第58話 変な姉貴
道中に出会った上村が俺達の前から去って数分後、少し寄り道しながらも姉貴と麻那ちゃんが泊まっている部屋に到着した。
慣れた手付きで扉を開けると中から姉貴の声が聞こえてきた。
「意外と早かったね、麻那ちゃんおかえりー」
「ただいまですー」
「……何て格好してんだ姉貴」
「あらはやちゃん。どうしたの?寂しくてお姉ちゃんに会いに来たの?」
何て言ってる姉貴だが顔が真っ赤だ。
少し暑かったのか、色々と見えて下着やら豊満な姉貴の胸が俺の目のやり場を困らせていた。
「……来るなら来るって一言欲しかったな」
「ごめん、急に決まったもんだから……」
服装を正して俺の元へ近付いてくる姉貴、繋がっている麻那ちゃんの手を外して俺を部屋の外へ追い出す。
「はやちゃん、こんなとこに居ちゃダメ。れいちゃんと一緒に居なきゃ」
「姉貴……?」
普段ならそんなこと言ったりしない姉貴、一体何があっただろうか。
「良いから帰りなさい。これ以上お姉ちゃんを困らせないでよ……我慢出来なくなっちゃうから」
「我慢?何を我慢してるんだ?」
「はやちゃん!何度も同じこと言わせないで!!」
きっちりとした生徒会長の時の真面目な声色で。俺は分かったと告げ、自分達の部屋へと引き返していく。
後で聞いた話だが、あの後姉貴が泣いていたらしい。
☆
結局部屋の中まで通して貰えずに部屋に戻った俺は、縁側に設置された椅子に座る玲香がすやすやと眠ってた。
初めて見る玲香の寝顔は普段のような美しさとは違って、まだ幼げな雰囲気で少しだけ昔の事を思い出す。
そういや一緒に寝たりしたのって、小二の夏休み以来か。
「んぅ……すぅ……」
「ただいま、玲香」
俺は玲香を起こさないように対面に座り、さっきの姉貴や道中出会った上村のことを考えていた。そういや桐原の奴、今頃何してるんだろうか?バイトにでも行ってるのかな。
なんて考えていたら、眠っていた玲香が目を覚ましたようで多少寝惚けているのか、ふわりと柔らかい表情で微笑んだ。
「おはよぉ……ふわあーあ……長旅で疲れちゃったみたい」
「そっか、飯までまだ少し時間あるし。少しぶらつくか?」
「んーん。ここに居る」
玲香と見つめ合ってお互いの頬が赤く染まり出し、ゆっくりと目を閉じた玲香の顔がゆっくりと近付く。
俺も応えるように目を閉じ、ゆっくり顔を近付けて……。
「お客様、夕食のお時間です」
突然の仲居さんの声に反応して勢いよくお互いに顔を離し、それぞれ違う方向に視線を送る俺達二人。
そんなことを知らない仲居さん達は、次々と料理を運んで机の上に並べていた。
「……丁度良いし、ご飯にしよっか」
「だ、だな!」
無理と明るく振る舞う俺と玲香だが、内心バクバクとうるさくてお互いに顔なんて見てられない状況。
俺と玲香はそれぞれの席に着き、夕食を頂くことにした。
少しでも来るのが遅かったら目の前でキス……しちゃってたんだな。
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