第5話 集合写真




林ひかるの話を聞き終えた一同が、余韻に浸るように黙った。


「まだまだ生ぬるいな」


沈黙を破るように織田きいらが首を振った。


「じゃあ次、きらちゃんが話す番ね」


ひかるが少しムキになっていった。


「ふふふっ、いいのかな?私の話は怖いぜぇ」


きいらはおどけるような恰好をした。いつもふざけてばかりいて、うるさがられることもあるが愛されキャラの一人だ。


「楽しみ」


小園蓮花こぞのれんかがポツリとつぶやいた。


「それでは……」


ときいらは居住まいを正し、話し始める。


「よくyoutubuとかに、“意味が分かると怖い写真”ってあるの知ってる?」


「知らん」


香西真利亜こうざいまりあが冷たくつぶやく。


「知ってる」


田沼果歩たぬまかほが手をちょこんと挙げた。


「その写真は一見、微笑ましい家族の集合写真なんだ。三世代一家の、お父さん、お母さん。お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、子供たち二人、かっこ姉妹の計六人が写った写真。木漏れ陽の下、家の庭かなにかで写した六人とも微笑んで、とても幸せそうな写真。でも、実はこの一家、全員もうこの世にはいないの」


「……」


「わかった。昔の写真だ。昭和とかの」


土屋麗良つちやれいらが人差し指を立てた。


「ぶー。撮ったのは平成です。みんな生きていても不思議でない。でも、もうこの一家はいないの。ある男によって全員殺害されてしまったから……」


「やっ」


関谷百合せきやゆりが悲鳴を上げる。


「多分、この中に知っている人もいるかもしれない。十数年前おきた一家六人殺人事件。で、事件を捜査した警察の人が、その写真を見てあることに気づいたの」


「なにを?」


井上梨絵子いのうえりえこが身を乗り出す。


「よく見るとその写真に、光の点みたいなのがいっぱい写っていて、それが一番多く写っていたのが、奥さんなのね……」


きいらが、みんなの反応を確かめながらつづけた。


「それが何を意味していたかというと、警察の人が後に気づいたんだけど、被害者が刺された場所と一致していたんだって、光が。それで、なんで奥さんに一番多く光が集まっていたかというと、奥さんの浮気相手だったんだよね、犯人は」


「……」


「で、意味を知ると怖い写真って、それだけではないの。なんで警察がこの写真に注目したかって事。実はこの写真に犯人が写っていたの」


「え?まさか、お祖父ちゃん?」


張本唯衣はりもとゆいがいった。


「ううん……家族全員の瞳の中に。犯人は写真を撮影したカメラマンだった」


「……」


「どう?怖いでしょ?」


「ん~、怖いでしょ?って聞かれると、素直にうん、とは言いづらい」


海藤凛かいとうりんが返した。


「いろいろ怖いけど、家族の写真を浮気相手が撮るっていうの、怖くない?」


藤田冬香ふじたふゆかがいった。


「その写真、ネットで見れるよ、見る?」


きいらが置いてあったスマホを手に取り、慣れた手つきで操作し始めた。


「マジで……?」


松下里緒菜まつしたりおなが目を丸くする。


「これ」


と画面をみんなの前に突き出す。


「……ホントに光がいっぱい写っている」


隣の席のひかるがいった。


「ヤバい、これが奥さん、満面の笑みを浮かべてるじゃない。ゾッとする」


近藤陽花里こんどうひかりが画面を見つめて、身をすくめる。


「ほのかも見てみなよ」


ときいらがスマホを、中田ほのかの顔に近づけた。


「いいよ、やめて」


顔を背け、嫌がるほのか。


「見てみて」


「やめてぇな」


本気のトーンのときに出る関西弁がほのかの口からでた。


一同が静まり返る。


「ごめん」


きいらはスマホをひっこめた。





事故物件へつづく

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