第130話 独裁者の暴言が好機を齎す

 北朝鮮の金鄭云総書記が缶酷との統一政策の放棄を宣言。北朝鮮は露西亜の手助けを受け、GPS装備ミサイル技術で缶酷を追い越したと自負し、国家破綻を目前にし、破綻するならまだ見栄えのいい缶酷を頂けばいいとばかりに横柄な態度を顕わにした。

 これに対し戦わずに他国の紛争に兵器力を消耗する米国は浮足立った。1対1なら健全な状態の米国は負けない。しかし、1対2では危うくなり1対3では敗北する。ウクライナ、イスラエル、そして朝鮮半島が加われば手が回らないのが実情だ。それが現実化しようとしていた。北朝鮮の国内は常習の餓死状態。国民はやせ衰え将軍様一家だけが肥満状態に洗脳された国民も「なぜ、将軍様だけは太っているのか」と子供のような疑問が湧き上がっている。窮鼠猫を嚙むと同じで、餓死するなら死ぬ前に旨いものを食べたい。そんな思いが将軍の食料を奪いに来る恐怖に金鄭云総書記は怯えていた。馬鹿な国民が考え始める前に缶酷という餌を国民に与え、襲えば飢えを凌げるとばかりに缶酷を敵視し、自国内の悲惨さから目線を逸らせようとしていた。やたらとミサイル発射を行う北朝鮮の態度は、米国に缶酷攻撃がフェイクではないのではの懸念を増幅させた。万が一、新たな紛争が起こってから対応していては間に合わない。この機に及んで中酷による台湾侵攻が頭に過る米国だった。

 疑心暗鬼の米国は万が一に備え、紛争抑止の意味合いも込め、朝鮮半島に近い西太平洋(ハワイより西の日本海・黄海。東シナ海、フィリピン海・南シナ海及ぶことも)に米海軍の保有する11隻ある空母の内、原子力空母ロナルド・レーガン、カール・ビンソン、セオドア・ルーズベルトの三隻、エイブラハム・リンカーン、ジョージ・ワシントンも日米缶の合同演習を終え合流し、計五隻が2024年4月の缶酷総選挙や5月の台湾新総統就任に間に合うよう集結させる。米国空母はイージス艦やミサイル駆逐艦、原子力潜水艦などと空母打撃群を更生する。米国の本気度が伺える。きっかけは、調子に乗った金鄭云総書記の「日本にある米軍基地もミサイルの標的となる」との言葉だった。台湾有事に備えて中酷と一触触発の危険を避けるため積極的に軍を送れなかった米国にとって台湾近海に軍を配置できる大義名分を手に入れたことになる。

 米国にとって北朝鮮と缶酷の小競り合いなど興味はない。あるのは中酷の動きだ。はっきり言えば米国は缶酷の崩壊を望んでいる。崩壊させた後、統治するのが狙いだ。政権が変わるたびに態度を豹変さ、約束を守らない話の通じない缶酷。瀬取など密輸で米国にとって敵対国に物資を横流しする切除すべき瘤でしかない。テロ国家の北朝鮮をも潰し、民主国家を米国主体で構築する。便宜上、他の民主国も巻き込むことは言うまでもない。北朝鮮は中酷を睨みつける軍事施設として最大の基地と成り得る。中酷からの抗議に対し金鄭云総書記の宣言を持ち出し、「文句があるなら奴らを抑え込め」と反撃できる。米国にとって金鄭云総書記の暴走・暴言は米国からは千載一遇の機会を手にしたことになった。

 一方、中酷では秀欣平自らが創設した軍の頭脳とされるロケット軍の幹部を汚職などを理由に更迭した。その本当の理由がいかれている。米軍を手本としたロケット軍の軍人は米軍への憧れやリスペクトがある。それを米国に取り込まれたとスパイ容疑として捉えたものだった。欠員は畑違いから補填。これは上官の信頼関係に及び弱体化を余儀なくされた。実際、汚職は存在していた。それは中酷では平常運転の範疇だった。戦争回避を願う軍関係者は米軍と密に連絡を取り、偶発的な衝突が起こらないようにしたい。それをスパイ行為と許さないのが秀欣平だ。この対応は軍幹部の米国への亡命に拍車を掛ける恐れを潜ませていた。

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