エピソード3 アレス級攻撃型潜水艦の過去

 午後13時45分、エルガー海沖50キロメートルの地点。海面から潜望鏡を覗かせているのは、アレス級攻撃型潜水艦だ。

「周囲に敵艦影、発見なし」

「艦内酸素量が間もなく、ゼロになります!」

「緊急浮上しろ。艦内空気を一新いっしんの後、浮上航行」

「ヨーソロー!!」

 航海長のカティーナが艦長のメルストリアの指示に返事をした。


 潜水艦という狭い檻の中から解放された機関員や給仕員らは、常務ではなく艦内空気の入れ替え作業を行っていた。

 アレス級攻撃型潜水艦の常務乗員正規戦闘員非常務乗員非正規戦闘員になった初めの研修内容は、配属先の仕事内容よりこういった協力作業を優先的に教え込まれる。何故なら、乗員が少ないから!

 全長286,0メートルの船内には多くの個室や倉庫などが有るが、それは異世界に来る前に地球で第三次世界大戦の前線として頑張っていた名残だ。

 アレス級攻撃型潜水艦と館長になる前のメルストリアから命名される前は、アメリカ合衆国海軍所属のSSN-21。通称、シーウルフ級原子力潜水艦の1番艦として活躍していた・・・らしい。何故わかるかって?このふねを見つけた時にあった艦内日誌的な本に書いてあったから。

 甲板に上がったメルストリアは、所々に付いている赤錆を靴底で擦り取っていた。

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