第17話 宙賊狩り
私は今、宇宙港のホールにいる。
今日はビショップに向けた移住第一弾の出発式だ。
本星で募集をかけ応募者の中から選抜した、移住希望者とその家族合わせて約1万人。
テイルと相談して独身や夫婦のみを中心に選別し、全体の人数を抑えるようにした。
そして出発式を終えて、輸送艦を改造した移住船二隻に乗り込む人たちを見送っている。
ビショップのヤマト編入も終わり、ビショップ側の受け入れ準備も終わったことで移住開始となった。
移動時間は約一週間の予定、
護衛に第一艦隊の駆逐艦10巡洋艦1、それに資材を積んだ大型輸送艦5の編成である。
護衛の艦隊はそのままビショップに駐留、レイカが置いてきた艦隊と交代する、そして空になった輸送艦や移民船とともに返ってくる計画だ。
そして何より重要なのが交代した艦隊が帰って来る際にテイルを連れてくる。
「うちの国民はこういった国をあげた事業に参加するの好きだよな、募集したらすごい数の応募があったぞ……。
しかも今回の護衛にとして行きたいという奴が艦単位で陳情してきたからな。」
「シンセイ様、毎回募集の要項を見てますか?いつも破格の給金に待遇ですから、それは当たり前ですよ。」
「え?そうだったの?それでみんな飛びついたのか。」
私の言葉に呆れたような顔でアリスが答える。
実はネメシスは初期開発時から他の星系より良い待遇を提示してきており、
公務員や軍といった人は他の星系の平均の1.5倍近い給料で好待遇だという。
レア鉱石やレア食材の売却、ほかにもレイカが狩った宙賊からの貢ぎ物(奪ってきた物ともいう)で予算が潤沢なため出来る待遇である。
シンセイはその都度報告は受けていたが、その辺は分からないので軽く目を通し許可を出し、ネメシスに丸投げしていたのだ。
「うちの待遇は破格なのか」
それを聞いてつぶやくと隣でアリスは頷く。
そしてこのまま内政はネメシスに丸投げしちゃおう、と考える私であった。
丸投げって便利。
そんな会話をしながら出発を見届けるとネメシスに帰る。
自室に戻るとベットにごろんとすると、レイカが艦隊を連れてまた訓練という名の宙賊狩りに出て行ったと報告がある。
「今日くらい休めばいいのに」
私はつぶやきながらベットで大の字になり目を閉じる。
数日後、ネメシスの自室で暇を持て余しベットでゴロゴロしていると、ネメシスからヤマトの支配宙域に艦隊がワープアウトしてくると報告を受ける。
慌てて飛び起きてブリッジに向かいながら、パトロールしている艦隊に警戒の指示を出し、ネメシスの出港も指示する。
パトロールしていた艦隊と合流すると、数キロ先に見たことない艦隊がワープアウトしてくる。
「ネメシスまずは警告、反応なければ攻撃。」
「相手艦隊から通信、繋ぎます」
「私はサーズ辺境同盟代表である、まずは突然の宙域への侵入を謝罪する。
貴国ヤマトに同盟加入を勧めるために来た、話を聞いてほしい。」
「俺はヤマト代表シンセイだ、話を聞こうじゃないか。」
「シンセイ殿、感謝する。
通信で済まないがよろしいか?」
「いいぞ、早く用件を言え。」
突然現れた艦隊はサーズ辺境同盟と名乗り小さな国が集まって同盟を組んでるうちの一国らしい。
そして同盟にある国のいくつかが何者かの襲撃で全滅寸前にまで追いやられたとのこと……。
などと色々話をされたのだが、ようは同盟だけでは立ち向かえないため、最近戦力を増強したうちを同盟に組み込んで対処しようという根端らしい。
「それで?相手は分かっているのか?」
「相手は大規模な宙賊だ、まだ拠点は見つけられてないが大体の予想はついている。」
「ほう?それで私たちにメリットはあるのか?」
「大した報酬は払えないが、海賊から奪ったものはすべて貴国に渡す。」
「少し待て。」
話をしているとレイカから通信が来る。
「シンセイか、話はネメシス経由でリンから聞いたぜ、今蹂躙してるのその族の拠点じゃねえかな、まあもうすぐ終わるけどな。」
四百隻程度で拠点蹂躙できる宙賊にやられてるとか、こいつら何なんだ。
と思いながら、
「その宙賊拠点だと思うが、今うちの艦隊四百隻が蹂躙してるわ。」
「なっ!そんなことは…」
「嘘だと思うなら映像送ろうか?リアルタイムで送れるぜ。」
そう言うとリンから送られてくる戦闘映像をそのまま指令に送る。
「そんな、ばかな、あの宙賊をたったの四百隻で…」
「この宙賊だろ?ちがうのか?」
「このマークは確かに。」
「じゃあ報酬よろしくな。」
そう言うと通信を切る。
アリスからいいんですかあんな態度とって、と言われるが、
いいのいいの、あんな雑魚にやられる軍なんて怖くないし、と返すと呆れたような顔で見てくる。
そしてまたレイカに繋ぐ
「もう終わりそうか?」
「中で粘ってるやつらが居るらしくて、もうちょい掛かりそう…ちょいまて、今終わったぞ。」
「了解、輸送艦送ろうか?」
「うーん、有ると助かるかもな。」
「わかった十隻くらい送るわ。」
「おう、助かるわ。」
会話が終わるとネメシスが『護衛も含めて手配しました、すぐ向かうと思います』と報告を受ける。
仕事早くていいね。
するとまだ居座っていた同盟司令から通信が来る。
「報酬の用意できたかな?」
「こちらでも確認したが、確かにあの宙賊だった、報酬は用意させていただくが、しばらくかかるので待ってほしい。」
「ああ、出来るだけ早くしてくれよ。」
「わかった、今回は助かった、ありがとうと言っておこう。」
そこで通信が切れ、前方の艦隊が回頭して離脱していく。
「それにしてもレイカはどこまで行ってるんだよ、どう見ても他国の宙域じゃねえか。
下手すれば侵略行為ととられかねないぞ、まあ今回は手柄と合わせて相殺だな。」
「シンセイ様はレイカ様には甘いのですね。」
「まあレイカは仲間内でも手のかかるやんちゃな妹みたいな立場だったからな。」
そう私が笑いながら言うと、アリスは納得したように微笑む。
それにしても、周辺国はこんなので大丈夫なのか?と考えながら全艦に警戒解除命令を出す。
レイカが帰ってきてから知ることになるが、
海賊艦隊は千隻程度で拠点は小惑星を改造して要塞のようになっていたらしい。
千隻と言っても統率も取れて無い有象無象の集団だったわ、味方に多少の負傷者が出たが、死者は出さなかったと言っていた。
そして使えそうな船も曳航してきたが、何世代も前の古い旧式艦ばかりだったのですべてスクラップ扱いでシャボールに売り払った。
小惑星は使えそうなので、回収してきて本星とビショップの航路中間で中継要塞として改修するように指示を出す。
まあ宙賊から奪ったものだし好きにしていいて言われてたし良いよな。
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