす。

 バルはそのままノームの足を払い、体勢を崩そうとするが、体制を崩したノームの背中から新たに腕が生え、バルの腕を掴む。


 ノームはあくまで土人形であるが故、俺の魔力が尽きるまで自由自在に変形することが出来るのだ。


 少し驚いた表情のバルであったが、ノームの腕を切り落とし、目線を俺へと向ける。

 考えていたことだが、術者である俺を倒せば1発なんだよなぁ。

 バルは俺へと走り出すが、それをノームは許さない。というか俺なんだけども。


 俺はノームをスライムのように変形させ、バルへとまとわりつかせる。表情を変えず切ろうとするが、切った瞬間から周囲の地面から新たな体を生成するため再生していく。

 バルの全身を瞬時に多い、身動きを取れないよう頭以外を地面に埋めようとした瞬間、バルの体が煌めき、まとわりついていた土が全て弾けた。



「素晴らしい!お前さん元々経験あるだろ!」


「えぇ、まぁ。」


「これだけ出来るなら仕事の幅が増えるぞ!俺からは合格だ!よし着いてこい!」



 土をはらったバルさんに着いていく。道中に俺についてバルさんと話していく。バルさんは冒険者としてはかなり古株らしく、昔はドラゴンを討伐したこともあるそうだ。今は新人を育成するために冒険者ギルドに骨を埋めているそうな。


 ギルド内の部屋に案内されると、そこには初老の男性が座っていた。男性から冒険者としての説明が行われる。


 冒険者ギルド内に依頼が張り出される為それを行うこと。冒険者にはランクが存在し、依頼の貢献度に応じてランクは上がるらしい。

 例えば雑草処理やゴミ拾いでも10年も続ければそれなりのランクになるし、反対に魔物討伐を行っても依頼をこなさなければランクは上がらないそうだ。

 冒険者になりたての俺はランクEから始まるらしく、頂点はXらしい。まぁ世界に10人しかいないそうだから俺には関係ない話だ。

 まずはこのギルドの手頃な仕事からこなしていけばいいと男性はにこやかに話していた。


 よし、がんばるぞ!

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