第25話 テイルとるきゅ


レイカによって強制的に結婚が決まった翌日


翌日になっても実感がないのでベットの上で夢の中にいるような状態である。


「シンセイ様、本日は午前中にヤマト連合全星系にシンセイ様とエキュ様の結婚発表とテイル様とルキュ様の婚約発表です、午後からは式の日取り等を決めます」

「ああ、そうだな、」


アリスから今日の予定を聞いて覚悟を決めた私はベットから下りて支度を始める。




「ヤマト連合代表シンセイ様と連合国ケーノのエキュ王女様の結婚。

 そしてヤマト連合国ビショップ代表テイル様とケーノ第二王女ルキュ様の婚約を発表いたします」


・・・・・


「これにてエキュ王女様の結婚とルキュ様の婚約の発表を終了とさせていただきます」




発表式典は無事に終わった、というか終わっていた。

屋敷の応接室に下がった私たちは束の間の休憩をとっている。


「俺緊張して、何も覚えてないんだけど」

「シンセイでも緊張するんだな」


私の言葉に先に昼食を終えたレイカがケタケタと笑っている。

こいつのせいだと睨むが、そっぽを向き我関せずといった態度をとる。


「シンセイ様、この後は、その、…式の日取りなどを、」


隣に座るエキュがこの後の事を話しかけてくる、照れて顔真っ赤にしてうつむいてる姿はかわいいのだが。

正面ではテイルが食事をしているルキュの口元を拭いたりと世話をしている、婚約者同士というか兄妹や親子に見えるな、などと見ているとテイルに睨まれる。

その状況を見て微笑んでるアリスと部屋の端で腹を抱えて大爆笑中のレイカが居る。

絶対仕返ししてやるとテイルと目を合わせ誓いあう。


式の日取りは銀河時間で半年後に本星で行い、その後ケーノでパーティーをすることで合意する。

それまで私はケーノに残り、テイルとレイカは本星や艦隊をこのままとはいかないので戻るという。

白猫艦隊だけのこし残りの艦隊は各星系に戻る。



テイルたちがケーノを出発する前日、私とエキュ・テイルとルキュで食事をしてる。


「ているしゃま、るきゅはているしゃまのわくしぇいについていきたいの、」

「まだ婚約だからな、一緒というのは何かと問題もあるんだ。(さすがに色々とまずい、色々とな)」

「そうでしゅか、るきゅはいいこでまってるの」


そんな会話をしながら口元を拭いているテイルを見て、吹き出しそうになるのを我慢しながら食事をする。


「シンセイ様さすがに失礼ですよ……ぷぷっ」


隣で私に聞こえる程度の声で話しかけてくるエキュも、吹き出すのを我慢しているようだった。

そんな萌え死しそうな光景を見ながら食事会は終わる。


翌日、混乱を避けるため宇宙港ではなく軍基地から出発すると言うので、私たちは見送りに来ていた。

エキュは何度か来た事があるようだが、ルキュは基地は初めてだったので見るものすべてが珍しいのだろう、テイルと手をつなぎながら、目を輝かせあれはなに?これはなに?と質問攻めにしていた。

ゲート前で「本星のことよろしくな」とテイルにあいさつを交わすと、テイルはルキュを抱き上げ頭をナデナデしながら任せろと答える。


「ているしゃまにふさわしいりっぱなれでぃになるからまってるの」


とルキュに見送られて手をひらひらさせながらゲートをくぐっていくテイルを見ながら

やっぱ兄妹……ぷぷぷっ!

とエキュと一緒に吹き出すのを我慢している。

そんな私たちを首を傾げているルキュが見ていた。

そして無事に浮上していく艦隊を見送り、「もう少し見学してから帰るか」とルキュに言うとぴょんぴょんと跳ねて全身でうれしさを表現していた。

ルキュかわいいよ、かわいすぎて萌え死にしそうだよ。



数か月が過ぎ結婚式をするため本星に向けて出発を控えていた。

宇宙港には大量の国民が見送りに来ていた。

テイルたちのように軍基地からと思ったのだが、私がシャボールに手配した艦隊が揃って居て訓練などもしていた事や、ケーノ側からもみんなに見送らせてほしい、との要望から宇宙港からの出発となった。


「それにしてもすごいな。」

「ほぼすべての人が来てますからね。」


浮上するネメシスのブリッジから見ると、宇宙港に入りきれないであふれている国民たちが見えた。

これじゃパーティーする時もすごいだろうな、と思いながら見送る人たちを見る。

そのまま衛星軌道上で白猫艦隊と合流をし、本星に向けて出発をする。


出発して暫く経ち、部屋に帰ろうとするとルキュを先頭に艦内を子供たちが走り回っていた。

この子供たちはケーノの孤児院出身で本星で教育を受けてケーノの将来を担う子供達である。


「そろそろワープに入るから各自部屋に帰って大人しくするんだぞ。

 いう事聞かないとおやつ抜きだからな」

「「はーい」」


私の言葉に返事をし部屋に帰っていく、後ろをついて回っていた女性がお辞儀をして子供たちを追いかけて行った。

この女性は孤児院の子供たちを世話をしてくれていた人で、今は私が雇用契約を結び子供たちの保護者として一緒に本星に連れていくことにした。

ルキュはもっと遊びたそうな顔をしていたが、「テイルのためにいい子になるんじゃなかったのか?」というと


「るきゅはているしゃまのこんやくしゃだからいいこにしゅるの」


とエキュと部屋に帰っていった。




何事もなく無事に本星に戻ってきた白猫艦隊、子供たちも至って元気、元気すぎて非番で遊んであげていた隊員が次の日疲れた顔で仕事してるくらいである。

艦隊には先に軍基地に降りてもらいネメシスだけ宇宙港に向かう。

代表の妻となるエキュをはじめ、招待客であるケーノの要人が乗っているため、基地ではなく宇宙港からというネメシスの提案である。

お嫁さんのお披露目と一連の同盟との問題解決の凱旋という形になるのかな。

ゲートをくぐると歓声と拍手で出迎えられる、今日のために宇宙港は閉鎖、一般客は抽選で選ばれたものしか入れない。

それでも人だかりがすごい、


「すごいですね、」


施設の規模と人混みに、エキュは目を真ん丸にしながら周りを見渡す。

出迎えの人は口々に「エキュ様かわいい」「こっちむいて」「えきゅさま~」といった悲鳴に近い歓声や声がかかる。

特設の台が作られており、そこに案内された私とエキュは集まった皆に挨拶をするのであった。


「みんな来てくれてありがとう、そしてこちらが俺の妻になる連合国ケーノの王女エキュだ」


エキュが私の紹介に合わせてお辞儀をすると、宇宙港全体が震えるほどの歓声と拍手が起こる。

そして同盟との問題の終結宣言をしてから私たちはシャトルで地上に降りる。

シャトル駅は完全封鎖で先に降りていた要人や子供たちといった関係者と職員しかいない、先ほどとはうって変わっての静寂が有る。

そこでテイルとレイカが迎えに来ていた、


「ただいま」

「おかえり」


二人と簡単に挨拶をすると、テイルにルキュが飛びつく。


「ているしゃまおひさしぶりでしゅ、るきゅいっぱいいいこしてたの」

「そうか良い子にしてたか、えらいな」


と抱き上げながら頭をぐしゃぐしゃとなでている。

それをその場の全員が萌え死にしそうになりながら見守っていた、

エキュがいいなぁとつぶやいているのが聞こえたので、さりげなく頭に手を置きぽんぽんとなでると、顔を赤くしてうつむいてしまった。うんエキュもかわいい!!

ここからは車で自宅までパレードを兼ねた長時間の移動になるので、ここで先にご飯にしようという事で、食堂に向かう。



パレードは軌道エレベーターをぐるっと囲む環状道路を一周してから行政区画、教育機関区画、住居区画と周り自宅へと進むルートである。

要人の本星見学も兼ねたコース取りになっている、企画はテイルだが細かいルートを考えたのはネメシスだ。

やはり思った通りというかエキュやルキュに対しての歓声が多かった。

それを見てエキュは、『ヤマトの人たちは私たちを差別されないのですね』とうれしそうに声援にこたえるため手を振っていた。

多分みんなかわいい物や人が好きなんだよ、と思ったが口に出さずに笑いながら私も手を振っていた。

数時間かけてのパレードが終わると、自宅の玄関前に車が止まる、

そしてみんなに家を紹介しながら中に案内する。

後は式までやる事がないのでみんなにゆっくりしてほしいと告げて各要人たちをセバスとアリスが各部屋に案内する。

ケーノから連れて来た子供たちはシンセイチルドレン達ともう仲良くなって一緒に走り回っていた、子供は元気だな。

一通り案内が終わると自室でのんびりする。






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