第24話 ヤマト連合


「あー、リス王女に会ったりこの惑星見ていい事を思いついたかも」

「リス王女じゃなくてエキュ王女な、それで何を思いついたんだ?」

「うん連合を立ち上げようかと思ってたんだけど、テイルのビショップ星系も独立星系にして、リス王女のケーノ星系と合わせて連合員とすることにしたんだ。それでヤマトへの編入ではなく連合という形にしてリス王女を俺やテイルと同等とする事にしたわ」

「はぁ……。お前は唐突にそんな大事なこと一人で決めるなよ」


呆れるテイルにごめんと目配せをすると後ろからアリスが声をかけてきた。


「シンセイ様、リンクを使ってエキュ様につかせたMG-800経由でお伝えしましょうか?」

「いやこういうのは面と向かって言わないと駄目だから、それはいいよ」

「わかりましたシンセイ様がそういうのでしたら。」


連合の事をテイルに説明すると、アリスから提案を受けたがその提案を断る。

まあ暇なときにでも来てもらってくれ、と王女様を招待する手紙を通信してもらいその話は終わりにする。

しばらくコーヒーを飲みながら休んでいるとレイカが帰ってくる。


「おかえり、なにしてたんだ?」

「ただいま、あぁ、ちょっと買い物をな。」


私の質問にちょっと目を泳がせながら答えるレイカに、これは何かしてきたなと考えたが詳しくは聞かないことにする。

そして色々話をして話題もなくなってきた私たちは各自休むことにする。




翌日、アリスにたたき起こされる、


「アリスが起こすなんて珍しいな」

「お客様がお見えになりました、応接室に通してあります」

「ん?こんな朝早くに客?」


アリスの言葉に何だろうと思いながら着替えて応接室に向かう。


応接室を入るとシャボールがソファーに座っていた。


「朝早くに申し訳ありません、お話があってきたのです」


私が入ると立ち上がりお辞儀をしながら挨拶をしてくる。

シャボールがわざわざ来たのは、ケーノの食品の輸送の件だった。

さすが商人耳が早いな、と思いながら苦笑する。

色々話した結果、餅は餅屋、物を運ぶなら商人という事で、各星系への輸送を一括で委託する、その際の護衛をヤマトの軍が請け負うという契約を結ぶ事になった。

契約を終えると今度はこちらから中古軍艦千隻の注文をする。

その話が終わると、準備があるのでとそそくさと帰っていった。

相変わらずあわただしい人だな。



昼を食べているとエキュ王女から『午後伺います』との返信文を受け取る。

食べ終わり休んでいると、ネメシスから王女様が来たと報告を受けたので応接室に通してくれと伝えて移動する。


応接室に着くとエキュ王女と数人のおつきの人が待っていた。


「わざわざ来てもらって悪いね、気楽にしてもらっていいよ。」

「いえ、ご招待いただきありがとうございます。それしてもこの艦は近くで見るととても大きいですね」


私の言葉にエキュ王女は丁寧に頭を下げ挨拶してから、ネメシスの大きさにびっくりしていた。

席に座るように促すとアリスが全員に飲み物を配る、そこへテイルとレイカが部屋に入ってくる。

エキュ王女は丁寧にテイルとレイカに挨拶して席に着くと、本題に入る。


「今日王女に来てもらったのは、新たに話しておきたい事と、それも踏まえた正式な調印のためです」

「新たに話す事とは?」

「実はですね、ケーノをヤマトへの編入では無くてですね……」

「ふざけるな、編入じゃないという事は支配だったのか、お前らだましたのか」


私の言葉を遮るようにエキュ王女の後ろに立っていた男が怒鳴り声をあげる。

それをエキュ王女が手をあげて制すると、困った顔をしながら私たちを見渡し「詳しくお話を聞いても」というので


「編入じゃないというのはですね……」


それを聞いて頷くと私は説明を始める。

編入という形になると国ではなく領地に近い扱いとなって、そうなると王女は代官的な立場となって色々と制限がかかってしまい実質的にはヤマトがケーノを支配しているのと変わらなくなってしまう。

そうなると周りの星系からの立場や、あちらの方のように国民からも反発が出てしまうかもしれない。

そこでヤマト連合を立ち上げてケーノを独立星系として連合に加入する。それによりケーノは国を存続できてなおかつ王女様はケーノの王女様としてヤマト独立星系代表の私やビショップ独立星系代表のテイルと対等な立場を保てる。

という事を説明する。


なお先日話して取り決めたことは一部は連合加入に向けた修正はされてはいるがほぼそのまま有効である。

それを聞いた後、話を理解したのか先ほど怒鳴った男は「早とちりをしてしまった、最後まで話を聞かなくてすまん」と謝罪してきた。

ケーノの事を思っての事だから、私は気にして無いと謝罪を受け入れる。


それから元同盟から献上され編入したケーノに一番近い星系の一つをヤマトからケーノに譲渡をして、そこに住む住人をすべて別の星系に移住させると約束する。

その惑星は開発を放置していて、人が住む一部以外は野放し状態になっている。

ケーノの国民からすると惑星の植物を移植していけば住みやすい良い惑星となるはずである。


星系譲渡も含めた調印を終えてエキュ王女と私は握手をして正式にケーノはヤマト連合の一員となる。

ちなみに今回の会談と調印は一部始終ネメシスが映像に記録し、即時ケーノ全域に放送されていた。

その事実を聞いたお付きの男は自分のしたことを思い出したのか、失態だと顔を真っ赤にしてうなだれていた。うん私は君みたいな奴は嫌いじゃないよ。

実は彼、この国の宰相である、国の事を真っ先に考えていてヤマト代表相手にも怒鳴れる、という事で頼りになる人だとケーノで大人気となり絶大な支持を得るのだが、それは後の話である。


その後は放送無しの非公式な会談という事でエキュ王女から話があると言われる。


「実はシンセイ様に大事なお話をしないといけません、」


そう話し出すエキュ王女

ケーノの王族の血脈がエキュと妹の2人だけになってしまっている状況を話し始める、

数年前、同盟の手によって両親や王族といった初代移民団の血脈がすべて粛清された、そして同盟加入の条件として同盟代表とエキュの婚約が盛り込まれていた。

王族を絶やさないためにも仕方なく同意してしまったという。

同盟が壊滅した今となっては婚約は白紙になっている、だが女二人の王族では子孫を残せない、そこで人族のシンセイと妹を婚約、結婚して後継者を作る、という話だった。


「いやいや!それはうれしいけど、…じゃなくて、妹さんは了承してるのか?そもそも人間と獣人の子ってどうなるんだ??」


私の質問にエキュは答える。


「獣人と言っても基本は人がベースで生殖機能は同じです。ただ生まれてくる子が獣人か人間かのどちらかになるだけです……」


詳しくはこうだ、


人と獣人で子供を作っても生まれるのはどちらかの遺伝子を持つ子供で、俗にいうハーフという遺伝子を分け合った存在ではなく、純粋な人か獣人の遺伝子を持つどちらかが生まれてくるという事である。

獣人同士、たとえばリスとクマの獣人の子供はリスかクマの獣人の子供が生まれるという事だ。

それならこの国の国民と結婚して子供を、と話すと『王家の種族はリス系の種族とされています。それにシンセイ様とのつながりを血脈に入れる事で忠誠を…』と言い出す。

代々王族はリス系のみとするケーノの決まりがあり、他の獣人族と結婚するとリス系以外の獣人族が王家の血脈に入ってしまって駄目らしい。

ちなみに人族が血脈に入るのは大丈夫なのかと聞いたら、初代のケーノの開拓団代表自体が人とリス系獣人の子供らしく問題ないと言われた。

なんか色々とめんどくさいことに、などと思いながらエキュを見ていると、ふと気づくエキュの横に会談の時には居なかったちっちゃい子がチョコンと座って居る事に。


「ところでその子は?」

「あっ、紹介が遅れました、この子は私の妹でルキュと言います。」

「そっか妹か、かわいいね、…ってちがう!妹さんは妙に幼い感じだけどいくつなんだ?」

「ルキュは銀河時間で今年5歳になります。」

「いやいや!それ犯罪だし、そもそも俺はロリコンじゃ…」


テイルとレイカの冷たい視線を受けて冷や汗をかきながらエキュを見る。

エキュが言うにはケーノでは5歳から婚約ができ、15歳で成人となり結婚できる、と説明される。

ヤマトは私の感覚の問題で20歳で成人で結婚も20歳からだと説明してそれまで無理だと断る。

するとエキュはしばらく考えたのち


「私では駄目でしょうか?今年で20歳になりますし、シンセイ様となら・・・」


などと顔を赤らめて言ってくる。

いやいやそれは、…あれ?問題はない…のかな?ケモミミモフモフな嫁と子供、…だとしてもいきなり結婚なんて、などとぶつぶつ言いながら考えている。

それを見ていたレイカが突然立ち上がり、ため息交じりに拳骨をかましてくる。


「いきなりなんだよ」

「女にそこまで言わせておいて、男がうだうだ言ってんじゃねえよ。

 男なら腹くくって黙ってすべて飲み込むぐらいしろっての、そこで笑ってる兄貴もだ」

「いてっ、なんで俺も?」


と怒鳴りつけてくる、テイルもとばっちりを受けて拳骨を食らう。レイカはこれで意外と中身は乙女みたいだ。

私たち男性陣を放置して強引にレイカが話を進めていき、気づけば私はエキュと結婚、テイルはルキュと婚約という事になってしまった。

テイルは遠くを見つめながら


「なぜ俺まで、俺はロリコンじゃねえ」


とつぶやいている、ごめんよ巻き込んでしまってと視線を向けて心の中で謝る。・・・乙女モードのレイカ怖い!!

エキュの後ろで宰相の男もレイカの剣幕に何も口を出せない状態だったが、口元がどこか嬉しそうだった。


そしてレイカの暴走で私の結婚が決まるのであった。





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