第64話 こいつらまたいちゃついてる
麻那ちゃんの突然の襲来でお預けを食らって、テンションが下がったまま玲香と温泉街を巡る。
なんで今街に出てるのかというと、彩奈さんの提案で二人の仲をもっと深めなさいと。
「仲深めろって言われても、どこ行けば良いんだよ……」
当然この付近の事なんて何一つ知らない俺は、ただボーッと突っ立ってるだけ。玲香なら何か知ってるかなと思い、顔を向けると。
「へへ……」
何故か知らないけど、ものすっごい笑顔が返ってくる。
「……何処か行きたいとことかないの?」
「一緒に居てくれるだけで良い」
そう言ってくれるのは素直に嬉しいんだけど……彩奈さんになんて言われるか……。
考えるだけでまた頭が痛くなってきた。
「はぁ……仕方ない。辺りを少し歩くか」
「お散歩デート……!えへへ」
「そうだけどそうじゃないからな?」
誰か俺を助けてください。
☆
温泉街ってだけあって様々な店が並んでおり、俺達のようなカップルや家族連れ等といった人が多かった。
特に人を集めていたのが小さな喫茶店でこの辺だと有名らしく、地元の人もよく行くそうだ。
「いらっしゃいませー、お席へご案内しますね」
と、綺麗なお姉さんがお洒落な着物で出迎えてくれた。まあ当然隣からは冷たい視線を浴びることにはなってるけど。
「……痛いってば」
「むうっ」
他の女性に嫉妬するいつもの玲香に戻ってしまった。
「誰も盗らないでしょ」
「身近に居るあの女狐がそうじゃないから」
め、女狐って……桐原のことか。
「普段仲良いのに、なんで俺の事になると喧嘩するんだ?」
「はーくんは私の!なのにあの女狐は……あー!思い出すだけでイライラする!」
何があったのか知らないけど、とりあえずこの話題はやめておこう。大声出すから他の客がこっち見てるし。
ただ玲香はそうでもないらしく、メニュー表を見ながら色々と愚痴を溢していた。
「……そうだ。ねえはーくん」
「今度は何?」
「今度のお祭り、久し振りに二人で行こうよ」
「あれ、いつだっけ……」
あの日以来行ってないから完全に忘れてしまった。
「八月三日……まあ色々あったもんね」
玲香も少し気にしていて、控えめに言ってくれた。
やっぱりあの日は嫌でも思い出してしまうようで、玲香の表情が暗くなってしまった。
「……わりぃ、折角言ってくれたのに」
「そんなことない……私が悪いから」
「気にすんな。むしろあの日がなかったら今頃一緒に居ても付き合ってなかったかもしれないんだぞ?まあどっちかが告白するんだろうけど……」
「ふふっ……そうだね」
やっと玲香に笑顔が戻った。やっぱり玲香は笑顔が一番似合う。
「もうっ……何?」
「やっぱり玲香は笑ってる方が可愛いなって」
「か、かわ……っ!?もう……っ」
照れながら怒る姿もまた、素晴らしい魅力だ。俺も熱にやれてるのか感覚がおかしい。
もっといろんな顔を俺だけに見せて欲しい。
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