第23話 ケーノ
ネメシスのブリッジに戻ると艦隊へ通信を開き惑星の降下および見学許可が下りたことを通達する。
「という事でケーノ代表のエキュ様のご厚意でケーノの降下が認められた、本星とは違った文化だから下手なことするなよ。この国に迷惑かけた奴は軍法会議だからな。」
そう言うと通信を切る。
「さてケモ耳モフモフパラダイスに行くかな。」
「シンセイ様が一番迷惑かけそうですが……」
私のつぶやきにアリスのため息交じりの一言は聞かなかったことにして、テイルに行こうぜ!と目配せしてケーノの見学に出る。
軍のほうは海上に有る軍施設を開放してくれたので半分づつ二隊に分け上陸見学することになった。
順次降下してくる艦隊を見ながらどこまわろうかな、とレイカとテイルを連れて街に向かう乗り物に乗る。
街に着くととりあえず一番栄えている地域の食堂に入る、すると何組かが食事をしていたが私たちの顔を見ると、ひそひそと話し始める。
「俺ら歓迎されてないのかな?」
そんな話をしながら席に着くと、店主のような男がテーブルに寄ってくる。
おすすめを頼むと先にサービスだとビールを出してくる、聞くとこの国では昔ながらの自然な農業で麦を栽培しており、昔ながらの製法でビールも作っているという。
一口飲んでみるとコクがあってのど越しも良く、日本で飲んでたものと変わりないおいしさだった、欲を言えばもっと冷えてると良いかなってくらい。
「これうまいんだけど」
三人がはしゃぎながらお代わりを頼む・・・
そんな俺らを見ていた客の男が近づいてきて、
「お前らはこの国をどうするんだ、あんな大艦隊で押し寄せてきてお前らも力でこの国を支配する気なんだろ?」
突然聞いてきた。
「支配する気はないよ、この国は今のままにする気だけど。」
エキュに話した内容と同じことを説明する。
すると、俺たちにお前らの飯を作れって事か?獣人の国だと思って差別してるんだろ!!と怒り出す
「うーん、俺からすると、俺もお前たちこの国の民も同じ人間にしか見えないんだよな。
だって喋って考えて自分の意見言えて意思疎通ができるわけじゃん、それって人間って言えるんじゃないか?
獣人だ人間だって差別してるのはお前達自身じゃないのか?」
それを聞いた男はキョトンとしている、なんか私変なこと言った?と思ってると、
「それ本気で言ってんのか?」
と聞いてくるので冗談でそんなこと言わないと言いながら、料理を持って来た店員にビールのおかわりと店内にいる人たちに何か飲み物出してあげてよ、と注文する。
「お前らホントに人間か?」
そう言うと自分の席に帰っていった。
視線を感じ入り口を見ると数人の子供たちが覗いていた。
手招きしておそるおそる近づいてきた子供に持っていた飴を配ると笑顔で受け取りかえっていった。
うん、こどもはかわいい、しかもケモミミモフモフ、と顔がほころぶ。
食事も質素だけどどこか懐かしい味に感じた、なんでだろう?
食堂を出て少し歩いて、そこそこ大きい建物を見つけたので近づくと子供たちがいっぱいいた。
学校かな?と敷地に入ろうとすると、先ほど見た子供たちと違うことに気づく。
よく見ると着ている服が違う、なんかくたびれた感じで所々にパッチワークのように布が当てがってある。
私たちに気づいたのか女性が近づいてきてお辞儀をする、そしてここがどんな施設なのか教えてくれた。
訳有りで親が居ないもしくは経済的に育てられなくて捨てられたり預けられた子供たちの施設、いわゆる孤児院だった。
この惑星全体からそういう子供たちを集めて、国の予算で運営している。
ほぼ赤字な国の財政から無理して予算を回してくれているとも話す。
女性はボランティアの様な物で住み込みで子供の世話をしていて給料はもらってないという。
私はここでお金を出すことはできるがそれでは一時的な解決であってお金が無くなればまた苦しくなってしまう、今のこの子たちをずっと救える事はないのかと考えだす。
それを見ていたレイカが子供たちのそばにいき持っていたクッキーを配る、そしてそれを食べると一緒に走り回って遊んでいた。
しばらく遊んでから私の元に来て、
「今は少しでも元気にわらった顔を見れるようにしてやる、あたいにはそれしか思いつかないからな、その先はシンセイたちが考えてくれ」
そう言うとまた子供たちのほうに行き遊び始めた。
今はそれもありか、と私もテイルを連れて子供たちの元に行く。
遊ぶだけ遊んでそろそろお昼という時間に、アリスとユウに買い出しに行ってもらい昼飯を作ってもらう、それを子供たちや女性と一緒に食べる。
最初女性は断ってきたのだが、レイカが無理やり買い出しと料理をさせてその後有無も言わせなかった。
その食事を笑顔で頬張って食べる子供たちを見ながら私たちもついつい笑顔になって楽しくなっていた。
ご飯が終わると、女性に少しだけ寄付と余った食材を渡して、子供たちに手を振り別れる。
「この国このままだとやばいな」
私の言葉にテイルが頷く、何とかして助けたいな、そんな事を考えながらネメシスに帰る。
翌日は艦隊の残りが交代でケーノ見学に降下してくる、それをネメシスから確認する。
そして私たちは前日の夜に連絡が来てエキュに呼び出されたのでお屋敷に向かう予定だ。
今日はレイカは不参加だと言うとユウを連れてさっさとどこかに行ってしまった。
しょうがない奴だなとテイルとアリスを連れて乗り物に乗る。
屋敷に着くとまた先日の部屋に通される。
ソファーに座るとエキュから、『決めました、ヤマトに編入させてください。』
と立ち上がり頭を下げながら言われる。
それから細かな話をする、支援の話の時孤児院の話を出すと、エキュは顔をこわばらせる。
孤児院の子は元は少なかったのに同盟に加入してから増えたと悲しそうな顔で話してくれた。
同盟に払うため国の財政が圧迫した、そして国民の税率をあげたのが原因だったと、加入を決めた私の責任だから何とかしないといけないと、国費が赤字でも孤児院への予算を無理やり通していたらしい。
それから孤児院の子供は私たちが連れて帰る、と話すとあの子達はこの国で何とかしますというが、
本星のシンセイチルドレンのような取り組みの事、教育を受けさせた後この星で働いてもらうと説明して納得させる。
エキュのサポートと教育役として最初はMG-800を10体置いていくから自由に使ってほしいとも伝える。
離れすぎていてネメシスとの直接リンクは出来ないが、他の星系に置いてきたMG-800を経由させれば多少の時差が生じるがリンクは出来る。
基本ヤマトは各種支援と技術提供をする、ケーノからは労働者とプラントで作る食品の提供。
他には義務教育学校を建設をすること、その資材と建設労働者はこの国で確保・募集し指導者に最初はMG-800を立てる、大学や軍学校は希望者に本星に来てもらう。
プラント建設は技術指導等はヤマトで用意、建設と完成後の労働者はこの国で募集する。
軍基地の拡大をしてしばらくはヤマトの軍で何とかする。
財政に関しては予算案を出し不足分のお金を渡す、国民からの税金は3年間取らない。
徐々に病院なども建てていくなど、細かいことを話して終わる。
最後に思っていたよりも良い待遇だったらしく、エキュは涙を流し喜び『ケーノは立ち直れます、ありがとうございます、今後はヤマトのために頑張ります』と私の右手を握りながら頭を下げてくる。
つい左手で頭と耳をなでる、すると驚いたように顔を真っ赤にして見あげてくる。あれ?だめだった?
後で知ったことだが家族の様な親しい人以外に耳と尻尾は触らせないのだとか、……これはやらかした?。
もうしばらくこの国にいることを伝え屋敷を後にしてネメシスに帰る。
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