第3話 現実
目が覚めるとそこはネメシス艦内の自室のベットの上だった。
睡眠などで意識がなくなったら強制的にVR機器がシャットダウンしてログアウトするはずなんだが、目が覚めるとまだゲーム内だったことにシンセイは驚いていた。
おかしい、寝てたはずなのにログアウトしていない……
色々考えて思い出してみると、最初も暗転した暗闇の空間で意識が飛んだことを思い出す。
そういえばあの時もVRはシャットダウンしなかった、普通一瞬でも意識が途切れると仮想空間から現実に戻されるはずなのだが。
何かがおかしいと腕時計型端末を操作して宙域マップデータが無いか確認するが、どこにもなかった。
ミニマップ表示も見当たらない。
そこでふと別サーバーに紛れ込んだのかと思い、ネメシスにここの銀河の名前を質問をすると、
「この銀河はサースと言います。」
という答えが返ってきた。
私はサースなんてサーバーは知らない、そもそもそんなサーバー名はログイン画面でも無かった。
GGOではサーバー名を星座の名前にしていたはずだ、現に私も第一サーバーであるアンドロメダでやっていたのだ。
そして銀河もサーバー名を使っていた、実際ログイン画面で何度もアンドロメダを選択しているのを確認したので覚えている。
色々考えるがたどり着く答えがここは現実という事……ゲームをやっていたはずだ、そんなわけがあるはずがないと思っているからこそ信じられない私が居た。
そこに追い打ちをかけるかの如く空腹感に気づく、RPGなどでは空腹感を実装しているゲームはあるがGGOにはそんな機能は無い、もしアプデで実装されたのだとしたら体調管理のウィンドウがあるからそこで確認できるはずだ。
そう考えて、体調管理ウィンドウを確認するが、脈拍や心拍数、あとは身長体重といった項目しか見当たらない。
空腹やのどの渇き等は項目には無かった。
それにおかしいことがもう一つ。
ログインしてからもう20時間立っている、VRで仮想世界に入ってる時最低でも6時間で警告が出る、12時間で画面の数か所に警告マークが出て、18時間で強制ログアウトがされる。
過去にずっとログインしていたことによる死亡事故が起きてから法整備がされメーカーも政府もうるさかった。
現に私も過去長期休暇の時等、ずっとログインしていて強制ログアウトを受けたことが何度かある。
それなのに今は20時間ログインしたままになっている。
これはやはり現実なのか……?
いくらゲームプログラムのバグだと言ってもVR機器の機能までおかしくするなんて聞いたことが無い。
考え中に突然ネメシスから通信が入る。
「プラントで作った食料は保管されますか?それとも販売路の開拓をしますか?
保管される場合倉庫容量から計算すると1か月で満載になります、
販売される場合は来るのに時間がかかると思われますので前もって広域通信を行います」
「そうかこの艦はプラント艦だもんな、それに食べるのは自分一人、貯めこんでいてもしょうがないので販売しよう、連絡してもらえるか?」
ネメシスに指示を出してから気づく、通信ができるのか?それならもしかしたらほかのプレイヤーに通信できるのでは?
そう思いつきネメシスに、他の星系に通信した場合届くのはどれくらいか聞く。
「5万光年先まででしたら空間湾曲通信の使用で2日程で届きます」
それを聞いて私の書いた文章をネメシスのデータベースにあった5万光年以内の12か所の星系すべてに送ってほしいと伝え、文章を書くとすぐに送ってもらった。
内容はGGOでの連合の名前や私のキャラネーム、他にも連合員にしか分からない事を書いた。
元連合メンバーが入植していればもしかしたら反応して返事が来るかも、と期待を込めた。
これで多少は状況が分かるといいのだけど。
そこまでして何とか落ち着いてきたと思ったら忘れていた空腹感でおなかが騒ぎ出した。
入り口近くで待機していたアリスに食事は何ができるかを聞くと、食材は根菜数種類と肉(の様な物)に米が有るとの事。
それで何か作れるものを頼むと伝えると、畏まりましたとお辞儀をして部屋から出て行った。
20分もするとお盆にどんぶりとカップを乗せて戻ってきた、
テーブルに置かれたものを見るとニンジンと玉ねぎに肉を入れて卵でとじたどんぶり物、いわゆる親子丼(の様な物)が置いてあった。
良いにおいがするので一口食べると、これまで食べたことが無いという位においしい親子丼だった。
すぐ平らげた後、おかわりはできるか聞いてもう一杯食べた。カップには紅茶が入っていて、
これも香りもよく飲んだ瞬間おいしいと感じた。
現実での食事は栄養ゼリーや腹持ちの良い穀物でできたスティック状のものばかりだった、飲み物もボトルに入ったものやインスタントが主流だった。
こういったものはあまり食べたことが無かったのも合わさり、すごくおいしく感じられた。
「ごちそう様、ありがとう」
紅茶を飲み終わるとアリスにお礼を言った、するとアリスはお辞儀をして食器を片付けるため部屋を出ていった。
さてこの後はどうするか、返事が来るまでやる事が無いぞ。
何か暇つぶしは無いかネメシスに聞くと、簡易的なトレーニング室と娯楽室があるという。
まずはアリスにトレーニング室に案内してもらったのだが、簡易的と言っていたが本格的なジムくらい開けるのでは?と言う位に機材がそろっていた。
軽く2時間ほど運動で汗を流し、シャワーを浴びて、つぎは娯楽室に案内してもらった。
そこには投影式モニターやソファーが置いてあり、壁の棚にはどこかで見たことあるようなお酒が並んでいた。
モニターを起動してみるが何も映らないようだ、ネメシスに確認すると星系によってはニュースや娯楽の放送があるがここはまだ未開の地なのでそのような物は無いと伝えられた。
モニターの意味ねえじゃん!!と内心思いながらふと気づく、
俺この船の内部を何も知らねえじゃん。
ということでアリスの案内でプラント区画や倉庫区画、居住区画を見学する。
何この船、めっちゃでかいじゃん、小型戦艦クラスはあるんじゃね?と思いながらアリスの後をついて回る。
それもそのはず、この船は2000メートル級艦船、全長だけで2kmもあるのだ、そしてプラント区画をフル稼働させたら1000人程が一ヵ月は過ごせる食糧を賄えるらしい。
今は1パーセント程度の稼働率らしい。それでも10人程度が一ヵ月生活できる食糧が生産されているということだ。
最後に気になっていた格納区画に向かう。
格納庫にはただっぴろい空間に一人乗りの小型の航宙戦闘機が1機あるだけだった。
この格納庫には最大で100機の戦闘機が格納できるらしい、
ゲームの知識では一番小型の戦闘艦、コルベット艦クラスでも最低150機は搭載できるので戦闘能力はお察し程度である。
次にブリッジに来た、入った瞬間おぉ~と歓声を上げてしまう位の広さと壁一面がモニターになっていて景色を映し出していたのである。
ただ景色は赤茶けた植物すらない荒野のような地面と大気が無いため真っ暗な空が広がっているだけであった。
遠くの方でドーム型の建物の様な物が見えたが、あれがテラフォーミング機械だそうだ。
地下の氷を溶かした水や二酸化炭素などの気体を使い大気層を作ってどうたらこうたらと説明されたが私にはさっぱりである。
機械が勝手にやってくれるなら任せよう。
艦内の見学も終わり部屋に戻ってきて、着替えてベットに横になるとすぐ眠気が襲ってきて眠ってしまった。
目が覚めて時間を確認するとログインしてから48時間経っていた。
ほぼここは現実だということを感じるようになってきた。
ただアリスが作ってくる食べ物や飲み物はおいしい、ついつい食べ過ぎてしまう。
そのたびにトレーニングルームで汗を流す……
あとネメシスのデータベースを参照していた時に知ったのだが、この世界では生体ナノマシンを体内に入れる事でアンチエイジングや寿命の増加などが見込めるらしい。
それは実にいいじゃないかとためらうことなくすぐナノマシンの注入をしてもらう。
効果が実感されるのは体質等があるため人により変わるが短くて1か月くらいらしい。
これで俺も長寿だ!!
実際この世界では4桁歳なんてざらにいるらしい……科学技術スゲ~!!
そうこうして生活を楽しみだし、こちらに来て5日目の朝が来た、朝と言っても船の周りは真っ暗なので実感はないのだけれども。
「まだ通信が来ないな。」
期待と不安で緊張しながらもいつも通りアリスのご飯をたらふく食べてトレーニングルームに籠る……そしてデータベースを覗いて疲れたら昼寝をする。
まだ数日だがサイクルが決まってきて、それが日常となってきていた。
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