第27話 アルトメイトと新会社
「さてこいつらをどうすっかな」
私の前に8匹の真ん丸に肥えた豚……じゃなかった人が縛られた状態で転がっている。
ケーノでのパーティーや公務を終え本星に戻った私は、身柄を確保していた元同盟国の元代表たちをどうするかで悩んでいた。
「正直いうとさ、報酬として惑星を俺らにくれたし、こいつらはどうでもいいんだよね」
「つかいみちねえし、その辺に放り出しちゃえばいいじゃねえか」
「下手に放り出して逆恨みとかされてもいやだしな」
そこにアリスから各惑星の住人からの嘆願が来ていますと伝えられる。
内容は簡単に言うと、
元代表の生殺与奪権を元住人に渡し好きにさせてほしいというらしい、
住人は元代表の悪政に苦しまされていたため憎んでいるようだった。
「これ許可したらこいつら殺されるどころじゃすまないかもな」
「いいんじゃね、そんだけの事してたんだろ」
嘆願の内容を見たテイルとレイカの言葉に、転がってる豚たちは顔を真っ青にしてフガフガと騒いでいた。
「まあ自業自得ってやつだな、自分たちだけ美味しい思いしまくってただろうし」
「それでは嘆願の通りという事でよろしいでしょうか」
私の言葉にアリスが聞いてくる、テイルとレイカはそれでいいと頷く、それを見て私が頷き、
「という事だ、このままこいつらを各惑星に捨ててこい」
私の言葉に兵士たちは敬礼をし、8人を連れて部屋を出て行った。
「惑星の開発をしろ、予算は出さんが税金はよこせって、さすがに酷過ぎだよな」
扉が閉まって、各惑星の奴らがしてきた事を調べた報告書を見ての私の言葉にその場に居た皆が頷く。
その後、各惑星の開発に必要な資材や機材の調達をシャボールとリリーに注文し、各惑星に届けてもらうよう手配する。
それと並行して本星の役人を数人づつ各惑星の管理のため送る事が決定する。
MG-800を10体づつ置いてきているから問題ないのだが、最初はアンドロイドに従うという事に抵抗がある住人が居るかもという配慮のためで、新たな役人が来るまでの暫定処置であるとは伝えてはいる。
数か月後、リリーがアルトメイト社のお偉いさんを連れてやってきた。
来賓室でリリーとアルトメイト社のお偉いさん2人と私とアリスとテイルが向かい合う。
レイカは相変わらず訓練と称した治安活動である。
「本日はアルトメイト社の上層部の方々が直接とは、どういう用件でしょうか?」
「挨拶が遅れました、私はアルトメイトの兵器開発部部長でランディです、
こちらは兵器製造部部長のモスです、
この度は突然の訪問にも拘わらず、このような場を設けていただきありがとうございます」
ランディと名乗る人が挨拶をして用件を伝えてくる。
これまでの発注の履歴から、発想が面白いと社内の各部署で話題になっているらしい、
発想などは私が見た過去のアニメやマンガが元になっているからな、実際それを可能な限り実現してきたアルトメイトがすごいのでは?
などと考えながらも話を聞いていく。
上層部がヤマトと協力して新しい兵器などの開発ができないかと話が出ているらしく、今日はそれを打診するために来たという事らしい。
「それは俺たちの知識や発想をよこせという事か?」
「いえ、私たちの開発に対してヤマト連合様からアドバイスをいただければと」
私の問いにランディが答え、私はテイルの顔を見ると険しい顔をしていた。
そしてテイルがランディたちに提案をする。
「ヤマトとアルトメイト社の合同出資で新会社を設立して、そこで開発や製造をする、というのはどうでしょう?」
それを聞いて一瞬驚いた顔をしたランディは、この場では決められないが戻って提案してみますと、詳しく話を聞きたいと促してきた。
ヤマト連合各国とアルトメイト社がメインで、他に第三者の企業、もしくは商会を出資として、新会社を設立。
ヤマト領地で鉱石やガスの採掘・採集できる惑星が有り、そこを工業化して会社や工場などを置く。
開発・研究にはヤマト連合が協力、製造にはアルトメイト社と参加する企業が協力、販売網は各出資商会に。
という初期案をテイルが提示する。
それを聞いたランディは、モスとリリーの顔を見るとすぐ帰って上層部と会議だ、と勇んで帰っていった。
3人を見送った私は、大丈夫なのだろうか?と悩んでいると、テイルから、
「もし新会社でワープホール等GGOであった物が開発されたらどうだ、便利にならないか?」
それを聞いて私は、GGOでの知識をアルトメイト社の技術を使ってこの世界に誕生させようというテイルの考えに同意する。
アルトメイト社は星系をいくつも持つ企業国家でサース銀河の半分以上の国や勢力を相手に商売をしている。
日用品から兵器まで幅広く開発販売しており、各取引国でトップシェアを独占。
数々のロングランヒット商品を生み出している企業国家である。
そんな企業国家がヤマトの急速な拡大と今までなかった発想や知識に目を付けたのだった。
ヤマトもそんなアルトメイトの製造技術に目を付けた。
お互い持っていないものを補い合えたらという思惑の中で手を取り新会社を作ろうとしている。
しばらくはアルトメイト社とお互いに譲歩しながら案を詰めていき、
工場や研究施設・本社はヤマトの第四星系を工業化しそこに建設。
支店をアルトメイトの本星に建てる。
出資を、ヤマト連合で四割・アルトメイト社三割・アルトメイト社とは関連のない開発研究企業と、ヤマトのお抱え商会のシャボール、アルトメイト社のお抱え商会など数社が残りの三割
研究員・開発員・製造員・はヤマトとアルトメイトから募集して採用する。
指導や教育に関してはアルトメイトの協力。
販売先に関してはヤマトとアルトメイトの決める相手とする。
でほぼ決定案とされた。
契約のため、ランディがアルトメイトの代表を連れてヤマトに来た。
「わざわざお越しいただきありがとうございます」
「こちらこそヤマトの代表とお会いできてうれしい限りです」
無難な挨拶をして握手する、代表はアルトと名乗り、
一代でアルトメイトをここまで大きくさせたと笑いながら自慢気に話していた。
自慢気に話してはいても嫌味っぽく聞こえないのは、アルトの性格のおかげなのかもしれない。
見た目は中年に差し掛かっているくらいなのだが、年齢を聞くと二千歳を超えているとか……
実際に聞くと科学力すごいとしか思えなくなる。
アルトの目にはまだまだ大きくするという野望が見え隠れしていた
その後は案の再確認と建設予定星系の視察をして、新会社の契約とヤマト連合・アルトメイトの友好条約を締結。
今後も良い関係を続けていきたいというアルトメイトからの提案である。
条約と言っても簡単に言うと、お互いケンカしないで仲良くしようねという約束である。
契約と条約を結ぶとアルトは本星系を見て回り帰っていった。
「さてこれから忙しくなるぞ」
そういう私の言葉に楽しそうな顔をしていたテイルも頷く。
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