第15話 軍事拡大


「そろそろ軍事拡大するかな」


私のつぶやきから始まった軍事拡大計画。

初期の計画は千隻の艦隊保有、それに伴う人員の教育・訓練。

今のヤマトの財政で余裕を持ってできるのはこの程度である。

それでも周辺の独立星系としてはそこそこ多い、周辺の独立星系では平均で七百程度らしい。

そして白猫隊や白鷹隊の隊員数もそこそこ集まってきた。


白猫隊・白鷹隊は、

まずは軍学校好成績のクラスで卒業した候補生がどちらか希望、もしくは軍で好評価、功績によりシンセイとレイカの推薦で入れるエリート部隊である。

隊員の襟に輝く白猫と白鷹のバッチはヤマト軍では特別な証。

一部の人たちからは白鷹のほうが人気なのだが……


白鷹隊、別名『レイカ親衛隊』と呼ばれるレイカを指令官とした遊撃艦隊(軽空母機動艦隊)のトップ集団である。

レイカの好みが色濃く出ていて艦のクルーより艦載機パイロットのほうが多い。

その為か艦載機隊隊長クラス以外でもバッチを付けている事がある。


白猫隊、別名『代表直属部隊、(代表の自称)』で私シンセイが司令官とした第一艦隊のトップ集団である。

白鷹隊とは違いクルーを中心にパイロットは少な目である、なのでパイロットでは大隊長や中隊長といった要職がつけている事が多い。


他にもバッチを付けていないがエースと呼ばれる隊長格のパイロットたちもいる、その者たちにはパーソナルカラーを認め自機の一部にペイントを許可している。


軍学校のシステムは実力主義でありながら性格や態度も評価対象になっている。

そして評価は月ごとに更新されクラス替えも行われる。

例えば実力があっても傲慢な態度を取っていたら、評価も下がり上には上がれないシステムである。

最高学年になると主席クラス選定は厳しくなるが、そのころには入れ替わりが起こる事はほぼ無いと言われている。

とはいっても最高学年になって主席クラスだからと安心して、羽目を外して降格なんてのもある。

なお主席クラスは定員が設けられていて、各学年どれだけいようが8人としているので狭き門である。

最近は白鷹隊もしくは遊撃艦隊に入りたいからと、パイロット技術を磨く生徒が増えている。

こんなところにもレイカ人気はとどまるところを知らない……うーん、私の人気は?


そして最近アルトメイト社が開発中と発表したパワード骨格(仮称)がよく話題にあがる。

発表・公開された試作機のイメージ図は艦載機の飛行機の様なシルエットとは違い人型のロボットの様な機体である。

これには私もレイカも目を輝かせ『欲しい!』と叫んだほどである。

ただ現在開発中でまだまだ市場に出てくるのは先である。


「発売されたら速攻買うぞ」


と子供のように目をキラキラさせて私たちが言うのに対して、アリスとユウは冷めた目で見ていたのだが。


それは置いといて今回の増強の内訳だが、

アルトメイト社に注文する、巡洋艦以上の新造艦二百隻。

シャボールに注文する、中古で一世代前の駆逐艦と補給艦七百隻に艦載機多数。

である、本音はすべて新造の最新艦で揃えたい・・・

だがそうなると時間と予算がかかりすぎて訓練や惑星開発などに支障が出てしまうので、駆逐艦以下は中古で安くすぐ数をそろえようという計画である


今のヤマト本星の軍事基地は、数万の艦隊が運用できる規模まで建設されている。

後は艦と人材が集まれば良いのだ。

だが問題は人材である、いきなり増やすと言っても訓練などで時間を取られてしまい、未熟な艦隊が増えるだけである。

それも含めて今回の増強は千隻とした。



「千隻の艦隊、壮観だな。」


注文した艦船がそろい人材もそろって、ヤマト第二惑星から少し離れた宙域に勢ぞろいしたヤマト軍艦隊を見て、私はつぶやく。

約千隻の艦船、ネメシス前方の上下左右に広がる光景は圧巻である。


今回の増強に伴い編成も変えた、

正面中央がネメシスを旗艦とした二百隻の白猫艦隊、

向かって右に第一艦隊四百隻

そして左にリンを移植した巡洋空母を旗艦とした白鷹隊含む空母機動艦隊四百隻。


直属艦隊には白猫、空母機動艦隊には白鷹、第一艦隊には柴犬、が描かれている。

レイカには大将の階級といざという時に全艦隊の指揮ができる権限を与えている。

それとは別にレイカには白鷹艦隊二百隻だけなら緊急時以外は自由に出来る権限も与えた、これはレイカの希望で、飲めないなら暴れるとまで言われてしまったら与えるしかない。


ヤマトが千隻の艦隊を保有という情報は、瞬く間に辺境の独立星系に知れ渡った。


「これで仲間に少しでも知れ渡り、合流できたらいいな。」


そんな希望を口にして今回の集結訓練は終わりを迎える。

第一艦隊を四つに分け交代で周辺宙域のパトロールと訓練をする事にした。

通常時の白猫艦隊は第一艦隊と空母機動艦隊に混ぜて指揮をしパトロールや訓練をする。

レイカの白鷹艦隊は訓練と称した宙賊狩りすると言って周辺宙域を飛び回っている。……自由人だな。



結構な規模の戦力を有したことで、いくつかの周辺独立星系から使者が来るようになった。

傘下に入り甘い汁を吸おうとする奴、恐怖から敵対はしないですと表明してくる奴、中には強気に対等もしくは自国有利な同盟を結ぼうとしてくる奴、色々である。


「強者を前にして国ごとにいろんな性格出てくるな。

 ヤマト周辺の主だった独立星系は使者を送ってきたことになるのか。」

「そうですね、辺境宙域、と言っても数百年前に開発が始まった独立星系や小国家は使者を送ってきているようですね。

 ただ周辺の独立星系はうちと似たような物でまだ開発等に忙しい所も多いです、ですが通信で打診してきた独立星系はいくつかありますね。」


面会が一段落ついて私が言うと、アリスが答える。


「ほう、来ることができないからせめて手紙でって感じか。」


独立星系からの通信文をいくつか目を通していると、一つの通信文を見て固まる。


『ヤマト代表シンセイへ

 ずいぶんと楽しそうにやってるようだな。

 GGO古参はやる事が違うな。


  テイル 』


「!?」


この通信の送り主のテイルが本物だとすれば、彼はゲーム時代の連合の幹部というか副代表の一人である。

GGOで初めて私がフレンド登録したやつで連合立ち上げメンバーにして15年ほど一緒に暴れていた仲間である。


「ネメシス、この通信を送ってきた相手の座標は分かるか?

 即返信を書く、送ってくれ。」

「確認しました、ここから約3万光年先の星系のようです。」

「思ったより近いな、レイカに『とにかくすぐ戻れ、緊急だ』と伝えろ。」


テイルの座標を確信した私は、返信文を送った後、宙賊狩りで惑星を離れているレイカに帰還の指示を送らせる。



「シンセイ、緊急ってなんだよ、どっか襲って来たか?それとも攻めるのか?」


ドアをけ破る勢いで入ってきたレイカが来ると、私はテイルからの通信文を見せた。

するとレイカは一緒に来たユウに「座標は分かるな、すぐ出るぞ」と私の事は無視して行ってしまった。


「おいおい、こっちはまだ指示出してないし、何も話してないぞ。」


レイカが出て行った開けっ放しのドアを見てつぶやく。

仕方がないのでネメシス経由でリンに事情を説明して、無理やり連れてくるような手荒なことをしないようにしてくれ、と伝えておいた。

それから残っていた通信文にも目を通す


いきなりヒットするとか持ってるな……






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る