第5話 集合写真
林ひかるの話を聞き終えた一同が、余韻に浸るように黙った。
「まだまだ生ぬるいな」
沈黙を破るように織田きいらが首を振った。
「じゃあ次、きらちゃんが話す番ね」
ひかるが少しムキになっていった。
「ふふふっ、いいのかな?私の話は怖いぜぇ」
きいらはおどけるような恰好をした。いつもふざけてばかりいて、うるさがられることもあるが愛されキャラの一人だ。
「楽しみ」
「それでは……」
ときいらは居住まいを正し、話し始める。
「よくyoutubuとかに、“意味が分かると怖い写真”ってあるの知ってる?」
「知らん」
「知ってる」
「その写真は一見、微笑ましい家族の集合写真なんだ。三世代一家の、お父さん、お母さん。お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、子供たち二人、かっこ姉妹の計六人が写った写真。木漏れ陽の下、家の庭かなにかで写した六人とも微笑んで、とても幸せそうな写真。でも、実はこの一家、全員もうこの世にはいないの」
「……」
「わかった。昔の写真だ。昭和とかの」
「ぶー。撮ったのは平成です。みんな生きていても不思議でない。でも、もうこの一家はいないの。ある男によって全員殺害されてしまったから……」
「やっ」
「多分、この中に知っている人もいるかもしれない。十数年前おきた一家六人殺人事件。で、事件を捜査した警察の人が、その写真を見てあることに気づいたの」
「なにを?」
「よく見るとその写真に、光の点みたいなのがいっぱい写っていて、それが一番多く写っていたのが、奥さんなのね……」
きいらが、みんなの反応を確かめながらつづけた。
「それが何を意味していたかというと、警察の人が後に気づいたんだけど、被害者が刺された場所と一致していたんだって、光が。それで、なんで奥さんに一番多く光が集まっていたかというと、奥さんの浮気相手だったんだよね、犯人は」
「……」
「で、意味を知ると怖い写真って、それだけではないの。なんで警察がこの写真に注目したかって事。実はこの写真に犯人が写っていたの」
「え?まさか、お祖父ちゃん?」
「ううん……家族全員の瞳の中に。犯人は写真を撮影したカメラマンだった」
「……」
「どう?怖いでしょ?」
「ん~、怖いでしょ?って聞かれると、素直にうん、とは言いづらい」
「いろいろ怖いけど、家族の写真を浮気相手が撮るっていうの、怖くない?」
「その写真、ネットで見れるよ、見る?」
きいらが置いてあったスマホを手に取り、慣れた手つきで操作し始めた。
「マジで……?」
「これ」
と画面をみんなの前に突き出す。
「……ホントに光がいっぱい写っている」
隣の席のひかるがいった。
「ヤバい、これが奥さん、満面の笑みを浮かべてるじゃない。ゾッとする」
「ほのかも見てみなよ」
ときいらがスマホを、中田ほのかの顔に近づけた。
「いいよ、やめて」
顔を背け、嫌がるほのか。
「見てみて」
「やめてぇな」
本気のトーンのときに出る関西弁がほのかの口からでた。
一同が静まり返る。
「ごめん」
きいらはスマホをひっこめた。
事故物件へつづく
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