第48話 デート後
先日のデートはあちら側の暴行事件として処理され、慰謝料が相当な額の送られてきた。
俺から手を出したって言うのに……。
ただ完全に傷が癒えた訳ではなく、まだ痣等は残ってしまっている状態。
「あ、おはよ」
「おはよう姉貴、珍しいな」
今日は珍しく玲香が起こしに来なかった。
まああんなことがあったし、仕方ないんだろうけど……少し寂しいものがあった。
「じゃあ私先行ってるから、気を付けて?」
「姉貴も気を付けて」
そのまま姉貴は一足早く学校へ向かっていき、俺は姉貴が作ったであろう朝食を取る。
……うん、美味しい。
一人で黙々と食べているとリビングの扉が開いた。
「もう……っ!なんで起きてるのよ!折角起こしに来たのに……」
「あ、玲香おは――っ!」
物凄い不満そうな顔で俺を抱き締める。
突然の事で驚きつつ、玲香の大きな双丘に挟まれて息が出来なくなる。
「はーくんの分からず屋……!」
たまたま早く起きただけなのに、なんで俺は玲香に怒られてるんだろうか……。
というか息が……!マジで……!
「んんーっ!」
「ひゃ……っ!ちょっ……と!息が当たって……んぅ……」
なんで更に力を込めるんだ?!マジでこのままだと死ぬ!
このまま死んでも悔いはないけど、こんな死に方は嫌だなぁ……!
「……!は、はーくん?!起きてはーくん!!」
寸前のところで解放された俺は新鮮な空気を取り込めてなんとか一命を取り留めた。
☆
朝、いつものように登校していると見慣れない人影があった。
俺達が近付くのを気付いて顔を見るとまさかの村上だった。
「あ、あの……先日はあ、あり……がと、ござい……ました」
顔を真っ赤にして頭を下げた村上だが、それだけを言って学校の方へ突っ走っていった。
俺と玲香は顔を見合わせ、お互いに苦笑を浮かべ傾げるしか出来なかった。
そのまま行くと今度は桐原が待っていて、俺の顔を見るなり血相を変えて詰め寄ってきた。
「……その顔、どうしたの?」
「えーっと……」
「その痣、誰かに殴られた?」
何とか誤魔化したいけれど……変に誤魔化せば、玲香が。
でもどうすれば……。
「答えて」
ちらりと玲香を見るとやはりと言うべきか、凄い暗い顔になっていた。
それを見ていた桐原は当然察する訳で……。
「……無茶しない。分かった?」
「はい……」
「玲香ちゃんも、迷惑掛けない」
「うっ……私は悪くないもん!」
俺は親に怒られた子供のようにしょんぼりと顔を俯かせた。
「言い訳しない」
「してない!」
「してる」
両者一歩も譲らず、互いに睨み合い俺の腕を取り合いまた睨み合う。
俺はこの二人に挟まれながら、頭を抱えた。
――さっき走って逃げていった村上がこの光景を見てるとは知らずに。
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