12-B 先代のマジカル☆ドリーマーズが残したもの

 緑、黄色、青に輝く三つの宝珠のに、倒したはずのマッスル、センチュリー、クリスタルの三人がそれぞれ姿を現した。

 宝珠から出てきた光が、それが彼らの体を空中に映し出していた。なので、実態を取り戻したわけではないのだ。

 マジカル☆ドリーマーズが戦った時と同じ格好のままで、しかし、その表情は敵対するそれではなく、むしろ再会を喜ぶように笑顔を浮かべていた。


「よお、蝶介……いや、マジカル・バタフライ! 腕相撲以来だな!」

「は? な……なぜ俺がバタフライだと」


 今の蝶介は変身前の姿で、普段と変わらぬ筋肉ムキムキの男子高校生である。マッスルと腕相撲対決をしたときはマジカル・バタフライの姿だったので同一人物とはバレていないはず、と蝶介は思っていた。

 しかし、今マッスルは確実に蝶介を見て「マジカル・バタフライ」と言ったのだ。(ちなみに、マッスルが蝶介の名前を知っているのは、夏合宿の時に一緒に筋トレをしているときに聞いたからだよ!)


「今、『どうして俺がマジカル・バタフライだとわかったんだ?』って思っただろ! ペンダントの中からずっと見ていたからわかるんだよ!」


 ガハハハハ! と豪快な笑い声を上げてマッスルが蝶介の肩をバンバンと叩く。といっても、あくまでも映像としてのマッスルの手は蝶介の体をすり抜けてしまうのだが。


 ――ペンダントの中からずっと見ていた! この言葉に悠花は背筋が凍る思いがした。もしかして、もしかして部屋での私の様子をセンチュリーがずっと見ていたって言うの!?


 恐る恐る悠花がセンチュリーの方を見ると、それを察したのか彼が軽くウインクをして言った。

「ヌハハハハ! 悠花殿は創世ぶほわっ!」


 センチュリーが言い終える前に、悠花が真顔で宝珠に両手をかぶせて、光を消した。彼女の指の間から漏れる光が辛うじてセンチュリーの姿を空中に映し出しているが、映像もはっきりしないし、声も聞き取ることができなかった。


「そうせ?」リーサがセンチュリーの言葉を復唱すると、

「なんでもないの! そうせ……ソーセージに最近はまっているって恥ずかしくて言えなくって!」と、悠花がまたまた見苦しい言い訳をして引きつった笑顔を見せた。

 

 先ほど、年頃の乙女の隠し事には触れないほうがいいと学習した秀雄は、もうツッコむことはしなかった。そして冷静に、クリスタルに向かってメガネの中心を人差し指で触ってから尋ねた。


「君たちは……一体何者なんだい? この宝珠と何か関係が?」



「さすが、超天才の秀雄ちゃん。こういうときも変に慌てることなく、冷静なのね。」

 ふふふ、とクリスタルが笑みを浮かべながら話を続ける。

「そう、私たちはもともとにここに祀られた精霊なの。あななたちのマジカル☆ドリーマーズたちと一緒に夢食いを封印したのよ」

 


 ええ!? とマジカル☆ドリーマーズの五人がびっくりして声を上げた。

「だったんだがな、封印が解かれたあと、俺たちが逆に夢喰いに取り込まれちまったってわけよ」

 マッスルが説明を付け加えた。


 それをマーヤが一旦整理してマッスルたちに確認する。

「えっと、あなたたちは先代のマジカル☆ドリーマーズたちと一緒にかつて夢喰いを封印した。そして、私が封印を解いてしまったばっかりに、ナイトメア★四天王にされてしまった……ということですね」


 そうだ、とやっと悠花から解放されたセンチュリーがうなづいた。


「つまり、夢喰いから解放された私たちはあなたたちマジカル☆ドリーマーズの味方ってわけよ」

 クリスタルがそう言うと、マッスルが次のセリフを横取りする。

「っていうことで、俺様たちの力をおめぇらに託すとするぜ! 先代たちからも、もしものときは新しいマジカル☆ドリーマーズに力を貸してやってくれと頼まれていたからな!」



 マッスル、センチュリー、クリスタルの体が輝き、彼らの体の中にあった強大な魔力が、蝶介たちの持っているコンパクトの中へと吸い込まれていく。そしてその勢いで、三人は「マジカル・ドリームチェンジ!」と変身した。


「お姉様!」

「ええ、これがマジカル☆ドリーマーズの真の姿なのね! 楽しみだわ!」


 光が収束すると、そこには最終形態エレメントスタイルとなったマジカル・バタフライら三人の姿があった。最終形態エレメントスタイルがどのようなものなのか、一人ずつ詳しく見ていくことにしよう。



 まずはマジカル・バタフライから。

 顔はそのままかわいらしいバタフライのまま変わりはない。(中身は筋肉バカだが)しかし体から下はマッスルと同じようなだった。魔法少女の服は今にも破れそうなくらいに縦にも横にも伸びていて、服の上からも筋肉の盛り上がりがはっきりとわかった。(実際は魔法少女の衣装は破れたりすることはないので、筋肉に合わせてどこまでも伸び縮みするのだ!)

「何よこれじゃこりゃ!」

「いいぜ、似合ってるぞ! 肩にメロン載せてるみたいだぜ!」マッスルのマッスルワードに一瞬バタフライの顔が嬉しそうになったのを見逃してはいけない。



 次にエターナルを足下から見ていくことにしよう。下半身は何も変わっていない……上半身もいつものエターナルと変わりない。そして頭も……髪型も同じで一見何も変わっていないように思われた。

「うむ、エターナルも立派な構成員の一員だな!」そう言ってセンチュリーがエターナルに手鏡を渡した。そして自分の顔を見て「ぎょえええええ!」と叫んだ。

 なんとエターナルの顔がが施されていたのだ。

「……ヘビメタ?」リーサがぽつりとつぶやくと、「センチュリーとお揃いですわね!」とマーヤが喜んだ。

「いいわけないでしょ!」と困りながらも、実はこっそりエターナルも喜んでいた。



 最後にオーシャン。

 可愛らしい顔はペイントなどもなく、いつもと変わりない。姿形が特に大きくなったりもしていない。変わったところといえば、いつもの格好に白衣を着ていることくらいだった。

「……」

 自分の姿を確認して、特に代わり映えしていないことに気がつくと「なんだ、つまんない」とオーシャンはちょっと残念そうに呟いた。

「つまんないって何よ! 私の白衣は着ているだけで魔力が上昇する優れものなのよ!」クリスタルが、もう少し喜んでくれてもいいじゃない、あんなじゃないんだから……と若干不満げな表情を見せた。



「そうオーシャン秀雄! それは確かにムキムキになりたいけれど、こんなの私の望んだ姿じゃないもの俺は自分の力でムキムキになりたいんだよ!」

「私なんて顔にペイントされただけよ! これじゃ恥ずかしくて戦えないわ!」


 ムキムキの可愛い女の子と、可愛いんだけど白塗りの悪魔のペイントをした女の子に近づかれると、さすがに圧が強く、オーシャンが苦笑いをして一歩後ずさる。


「ああん? なんだよ、その最終形態が不満か? まあ確かにそこまで筋肉があると動きにくいもんな……じゃあ姿、力だけが上がるようにしてやるよ!」

 マッスルのその言葉に「だったら最初からそうしてればいいじゃないできるんだったら最初からそうしてくれ!」とツッコむマジカル・バタフライだった。

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