第46話 その後

 早速俺の家に着いた俺と玲香、家の中に入ると当然姉貴が居るわけで……。

 父さんが死んだ日と同じぐらいに取り乱してて、当然玲香はそんなことは知らない。


「は、はやちゃ……っ、早く傷の手当てを……っ、え、えぇっと……!」


「はる姉さん落ち着いて……」


「落ち着ける訳無いでしょ!?はやちゃんが怪我してるんだよ?!もしもの事があったら……」


 俺の心配をするあまりに何も知らないが故に、玲香を責めるような言い方になってしまっている。

 玲香は顔を俯かせてまた涙が溢れ落ちていた。


「姉貴……俺は大丈夫だから、あまり玲香を責めないで」


「はやちゃん!でも……!」


「ここまで来れたのは……玲香のお陰、だから責めないで欲しい。お願い……」


「……はやちゃん」


 やっと納得してくれたのか、少し口調が柔らかくなった気がする。良かった……。

 ただここまで頑張って歩いてきた疲れもあって、その場に座り込む。呼吸も乱れ始めて視界がぐらつく。


「……ははっ、無理しすぎたっぽい」


「れいちゃん、とにかくはやちゃんをお部屋に」


「う、うん」


 こうしてまた二人に支えられながら、自室へ向かいベッドに横になる。

 姉貴は救急箱やらを取りに行くためか一旦部屋を出て、また二人きり。


「……ぁ」


 最後の力を振り絞って俺から玲香の手を握る。


「だいじょ、ぶ……だから……」


「ごめんはーくん……私のせいで」


「玲香は……悪く、ない。気にしすぎ……だ」


 俺は再び意識が飛んだ。






 ☆






 あれ……?なんで父さんがここに……?


『ほら、挨拶しなさい』


 目の前に居るのは幼い頃の玲香、玲香はおばさんの足元に隠れていて半分ぐらいしか顔が見えない。


『玲香も恥ずかしがらないの、もうお姉ちゃんになるんでしょ?』


 すっと出てきたと思えば、じっと見つめられてとてとてと近付いてくる。


『……おなまえは?』


 そのまま俺の視界がまた白くなっていき、今度は昔の家に。


『颯斗、これからこの人がお前のお姉ちゃんだ』


 今とは全く違う風貌でおどおどしていて、でも寂しそうな表情を浮かべる姉貴。

 恐る恐る近付き、姉貴を見上げて。そこでまた途切れた。


「ん……っ」


「おはよ、はやちゃん」


 繋いでいた筈の手が離れていて、この部屋に居るのは姉貴だけ。

 帰ったのかと思えば、部屋の扉が開いた。


「あっはーくん……」


 玲香は丁度席を外してただけだったようだ。

 俺は二人の顔を交互に見比べ、小さく息を吐き天井を見上げた。あれは夢だったのだと。


「ちょっとはやちゃん。人の顔見て何溜め息吐いてるの?」


「……二人とも、昔と比べると凄い変わったなって」


 おどおどしていたあの二人は今や見違えるぐらい立派な人になっていた。


「もう何十年と一緒なんだから、当然でしょ?」


 ただ玲香だけは違った。


「……いっぱい努力したから」


 そう言った玲香だけどやっぱり小さい頃と全く変わってなくて、俺の傍に寄り添い小さく微笑んだ。

 変わってしまったのはどうやら俺だけみたい。

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