第18話 戦後処理
今回の宙賊殲滅で得られたのは資源や資金といった物の他、捕虜にした賊の幹部数名。
捕虜にレイカが『優しく質問』したところ、すぐにすべて話し始めてくれた。
この賊はこの辺境一帯の宙賊たちを牛耳るボスだったと分かる。
他にも隠れ家が有るとも分かり、レイカ親衛隊と第一艦隊の一部が向かったところ。資源星を二つ、改造された小惑星を一つを見つけた。
資源星は襲った国の住人が強制労働させられていた、
軍基地の空き宿舎にとりあえずで住まわせると、今後の事を話すためにその者たちの各代表者を集めて、開放して国に戻すと伝えると、
「国は滅ぼされている」
「戻る国などない」
「このままどこかに移住したい」
等、口々に語るのでどうしたものかとその人たちとアリスを交互に見る。
「シンセイ様のお言葉をお借りするなら、『宙賊から奪ったものだからヤマトのもの』という事で自国民にするのはどうでしょう?」
「うん?そうか!あのおっさんは『宙賊から奪ったもの』はすべて譲ると言ってたもんな、ナイスアリス。」
物ではなく者だけど間違ってない、などと考えていた。
「そういうわけで希望者はヤマト本星系もしくは第二星系のビショップの居住を許可しよう。」
私の一言に歓声が上がる。
「まずは全員ここの医療施設で検診と治療をしてもらう、
それと並行してヤマトの住人登録手続きと、ヤマトの事を学習してもらう、
その際にどこに住みたいか等の希望を聞く。
なので今日はゆっくり休んでくれ。」
私が話し終わると次々と嬉しそうな顔で握手を求めてきた。
案内をロボに任せ見送るとネメシスの自室に戻る、珍しく事務処理をしているとネメシスから声がかかる
「シンセイ様、助けた者たちの中に数名、出身や身元が不明な子どもたちが居ますが、どういたしますか?」
「身内や知り合いが居るならその者たちと一緒に行かせたらいいだろ。」
「それが、資源星ではなく、小惑星要塞に捕らえられていた子たちのようで、身内も知り合いも居ないとのことです。」
「なんだそりゃ、賊の子供ってわけでもないのか?」
「それでしたら手枷などで拘束して牢に閉じ込めておく必要が無いかと。」
「とりあえずその子供たちのリストはあるか?」
ネメシスからリストを受け取ると、3才から15才まで20人程のデータが書いてある。
数人は名前が書いてあるがほとんどが名前すらない、年齢も検診などの診断結果の推定で実際は違うかもしれないらしい。
「名前すらないってどういうことだ?」
「軍医たちの予想ではこの子供たちは人工的に作られたクローンではないか、との報告も来ています。」
「なんかいろいろキナ臭いな。その件は調べられるだけ調べとけ。」
「クローン作成自体は規制する国も星系もありませんから原則違法ではありません、ですが国によっては権利を認める法などありますが、特に気にするようなことではないかと。」
「だが国によっては人身売買などの奴隷法に引っかかる可能性があるぞ。」
「ではそちらの線で調べます。」
「ああ、まかせた。」
話を終えると椅子の背もたれにもたれかかり背伸びをする、それを見たアリスがコーヒーを持ってくる。
とりあえず子供たちは本星に建てた私の自宅で生活させることで決定する、
まあ建ててから数回しか使ってない家だけどな、セバスが管理してていつ帰って来るのかってうるさいんだよな。
子供たちはセバスに任せよう、それがいい。
助けた人たちの中でケガや病気の治療が必要な者とその家族以外が、各地に送られて落ち着いてきたころ。
助けを求めてきた同盟代表のおっさんが来た。
「先日は我々の嘆願を聞き入れてくれてありがとう。」
今回来たのは報酬の件と協定を結べないかという事だった。
報酬に関しては特に当てをしていなかったのもあり、提示してくるものをそのまま許可する、集め次第送って来るとのことだ。
協定に関しては、同盟側の都合のいい事ばかり並べられていてさすがの私もキレた。
「なんだこの要求内容は、ヤマトに何もメリットないじゃないか、いい加減にしろよ、お前らまじで潰すぞ。」
「これはあくまで、こちらの提示案でして要求という訳では…」
内容は簡単に言うとこうだ。
ヤマトの軍で同盟宙域の宙賊を退治して宙路の安全を確保する。
各国での復興等に必要な資材などをヤマトに提供してほしい。
協定を結んだ国で争いがおきたらヤマトは援軍派遣をする、なお逆の時は戦力的に無理。
ときた、どう見てもヤマトが損をするしかない内容でこちらに何も徳はない。
「お前ら同盟全員がヤマトの傀儡国になって、俺の下で働くっていうなら多少の援助はしてやる。」
そう言うと目を見開き、顔を赤らめていく。
「私たち同盟はそのようなことは求めておらず…」
「あぁ?この内容じゃどう見てもヤマトから甘い蜜だけ吸い取ろうってしか見えねえんだよ。
今後こんな事ほざくなら、まじで潰すから覚悟しとけ。」
同盟代表の言葉を遮り怒鳴りつけ、アリスに「客が帰るぞ送ってやれ」と追い出す。
「シンセイ様、大丈夫ですか?」
「ん?ああ、ちょっと腹立っただけだ、問題ない。」
おっさんが帰った後ネメシスに答えると、私は机のいすで背伸びをする。
そんな時レイカが通信してきたので繋ぐ、
「シンセイ、聞いたぜ、やつら潰すのか?やるのか?やっていいのか?いつでも出れるぜ」
「お前は何を聞いたらそうなるんだ、出撃もしないし、潰しもしないよ、今はまだな。」
「なんだよ、シンセイがキレたって言うからよぉ、あたいはてっきりすぐ潰すのかとワクワクして出撃準備したってのによ。」
「はぁ、まだ様子見だよ、これであいつらの態度が変わらなきゃ潰すし、頭下げてくるならヤマトの犬として飼ってやるよ。」
「そうか、なら潰すときは言えよ、あたいが綺麗に潰して来てやるからよ。」
そう言うと通信が切れる、レイカの戦闘バカで脳筋には疲れるわ、ひゃっはーな幼女とか誰得だよ!とつぶやきながらアリスが持って来てくれたコーヒーを一口飲む。
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