第2話 それは夢か幻か

 入院して二日目の夜のことです。

 ついに熱は40℃を突破してしまいました。

 全身が熱く、意識ももうろうとしてます。

 看護士さんが用意してくれた氷まくらが非常にきもちよかったです。

 そんなうつろな意識の中、僕は夢とも幻覚ともわからないものを見ました。



 気がつけば、僕は岬公園のロータリーにいました。

 岬公園といえば大阪府の南部に住む人にとって馴染み深い場所ですね。

 僕も小学生のころによく遠足でいきました。

 動物園も併設されている遊園地です。

 コロナ禍で閉園してしまったのがとても悲しいです。


 そのロータリーで僕はバスを待っていました。

 なぜそんな所にいるのかはわかりません。

 ただ、そこでバスを待って、来たならばのらなければいけないと思いました。

 夏の陽射しは暑く、だまっていても汗が流れてきます。

 遠くの景色がゆらゆらとゆれていました。

 はやく来ないかな。

 僕は思いました。

 早く涼しいバスに乗りたい。

 そう思いながら待っているとバスがエンジン音をかなでながら、ロータリーに入ってきました。見慣れたオレンジのラインがはいった大型バスです。

 そのバスはプシューという音をたて、僕の前に停まります。

 自動ドアが開き、中から心地よい冷気が溢れてきます。

 僕は手すりを持ち、ステップに足をかけました。

 不思議なことに車内はまっくらで中の様子はまったくわかりません。

 ただ、空気だけが冷たいのです。

 続いてもう一歩足をあげ、ステップをあがろうとすると真っ白い手が車内から出てきました。

 その手は何者かはわかりません。

 ただ、手だけが見えました。

 白い手だったので女性のものだったのかもしれません。

 その手が力いっぱいに手すりをつかんでいる僕の手を払いのけました。

 続いて僕の胸のあたりをドンとおします。

 僕は押されて車外に飛び出してしまいました。

 ふらふらともと座っていたベンチまでもどっていきます。

 ベンチにすわるとバスはドアを閉め、走りさっていきました。


 そこで目が覚めました。

 すっかりぬるくなった氷枕を看護士さんが取り替えようとしてくれていました。

 熱のある体に氷枕は気持ちいいものです。


 しかしあの夢はなんだったのでしょうか。

 あのバスに乗っていたらどうなっていたのでしょうか。

 あの白い手は誰のものだったのか。

 単純に熱にうなされて見た幻覚か夢だったのか、それとも別世界への入り口だったのか。

 創作をする者として後者の可能性は捨てずにいます。

 普段、オカルトやホラーは大好きなのですがそれは創作物としてです。

 自分が体験するのはほぼないです。

 この夢か現実かわからないものを見たのが、数少ない経験だといえますね。

 まあ、なんにせよ、あのバスには乗らなくて正解だったと思います。

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