第3話 全身麻酔は一瞬の出来事

 入院してから4、5日が過ぎました。

 病状はあまり変わりません。

 高熱が続き、呼吸も苦しい。

 指に挟むあの機械、たしかオキシメーターっていうものです。あれの数値が90近く。90を切るときもありました。


 最初、内科的治療をやる予定でしたがそれではかなり時間がかかるため、外科的治療にきりかえてはどうかという話になりました。

 僕の担当医はM医師という優しそうなイケメンでした。実際口調も穏やかで、説明もわかりやすかったです。

 点滴の薬での治療だと一月、下手すれば二月以上入院が必要とのことです。

 外科手術を行い、肺炎でたまった膿を抜くほうが入院期間を短くできるということなのです。肺にたまった膿を抜くほうが体も楽になるとのことです。

 手術は全身麻酔をし、人工心肺をつけ、右脇にいくつか穴を空けてチューブでその膿を吸い取るというものです。

 説明を受けただけで、ヒエーとなりましたが僕は手術を選びました。

 それは早く退院したかったからです。


 コロナ禍の病院は基本的に一般の面会は禁止されてます。

 荷物の受け渡しも事務の人を通じて決まった時間にしかできません。

 病気のつらさもそうですが、その閉塞感に僕は辟易としていました。


 そして週明け、いよいよ手術です。

 手術用のやたらピチピチの靴下をはかされ、ベッドごと手術室に移動します。

 なんか映画やドラマで見たあの感じです。

 でも手術室は思ってたのとちょっと違いました。

 かなり大きな明るい部屋といった感じです。

 手術用のベッドにはなんと自分で移動しました。もちろん看護士さんに手伝ってもらいましたが。

 手術はあのイケメンのM医師ではなく(この方は内科の先生でした)S先生といういかにもベテランという雰囲気の医師でした。


 ベッドに寝かされた僕は背中に注射を何本かうたれ、寝かされます。

 何か口とかにとりつけられたような気がしましたが、そこでDVDの動画をプチンと停めたように途切れます。

 最後に見たのは手術室のやたらまぶしいライトでした。


 次に気がつくとなんと手術は終わってました。

 最初に目にしたのはゴーグルを着けたあの優しいM医師。

 手術は成功したとのことでこれから丸一日ICUで経過をみるとのこと。

 手術はざっと三時間。

 右脇腹には2本のチューブがつながっていて、機械でまだ残っている膿を吸いだしているのです。

 このチューブのつながった機械とこれから約二週間ほどつきあわされます。

とんでもなく不便な生活の始まりです。


 全身麻酔は緊張しましたが、やってみれば本人的には一瞬でした。

 本当のつらさが待っていたのはこの後の入院生活なのでした。

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