第21話 同盟各国訪問
今私は軍基地の自室で、到着したばかりのテイルが来るのをレイカと待っている。
「移動がワープしかないってのはきついな。」
「GGOではゲートやホールが有ったからな。」
テイルは部屋に入るなりボヤク。
GGOでは連合や同盟のメンバー同士でかつ同意があれば管理する星系同士は、ワープゲート又はワープホールといった瞬間移動できる装置が設置出来ていたのだが。
この世界ではそのような物が無いらしい、なのでワープ航法での移動となる。
だから星系移動がちょっと面倒、第一星系と第二星系の行き来するのにワープで数日かかるのである。
それにずっと出来るわけでなく銀河標準時間で1日12時間しか使えない、そして12時間使ったら12時間のエネルギー充填期間(クールタイム)が必要である。
「さて集まったな、これから同盟のおっさんたちから前回の報酬をもらいに出向く。」
私の言葉にレイカはやる気満々な顔で、テイルは苦笑しながらやれやれと言った感じである。
そして説明を終えて私が立つと二人も立ち上がり部屋を出ていく。
基地星から少し離れた宙域に白猫艦隊を先頭に、右後ろに白鷹艦隊、左後ろにペンギン艦隊、その後ろに輸送隊、最後尾に第一艦隊が集結する。
私が艦隊すべてに通信を放つ
「これよりヤマトの主戦力をもって同盟軍の各国から宙賊討伐の報酬を受領しに行く。全艦前進!」
私の言葉に対し事情を知っている隊員達が、くすくすと笑いながらも敬礼をし艦を進めていく。
最初の星系に着くと全周波数を使い通信を送る。
「俺は独立星系ヤマト代表シンセイだ、先日の宙賊討伐の報酬を貰いに来た。」
一方的に通信を終えると向こうから通信が来るので繋ぐ
「大艦隊で来るなんて非常識な奴め、そんな奴には何一つ渡さん。」
「本来なら来なくてもいいこちらが親切心で忙しいだろうあなた達の代わりに大人しく報酬を受け取りに来たのに冷たいですね。」
返事をすると同時に惑星を守るように展開していた相手艦隊から艦砲射撃が来る、だがこちらは前面にバリア特化の艦隊を置いており、ビームや砲弾すべてがバリアに消える。
「あらあら、攻撃されちゃいました、これは敵対行動とみなしてこちらも攻撃しないといけませんね」
にやりと私が笑いながら棒読みで言うと同時に、レイカの率いる白鷹艦隊が前に出ていく。
反撃に出たのが白鷹艦隊のみだが、さすがに艦性能と練度が違いすぎて、10分もせずに300隻の敵艦隊は跡形もなく消えていた。
そのままレイカの白鷹艦隊は軍基地を制圧しに行った。
「シンセイ、この星系の代表とっつかまえたけどどうする?」
1時間もするとレイカから通信が入る、
後ろで命乞いをしている声が聞こえ、
悪かった、殺さないでくれ、報酬としてこの星系をヤマトに譲渡しようじゃないか。
などと言っている。
だがこの星系は開発に金を使う訳でもなく、国民をこき使って限界以上に搾り取っているような惑星である。
「そうだな、こんな星は貰ってもうまみがないんだけど、くれるっていうなら貰おうじゃないか。なあシンセイ代表さん」
こんどは棒読み大根役者レイカが通信で伝えてきた。これを聞いた各艦のブリッジは笑いをこらえるのに必死で顔を真っ赤にした隊員が大量発生した。
そうして星系の譲渡書類にサインをし、たった2時間で一つ目の星系をヤマトの領地とした。
「ここも開発に力入れたらいい星になりそうなんだけどな。」
そうつぶやきながら、連れてきたMG-800を10体、星系管理のため派遣を指示する。
まずは住民の健康と衣食住の充実を指示、そのための食料や機材等を本星から送らせるよう指示をして次の星系に向かう。
次の星系からは最初の星系の情報を得ていたのか、無条件で星系譲渡や傘下に入ることに応じる星系が多かった。
中には二百隻程度で抵抗する国もあったが、跡形もなく消し去ってあげたら、とっても好意的になって気前よく星系を譲渡してくれた。
各星系にはMG-800を10体を置いて8つ目の星系も同じように指示を出し最後の星系に向かう途中、
「やってることは侵略だな。」
「何を言う?これは報酬を貰いに各国を訪問しているだけだ。
訪問した全ての星系で話し合った結果に報酬として星系くれるって言うんだから問題ないだろ。」
テイルの言葉に私が笑いながら言い返す。
そこへ艦内に警報が鳴り響く、
「所属不明の艦隊がワープアウトしてきます、数推定1200距離1万㎞」
「団体さんのお出ましかな?全艦戦闘準備」
報告を聞いて戦闘指示を出す前に、各艦隊は素早い動きで基本陣形を整えるために動いていた。
「さすが、ヤマトの軍はよく訓練されてるな。」
ものの30分で所属不明の艦隊が出て来た方に向け綺麗な陣形が整う。
ワープアウトしてきたのは、この前潰した宙賊の下で働いていた奴らと同盟軍の残党だった。
「揃いも揃ってよくこれだけ集まったな。」
ちょっと感心するようにつぶやく。
しばらく睨み合いをしていたが、我慢しきれなかった宙賊の砲撃を合図に双方の撃ち合いが始まる。
状況は800隻対1200隻だが、性能と練度の差で終始こちらが押している状態だった。
宙賊の集団が半数ほどになったのをみて、最前線中央に位置取りしていた白鷹隊が突撃を始めるとペンギン隊がそれを砲撃で支援、第一艦隊が両翼から敵集団を囲むように前進していく、それを白猫隊が同じく砲撃で支援を始める。
艦隊同士が近づくと艦載機隊が順次出ていく、そうなるともう数でごり押しになっていく。
相手艦隊が沈黙したのを確認したら各隊の被害状況を確認する。
自軍の被害は撃沈された艦は無いが航行不能二十二隻、一部は応急修理をすれば航行は出来る状態らしい、後は航行に支障がない程度の損傷だった。
人的被害も死者は無しだが重軽傷者多数。
航行不能艦の曳航や護衛、それに重傷者の輸送などに合計100隻をここから近い星系に退避するよう指示を出す。
「死者なしか、思ったより被害が少なかったな。」
私は呟く、それを聞きながらアリスはコーヒーを持って来た、それからブリッジクルーにも配っていた。
「各艦のジェネレーター強化によるバリアの性能が良かったのと訓練の成果のたわものかと。
それに相手は宙賊の寄せ集めで、そこまで練度があるとは思いませんでしたし、連携もバラバラでしたからね」
コーヒーを片手にそう言ってくるのは軍学校一期生でバッチ持ちの男だった。
「そうか、これがそこそこな国の正規軍だったらこうはいってないだろうな。」
そう返しもっと強い軍にしないとなと思いながら、近くの星系に後退する艦隊を見送ると最後の星系に向けて出発するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます