第28話 エキュとルキュのリス艦隊


【エキュ視点】


「これから私が頑張らないと、シンセイさんの妻としても、ケーノの王女としても」


パーティーが終わり、シンセイを見送った後、屋敷の執務室の机に向かい、エキュは拳をぎゅっと結びながら気合を入れる。

するとルキュが部屋に入ってくる。


「えきゅねえしゃま、るきゅもているしゃまのためにがんばりゅ」


ドアを開け入ってくるなりそういうので、まずはお勉強がんばろうね、と教育係兼世話係のMG-800に目配せする。

元気に返事をして両手でこぶしを握りフンスと気合を入れるルキュは、MG-800に今日はどんなお勉強するの?と楽しそうに話しながら部屋を出ていった。


「まずやるべきことはこの国の現状回復からかな」


サポート役のMG-800の一人を呼んで、今後どのようにこの国を発展させていきたいかの希望を伝え、

現状と今足りないもの、今後必要になる物などを調べてもらい報告してくださいと指示を出す。


エキュの希望は自然を残して自然とともに発展していきたいと思っている。

主力産業となるであろうプラントの建設もこの国に合うように金属製ではなく木などの自然物でできないか、

自然農業を残しつつ畜産もできないか、そのためにはどうしたらいいのか等MG-800に相談していく。


「私はまだまだ知らないことや出来ないことが多すぎます、なので私に知識や技術を教えてください」

「エキュ様が希望するのでしたら、わたくし共は全力で協力させていただきます」


エキュの一言に意志の強さを感じ、お辞儀をしながらMG-800が答える。

エキュもシンセイの役に立ちたい、隣に立って恥じない人になりたいという思いを胸に書類に目を通しMG-800にも意見を求めそれを吸収しつつもどうしてそうなるのかなど自分で考えることも怠らなかった。


半月後、ヤマト本星から二百隻にも及ぶ最新鋭艦隊がケーノに到着する。

最初艦隊を見た国民は他国の侵略かと慌てたが、艦隊に描かれた柴犬のマークを見て安心して日常に戻ったと同時にこれだけの艦隊を送ってくれたヤマト代表に感謝をする者も現れた。

シンセイからは

「まずは二百隻のエキュとルキュのための艦隊を編成した。自由に使ってくれ」

と通信を受けていた。

今現在ケーノにはヤマトから四百隻のケーノ仮駐留艦隊を預かっている。

それとは別に正式なケーノの軍への配属、それもエキュとルキュのケーノ王族直属艦隊として送られてきた。

軍基地の拡張も順調で、現在常時五百隻、最大で千隻程度の艦隊を運用できる規模になっている。これもヤマト本星から送られた技術者が指導してケーノの国民から作業員を雇い、全ての支払いはヤマトが持っていた。

本当にヤマト本星に足を向けて寝れないとエキュは感謝していた。


私とルキュは艦隊到着の報告を受けて、軍基地に出来た新しいミーティングルームで二百隻のクルーの代表を集め、その前に立っている。

ここにいない隊員には基地内、各艦内でモニターにて放送もしている。

クルー代表たちとはいえ数百人が乱れず綺麗に並んでいるのはすごいと思った。

シンセイの希望でクルーの八割が女性という特殊な隊になっていた。

ルキュはきれいに整列しているお兄さんお姉さんを見て、目を輝かせている、

私はと言うとあまりの人の多さに目を回しそうな状態である。


「エキュ女王様・ルキュ様の直属艦隊として、本日着任いたしました」


一番前に立っていた直属艦隊司令官と名乗った女性がヤマト式の敬礼をして着任の報告をする。

前もってシンセイに相談していて、隊の名前をリス隊としていたので、この人たちは私たちの直属艦隊のリス隊です。


「ご苦労様です、長旅で疲れているでしょうから艦隊の整備は基地の人に任せて、今日は休んでください」


私はそう言うと司令の人が、一瞬驚いた顔をしたが直ぐにまじめな顔に戻り、了解しましたと言うと振り返り、


「エキュ女王様が私たちに今日1日休暇をくださった、各隊員はゆっくり休むように」


そう伝えると歓声が上がる、その迫力に押されてしまい顔がこわばってしまう。

するとルキュが、


「きょうはおやすみだからあそぶの、まちにけんがくにいくの」


と司令官の手を取り連れていこうとする、さすがにそれは駄目だと止めようとすると司令官が、


「大丈夫です、お任せください」


と言ってそれまでの真面目な顔を崩しルキュに笑顔でどこに行かれるのですか?と聞きながら部屋から出ていってしまう。

教育係兼世話係のMG-800に何かあったらルキュを叱って構わないと伝え二人に着いて行かせる。

部屋には困った顔の私と隊員だけが残される状況になった……これどうしたらいいの??


とりあえず隊員に解散の指示を出し、私も部屋を出る。

出てすぐに直属艦隊の整備担当主任が声をかけてきた。


「エキュ様少しお時間よろしいでしょうか、お話とご相談がございます」

「はい、えっと、なんでしょうか?」


突然でびっくりして、返事をしながら振り返ると若いお姉さんが笑顔でこちらを見ていた。

リス隊の艦隊の構成の説明とマークをどうするか、という話だった。


エキュ・ルキュ直属艦隊、通称「リス隊」


旗艦は最新鋭大型巡洋艦に戦艦並のジェネレーターと機関を積んでおり、

全ての艦にはネメシスのコピープログラムAIがインストールされている。

外装シールドは巡洋戦艦の物、バリアも戦艦並みのジェネレーターのおかげで緊急時には多重展開が可能なほどの高出力、

巡洋艦としての防御力はヤマトが所有する全巡洋艦の中では一番の硬さ、

武装は主砲に超長距離狙撃用レールガンが二門・長距離パルス砲二門、副砲は対艦載機ビーム速射砲、小型短距離迎撃ミサイル、

主砲のレールガンは、最大射程300㎞、有効射程200㎞、100㎞以内であれば小型戦艦の装甲も撃ち抜ける威力がある。

艦載機は護衛用に迎撃戦闘機三十機。

他の艦も強化ジェネレーターと高出力バリアに長距離レールガン搭載で艦載機は少なめといった

武装だけ見ると完全な後方狙撃型の艦隊である。

シンセイがエキュを前線には出したくないという愛が詰まった艦隊構成を感じられる。


構成の説明を受けたら次はマークの話になる。

マークについては前もってルキュと考えていた、

リスの背中に子リスがおぶさっている絵柄を、端末からモニターに映しお姉さんに見せる。


「何これかわいい、エキュ様ルキュ様がモデルですか?」

「あっはい、せっかく二人なので二匹のリスをと決めました」

「ではこれを各艦の整備班に回しておきます」

「おねがいします」


そう話すとお姉さんは敬礼をして

「これかわいすぎてだめだ、早くみんなに見せないと」

とぶつぶつ言いながら走って行ってしまった。

なんか喜んでるようだしいいかな、と私も歩き出す。



数日後マークを入れてリス艦隊が整備完了したとの報告を受けて、ルキュと基地格納庫に来ていた。


「はうー、るきゅがかんがえたえがついてるの」


旗艦のサイドに描かれたマークを見てルキュは興奮してぴょんぴょん跳ねている。

それを見てだらしない顔になっている整備員たちが居る。

うーんこの人たち大丈夫なのだろうか?などと思いながらも、自分たちが考えて描いたマークがついているのを、感動しながら見ていた。

後ろに立っていた司令官のお姉さんも目をウルウルさせて笑顔で、


「これで本当にリス艦隊の誕生ですね」


と言ってくるので、「これからよろしくお願いします」と頭を下げる。


のちに色々あって「リスターズ」と呼ばれサース銀河で恐れられる艦隊の誕生であることは、この時は誰も知らないことである。










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