日常

 ピピピピッと鳴る目覚ましの音で彼女は目が覚めた。軽い頭痛がし頭を抑える。彼女は起き上がり頭痛に耐えながら制服に着替える。ありふれているセーラー服に着替えた彼女はそのままキッチンに行き冷蔵庫から前日の夜に買っておいたサンドイッチを立ちながら頬張る。食べ終わった後、彼女は自転車の鍵とカバンを持ち外に出た。午前6:00分。まだ外は薄暗く肌寒かった。近所の住人はまだ寝ているか早い人でも朝食を作っている時間だ。それだけ彼女の学校は彼女の家から遠いのだ。


 彼女は至って普通な人間である。テスト前だったら勉強はするし宿題はきちんとやってくる。しかし今日はそれどころではなかった。教師の声は彼女には届かない。当たり前だ。寝てるのだから。先日の精神的な疲れが抜けきれてないのか、彼女は睡魔に襲われていた。耐えがたい睡魔に耐えられなかった彼女は、そのまま頭を頬に当てた手で支えて眠っていた。授業を行なっている老人は最近目が悪くなっており彼女が眠っている事には気付いていないであろう。だがしかし、運命は残酷だ。もし仮に今日が4日で会ったらよかったであろう。しかし今日は3日。彼女の出席番号は3だった。



 職員室で教員にこってり絞られ彼女は部活動に行った。普段寝ない分寝てる人より倍怒られたのは仕方がない事だろう。彼女はバドミントン部に所属している。小さい頃からやっていた訳でもなく、ただなんとなく入っただけだ。中学ではなんとなく陸上部に所属していた。部室の更衣室に行き彼女は制服から体操着に着替えていく。セーラー服を脱ぎ、下着を動きやすいスポーツ用の物に変える。体操着を着てバッグの中に入っているラケットを取り彼女は体育館へと向かった。体育館の中では既に練習が始まっており、男女が分かれて打ち合いをしていた。

 顧問の体育教員で鬼と名高い長谷川先生が浦崎を見つけ歩いていくる。

「浦崎、やっと来たか。取り合えず走ってこい。外周を5回だ。その後ラケットもってどこかに入れてもらえ」

「分かりました」

「あと挨拶しろ」

「はい」

 彼女はラケットを置いて校門まで行く。学校の敷地はなかなか広く、外周5周でもかなりキツイ距離となっている。しかし彼女は元陸上部、しかも長距離だったのでそれほど掛からず終わってしまった。彼女は体育館へと戻りラケットを手にして2対1でやっているコートへと向かう。そこは男子側だったのだが彼女はそれほど気にしていない。彼女はポケットから出したヘアゴムを使い髪形をお団子にしていく。

「お、浦崎入るか?よっしゃ、これで2対2だな」

「よしお前、チーム変われ」

「残念だったな!お前には女子とチームワークする権利などない!それにさっきまで全面カバーだったんだ!十分な報酬だ!」

「報酬ってなんだお前!お前は浦崎を物扱いする気か!」

「さっさとやらない?」

「「はい!」」

 結局男子は女子が混ざってればどうでもいいようだ。

 ペアの男子が羽を彼女に渡した。それを見た瞬間相手のペアは苦虫を嚙み潰した様な顔をした。当たり前だ。彼女のサーブは危険すぎるからだ。バックハンドで彼女は相手コート端に落ちる高さまで上げる。相手ペアはトップアンドバックであったため片方の男子がが後ろまで後退する。男子はそこからハイクリアで羽を返し彼女側のコートの中央辺りまで飛ばした。

「あ、ばか!」

 まさしくベストショットが打てる位置。彼女はその羽をスマッシュの動作で打ち返した。しかし実際はヘアピンの様に羽は遅くネットに当たり、そのまま地面に落下した。

「「ああぁぁ忘れてたぁぁ!!」」

「っへ。どうだ!」

 彼女は別段うまいという訳ではない。ただ相手をウザがらせるプレイができるというだけだ。まあ正確なショットができるという前提があるが、そこはバトミントン部に所属している為自ずと身に付くものであろう。彼女はそんな調子で、時間終わりまで彼らと練習していた。



 片付けが終わり彼女は着替えるために更衣室に入っていく。中は既に他の女子部員に占領されていて、とても着替えられる様な感じではなかった。彼女は自分の着替えを取って女子トイレへと向かった。着替えを済ませ更衣室にある荷物を取って中に入れる。

「知花ちゃん。行こ」

 一人の女子部員が彼女を待っていてくれた様で彼女はその女子部員に付いて行き、そのまま下駄箱まで行った。

「いやぁ、やっぱすごいね。男子相手にできるなんて」

「別に嫌がることしてるだけだよ」

「それも技術、つまりは知花ちゃんの実力だよ」

「別にそんな...」

「褒めは素直に受け取っておきなさい。それと、私一応先輩なんだけど....しかも部長」

「あれ?」

「やっぱ覚えられてないか...」

「すみません」

「ははは、知花ちゃんは天然だからね、、ははは」

「天然じゃないですよ」

「うーん、まぁいいや。じゃ、また明日」

「あ、はい。さようなら」

 彼女は靴を取って上履きと履き替えると、思い出したようにお団子を解いてポケットから自転車のカギを取り出した。駐輪場まで行き彼女はそのまま家へと帰る。玄関まで行った時に、彼女はふと、昨日の出来事を思い出してしまった。

 燃え盛る男は生きていた。男達は殺し合っていた。では氷の男はどうなったのだろう。彼女はあまりにも一般的な答えを出す。

「(氷の男は、あの炎の男に殺された)」

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