第63話 はよ結婚しろ
朝食を取り終えた俺は、何故か玲香が凭れ掛かって楽しそうな幸せそうなそんな表情を向けてくる。
思わず見惚れてしまって顔を逸らす。
「んふー」
「……かなりご機嫌ですね」
裏でもあるんじゃないかと変に勘繰ってしまう。
「だってはーくんと一緒なんだもん、へへ」
嬉しいのは嬉しいんだけど……絶対それだけじゃないよね。
「もうっ、私の言うことが信じられないの?」
こっちの考えすぎか今度は怒らせてしまい、栗鼠のように頬を膨らませて睨まれる。
それもそれで可愛すぎたのでまた顔を逸らす。
「こっち見てよ!もうー!」
「お前が可愛すぎるから顔が見れねえの!それぐらい……あっ」
うっかり口を滑らせてしまって、思わず本音が出た。くっそ恥ずかしい……。
「か、かわ……っ、えへ、えへへ……」
完全にトリップしてやがる……。
なんだこの可愛い生き物は……!普段より多めにめっちゃデレてるんですけど。
「私の事……好き?」
「へっ……?あ、あぁうん。好きだけど」
あ、また表情が緩んだ。
「どういうとこが?」
「……そういうとこが」
「ちゃんと言ってくれなきゃ分かんないなぁ……」
こいつ……!絶対に分かって言ってるだろ?!
「……ねえ、はーくん。どうして私の事が好きなの?好きになってくれたの?」
今度はいつもの玲香に戻り、俺が玲香に惚れた理由を聞いてくる。理由か……。
玲香と俺はいわゆる幼馴染なんだけど、玲香の事が好きだって気付いたのは中学入ってすぐ。でもいつからなのかは憶えてない。
「……いつ頃からかは分かんない。でも好きだって気付いたのは中学入ってすぐぐらいかな。そういう玲香は?」
「私は……憶えてるよ。あの日の事も昨日の事も全部」
「いちいち言わなくて良い……!」
俺は顔を逸らし、赤く染まった顔を手で覆い隠す。
「……一目惚れ。ちょっと格好良かったから」
「そ、そう……」
しばらく無言の時間が続くけど、それが逆に落ち着かせるのに十分すぎるぐらいだった。
また玲香が凭れて豊満な胸に当てるような感じで腕を抱く。
「もうすぐお祭りだね。あの日から行けてないから今年は行きたいな……」
「そう、だな……行きたいな」
熟年夫婦のような雰囲気を纏ってるが、俺達はまだ未成年で交際中なだけだ。
「なんで好きだって、思ってくれたの?」
「それは……」
「それは?」
目線だけを外し、小さく呟く。
「……っ、……から」
「何?聞こえないんだけど」
あーもう!調子狂うなぁ……。
「お前が綺麗で可愛かったからだ!これで良いだろ?!」
「!?」
今度は玲香の顔が林檎のように真っ赤に染まり、顔を隠そうとする。俺には見せられねえってか。
「こっちは恥ずかしい思いしてるのに……そうやって自分だけ逃げんなよ」
「わ、分かったから……!離して……」
「離すもんか。ま、また……襲っても良いんだからな?」
冗談で言ったつもりだけど、赤く染まった潤んだ瞳で玲香としばらく見つめ合う。
「……れい、か」
「はー……くん」
二人の唇が重なり合う寸前で、大きく扉が開く音が聞こえてお互い距離を取った。
「おはようございます!って……どうしたんですか二人とも?だいぶ顔赤いですけど……何処か具合でも?」
「だ、大丈夫……!外暑かったからかな?!」
「ちゃんと薬は飲んでくださいね?颯斗兄さんも」
なんでこう、盛り上がったところでお預け食らうかな……。
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