第65話 本当の ※遥菜視点

 昨日ははやちゃんに酷いことを言ってしまった。

 本当は来てくれて嬉しかったし、甘えたかったし、麻那ちゃんとの何処まで仲良くなったのかも気になってた。


「はぁ……本当昨日はどうしちゃったんだろ」


 少しれいちゃんにやきもちを妬いていたのかな?だとすれば、私は酷い姉だ。麻那ちゃんはおじ様達と何処かへ出掛けていってしまい、私一人。

 はやちゃんとれいちゃんも今頃仲良く何処か出掛けて楽しんでいる頃合いだろう。


「部屋に居たってすること無いし、私も散策しよ」


 私はもしもの為の財布とスマホが入った鞄を手に取り、見んなと同じように部屋を出た。






 ☆







 本当にこの旅館は広い。迷子になりそうなぐらい広い。

 恐らくロビーに出た私は近くの席に着いて、中庭を眺めながらボーッとしていた。


「……はやちゃん、今頃楽しんでるんだろうな」


 私の唯一の家族であり、初恋でもある人。

 血は繋がってないけれど、世間体的には余り宜しくない。


「戻ってきたらちゃんと謝ろう。楽しい想い出づくりの為に来たんだから」


 そんな時だ。見知らぬ女性が私の前までやってきたのは。


「……あのー、何か?」


「あ、あぁ……ごめんなさい。私、ここで働いてる者でして」


 仲居さんだったか。でも、他の仲居さん達とは違って……驚いてるというか、今にでも泣きそうな雰囲気というか。

 私はこの人の顔を見た時。何故か初めて逢った気がしなかった。


「昔、子供が居たんですけど……その子によく似ているなと思いまして……」


 うっすらとだが、私もこの人が昔逢った母親に似ているような……そんな変な感覚があった。

 私は堪らず震えた声で。


「もしかして……おかあ、さん?」


「!やっぱり遥菜なのね?!」


 私は勢いよく抱き締められて、私に対して何度もごめんなさいと謝っていた。


「なんで……なんで今になって!」


 よく分からない感情が私を襲い、母親と名乗る人に怒りを露にする。


「ごめんなさい……だけど一緒に生活しようにも、貴女を一人にするわけにはいかなかったの……」


「だ、だからって……だからって……」


 やっと逢えた喜びと、決して捨てられた訳じゃなく苦渋の選択をした上でその選択肢しかなかったという理由を知ったから。涙が止まらなかった。


「生活に余裕が出来たから迎えに行こうとしたら……貴女がもう居ないって聞かされて……でも、幸せそうで良かった」


「何が良かったよ……私はちっとも良くないよ!」


 不満をぶつけるように酷い言葉を投げ掛けた。


「新しく迎え入れられた家族は一人だけになっちゃったし!その家族も私から離れていくし!あんたのせいで……私は、わた……しは……!」


 悔しくて、寂しくて、虚しくて、私はその場に泣き崩れた。そんな時、一番聞きたかった声が聞こえた。


「……姉貴。いや、遥菜義姉さん」


「はや、ちゃん……れいちゃんまで……」


「ここじゃなんだから、部屋に戻ろう。皆見てるよ……あなたもそれでいいですよね?」


 私はれいちゃんに連れられて、私の母親を名乗る人は黙って頷いていた。


 この時にちゃんと決別すべきだったと、今更ながら後悔している。

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