第19話 テイル


第一次移住団と入れ替わった白鷹隊がテイルを連れて帰ってきた。

直接軍基地に降下させ私の部屋に呼ぶ。


「シンセイ様、テイル様を連れてまいりました。」


一緒に帰ってきたレイカの隊の隊員がドアを開けると敬礼しながら伝えてくる。

その後ろには若い青年が片手をあげながら立っていた。


「どちらさんで?」

「おいおい、シンセイ冗談は勘弁してくれよ。」

「テイルようこそヤマト本星に。」


冗談交じりのあいさつを交わし笑って握手する二人。

お互いナノマシンの影響で十代半ばの様な見た目をしていた。


「移住者と資材ありがとな、住人より多い人数来ると聞いた時はびびったぜ。」

「これでも厳選して人数減らしたんだぞ。」

「この本星見ちまうと納得だわ、すごい発展してんだもんな。ビショップとは比べもんにならんわ。」

「結構年数経ってるからな。」


他にも懐かしい話をしているとテイルから切り出してきた


「そういえば聞いたぜ、周辺国とやり合うんだって?」

「お前までやる気なのかよ、今は様子見だよ。」

「とりあえず脅して泳がせて様子見か、相変わらず変わってないな。」


私はゲーム時代から、国や連合同士の最初の交渉は強気で半ば脅すような態度をとり、相手に時間を与えて対応により敵対するか仲間にするかを判断する。

人間なんて脅威や切羽詰まったときに本性表すもんだ、というのが私の考えである。


「あれであのおっさんがどう出るかによるけどな。」

「おっさんか、シンセイも俺も中身はおっさんだろ。」

「この世界じゃ俺らの年代じゃはまだまだ子供(ガキ)だよ。」

「数千年も生きれる世界とか信じれなかったが、ナノマシンで若返ったら実感してきたよ。」

「そうだろ?レイカなんて今じゃ見た目幼女だもんな・・・」

「あはは、最初見た時幼女が軍艦で偉そうにしてて、笑い転げてぶっ飛ばされたもんな。」

「もし来てたらだけど最年少のあいつはどうなるんだろうな、なんて想像しちまうわ。」

「あー園児になっちまうんじゃね?」


二人で笑い合っているとドアが開きレイカが入ってきた。


「テイルの兄貴来てんだろ、遅れてわりぃ。」

「レイカか、相変わらず小学生だな。」

「いくら兄貴でも今度はぶん殴るだけじゃ済まねえぞ。」

「それは勘弁だ。」


レイカを揶揄うテイルを見てこの二人も相変わらずだな、と懐かしくなって笑顔がこぼれる。

それを見て「シンセイもぶっ飛ばされたいのか?」とレイカに怒鳴られる。


「テイルは今後、本星からビショップに指示出すのか、ビショップに帰って直接指示出すのか、どっちだ?」

「そうだな、あっちで指示出すわ、育つのを見ながらのほうが楽しそうだしな」

「そうか、次だがテイルの艦隊用意するのだが、旗艦の希望などがあれば聞くぞ。」

「仕様などは後で出すとして、まだ基地も出来てないからそんなに大規模でなくてもいいぞ。」


レイカも交えてテイルの今後の事や艦隊の構成などを考える。

話し合いの結果、最初は百隻の艦隊で、今後発展によって増やすでまとまった。

旗艦に関しては後日アルトメイトに発注するので艦隊が準備できたら送ると約束する。

話が終わるとアリスに頼んで旗艦以外をリリーとシャボールに注文する。


その後数か月かけて、軍基地星や本星に資源星も見学して、ビショップの開発の参考にすると第二次移住団と帰っていった。

第二次移住団は前回と同じで総勢約1万人の規模になった、今回は家族中心で送ったので作業人数は少ない。



テイルがビショップに帰ってから五ヵ月経って、テイル艦隊がそろった。

旗艦は戦艦クラスで武装は主砲が射程重視の超長距離狙撃型レールガンにバリアを強化した後方支援タイプになった。

テイルの性格が出ている仕様である。

そして艦隊のマークはゲーム時代にもつけていた黒いペンギンだった。

後にこのマークはビショップを中心にヤマト各惑星で女性や子供に人気が出て、キーホルダーやぬいぐるみなど製品化されていて、売れきれ続出で一部では入手困難になったのだがそれは別のお話。


艦隊と一緒に隊員の家族や第三次移住団もついていく、今回は5万人の大規模移住団である。

この移住団を機に一気に資源星に手を付けるとテイルは笑いながら言っていた。

ビショップの資源星が開発されると、ヤマトの財源も1.3倍ほどになる計算なので私も笑顔になる。

出発式を終え宇宙港のロビーで移住団を見送ると、久しぶりに自宅に帰ることにした、保護した子供たちが気になったからだ。


自宅の玄関を入ると子供たちが私の周りに集まってきたので、順番に頭を撫でてやるとキャッキャとはしゃぎ始めた。


「おかえりなさいませ、シンセイ様」

「ただいま、それにしてもこいつらは元気だな。」

「そうですね。」


子供を見ながらセバスとあいさつを交わす。

各自教育をしているので読み書きと簡単な計算までは出来るようになっていた。

そろそろ義務教育学校への編入も可能だと言うので、許可を出す。

最近は上の子が下の子の面倒を見るようになって、セバスも助かっていると子供たちをほめていた。

会話を聞いていた最年長の男の子が、胸を張ってドヤ顔しているのを見てつい吹き出しそうになってしまった。

子供たちが私に近づいてきて


「代表様、ぼくは大きくなったら代表直属部隊で司令官になる。」


と一番上の子が軍で採用している敬礼をしながら言うと他の子は皆で手をあげながら「私も」「ぼくだって」と囲んでくる。

これはこれでかわいい奴らだな。と思いながら笑顔で「それなら頑張って勉強しなきゃな」と返す。

どの世界も子供と小動物はかわいい。


そしてしばらく子供たちと遊んで癒されて、アリスに用意させた白猫バッチのレプリカを全員の胸につけてあげて、


「これで全員未来の司令官だな。」


と言うと子供たちは大喜びで敬礼の真似をしてくる。

それを見てまた癒されてから自宅を後にする。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る