第5話 独立星系


 【シャボール視点】



(たまたま僻地を行商中に通信を受信したが、お得意様になればうちの商会も飛躍できるのでは……)


シンセイと取引をして星系を離脱している船団の一室でそんなことを考えていた。


アルトメイト社の最新鋭超大型プラント艦に最新の汎用ロボまで持っている、しかもあの船のAIは見たことが無い、オリジナルAIでも積んでいるのか、

それに降下中に見えたテラフォーミング機械、あれなんかアルトメイト社が先月発売したばかりの最新型。


彼の後ろにアルトメイト社が居るのか?それとも他の国の富豪の子息か親族か?

なんにしてもこの縁は切ってはいけない。

違うとしてもしばらくは大人しくするのがいいか、それとも……。


そんなことを考えしばらく静観することにして端末を操作すると数名を呼び出しモニター越しに指示を出す。


「シンセイさんとアルトメイト社のつながりを調べろ。

 あと彼の素性もだ。」


モニターの人物たちは頷くと通信を切った。


今回は儲け度外視、シャボール側が少し赤字を出す程度の取引だった。

ただ今後の取引を継続もしくは運よく専属契約など出来たら、今回の赤字など誤差の範囲にすらならない。


シャボール商会は中央よりも僻地や辺境といった星系を回り、今じゃ中堅クラスまでのし上がってきた商会である。

ここ300年は中央にも手を伸ばし始めたが、伸び悩んでいる商会である。

ここでこけたら再起するのに数百年単位の時間がかかってしまう、なので多少消極的な考えが出ていたが商人の感を頼りに強気で行くことに決めた。



アルトメイト社を気にしていたがそれもそのはず。

艦船に機材に各種ロボットの開発製造をしていて技術はトップ、シェアにしても各部門トップ独占という王者と言わせるレベルの巨大企業である。

シャボール商会の扱う商品の半分はこの企業の商品だ


次回訪れるときはあの惑星も人が活動できるレベルになっているだろう。

そうなると開発のため資材や機材それを扱う人材といった物が必ず必要になる。

それを考えて作業移民の募集と申請の手続きを代行する気で書類やデータを大急ぎで作らせている。


「我がシャボール商会が一流となる日まで……」





 【シンセイ視点】


商船団が去ってから半月経った。

シンセイはブリッジから夕焼けを眺めていた。


「きれいだな」


「こちらの星系は現時点では領有権がシンセイ様のものとなります。そしてこの銀河には大小さまざまな国や独立星系がございます、周辺の国や星系への編入もしくは単独で独立星系とする旨の通達をなさった方がよろしいかと……」


アリスの言葉に私は既存の国に所属するより独立星系として、ゆくゆくは国にしていきたいと伝える。


「ネメシスが人類居住可能と判断された時点で、データ等をまとめて各種書類を作成しております」


アリスの言葉に(何この秘書、超優秀じゃん)などと考えていた。

そんな顔を見てアリスは生暖かい目でシンセイを見ていた。


「そういった物は俺にはよくわからないから助かるよ、ただ報告だけはしてくれ、俺が知らなかったでは済ませないこともあるからな」

「申し訳ありません、今後は報・連・相・を徹底し、ほかの者にも共有致します」

「よろしくな」


さて地表で生活できるようになったわけだが、まずは何から手を付けるか。

ゲームだと拠点を立てて倉庫立ててプラントを立てて、としていくわけだが……


「まずはネメシスや輸送艦が停泊できてこれから来るであろう商会や移住者のための宇宙港や資材等を貯蔵できる倉庫がよろしいのではないでしょうか?」


つい考えていることが口に出ていたらしく、アリスから提案される。


「そうだなネメシスもこのまま地表に置きっぱなしも悪いからな、よし軌道上に宇宙港と軌道エレベーターを作るぞ」

「了解しました。ですが、現在の資材から見ますと軌道宇宙港は難しそうですが軌道エレベーターの基礎とそれに伴う各種施設から建設から始めます、

 次回シャボール様が来られたら、資材次第では宇宙港も着手できるかと思われます。

 何よりまずは適切な場所の選定からですね。」


私の言葉にネメシスが反応して惑星データと地表地図が現れた。

それを見ながらネメシスと開発を始める際にどこにあると便利かなど話し合った。




数日後


待機状態でスリープしていた予備ロボットたち、それをすべて起動させブリーフィングルームに集めた。

実際はネメシスのネットワークを使えば集まる必要すらないのだが、一度やってみたかったんだよね、こういう集団の前に立つってやつ。

私の前に今そのロボットたちが居るわけだが


「さすがに300体がそろうと圧巻だな。」


「倉庫代わりの輸送艦の移動もありますのでそのためにすべてを起動させました」

「あとネメシスのAIのコピーを輸送艦にインストール完了していますので私たちで遠隔運用が可能となっています。」


ネメシスとアリス達はホント優秀だな。


「さて、まずは軌道エレベーターと宇宙港の建設をするために惑星管理倉庫の建設だ、みんなよろしくな。」


私の一言にお辞儀をすると各自作業に向かい部屋を出ていく。




軌道エレベーター建設予定地まで向かう途中、通信が入ったとネメシスから報告が来た。

周辺の小規模国家等からで独立星系の誕生を祝福するお祝いの言葉が添えられていた。


「これで名実ともにこの星系はシンセイ様の所有となります、おめでとうございます」


アリスの言葉にお礼を言うとブリッジから見える惑星を見渡す。

さあ始まりだ。

私は気合を入れるのであった。


この独立星系の名前、それはもう決まっている『ヤマト』である

なぜこの名前かと言うと、自分のほかにもプレイヤーが居た場合にわかりやすいと思ったからである。

もし仲間が来ているのなら会いたい、という思いも込めて分かりやすい名前にした。


そしヤマト発足の記念日が本格開発初日の今日と定めることになったわけである。

うれしいことが続くのはいいことだ。

感慨に耽っていると先行していた輸送艦から通信が来た、『予定地に到着・搬出と作業開始』と文字だけ表示された。

輸送艦自体が旧式であるためAIはネメシスのように喋れないので文字でしか伝えられないらしい。

ただネメシスの通訳で通じるから問題は無い。


しばらくしてこちらも予定地近くに到着して地表に降りる、

まだ大気圏が完成したと言っても放射線やら何やらの遮断する層が完成してないらしく生身で出歩けないのが悲しい。

生身で出歩けるようになるにはあと1か月位は掛かる。

ただ雲が発生したり雨が降ったりといった気象の変化は各地で見られるようになった。

じきに川や海といった自然ができてくるのではないだろうか。

予定地は赤道上でそこそこな広さの高台を選んでいる、なのでもし海ができても水没することはないというネメシスの計算でここに設定したのだ。


ロボットたちが機材を動かしたりしている状況を見ながら

またシャボールが来たら忙しくなりそうだな。

と考えていると、また通信が入ったと連絡。

何だ?今日は忙しいぞ。

相手はシャボールだった、なにやら移民の募集を代理でしてくれるので必要データを送信してほしいとのことらしい、

なんかすまないな、と思いながら通信文を読んでいると作業移民や資材は何をどのくらいもって行けばいいのかとあった。

ネメシスに現状で受け入れられる作業移民の人数と宇宙港と行政府の建物と移民たちの居住地が作れるだけの資材を一覧にまとめてくれと伝える。


1分もしないでリストがウィンドウが表示される、そこには各資材の予定使用量や購入量、予想金額とそれをまかなうための食材売却量など細かく分かりやすく一覧にされていた。

作業移民は300人となっているが何か意味はあるのか聞く、

ネメシスで作れる食料は最大で1000人が暮らせる位の量である、もっと呼んでもいのでは?などと考えていた。


「ただの労働者だけであれば600人くらいでも問題ありません、ですが移民ということなので、家族も来るという計算です。

 もし全員が3人家族の場合900人の移民になってしまいます、そのために少ない人数にしました。

 それに多く人数が来ると、その分販売できる食料がなくなってしまうという事です。

 現状ヤマトの収入は食糧販売だけです、収入が減ると今後の計画にも支障が出るかもしれません。

 以上の観点から作業者は300人が妥当としました。」


ネメシスの説明に納得してそのまま送ってくれと伝える。

さて後は待つだけか、といつもの日常ルーティンに戻る私であった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る