第45話 ショッピングセンター3
さっきまで見ていたマウスとその他デバイス各種を見て回って、そのマウスを購入していると玲香達が居なかった。
俺は少しだけ嫌な予感はして、一旦店の外へ出た。
「あ……良かった。村上が一緒で」
玲香と村上が二人一緒だったことに少し安堵したが、二人組の男が玲香達の元へ近付いていく。
そして案の定絡まれてしまった。
「……っ」
村上は恐怖のあまり声が出せずに玲香にしがみつき、その玲香もまた同じようにしがみついていた。
俺は考えるよりも先に身体動いて、彼女らへ手を伸ばすその手を掴んだ。
「何やってんだ、お前」
「あ?なんだてめえは……」
その男は前回絡んでいた奴より、力が強そうな奴で俺が喧嘩したら確実に負けると察してしまう。
どうにかしてこいつらを追い払いたい、けど俺一人ではどうにも……。
「……っ」
村上と玲香が俺にしがみついてきた。
二人とも手が震えていて、村上に至っては完全に怯えてしまっている。俺が何とかしないと……。
「おい他行こうぜ」
「こんな上玉置いて他にいくだぁ?ふざけてんじゃねえぞてめえ……おら来いよ!」
もう一人の男は乱暴に玲香の腕を掴み、俺から引き剥がそうとする。
それと同時に俺の中で何かが弾け飛んだ。
「俺の玲香に汚ねえ手で触んじゃねえよ……」
「はぁ?てめえ何言って――」
「聞こえなかったか?触んじゃねえつったんだよ!」
それと同時にその男の腹に一発、そのままうずくまる。
その隙を見て彼らから距離を取って、騒ぎに駆け付けた大山と合流。
「大山、警察と警備員」
「あ、あぁ……!」
俺はこの後起こったことを全く憶えていない。
☆
気付けば俺は気を失っていたようで、玲香に膝枕をして貰っていた。
身体のあちこちが痛み、口の中は鉄の味がしていた。
「はーくんっ!」
「うっ……れい、か……?」
「バカバカ!本当に心配したんだからね?!」
玲香の目から大粒の涙が溢れ、俺の顔にぽたぽたと落ちた。
「俺……守れたの?」
「本当……バカなんだから……!」
玲香は俺を抱き締めた。凄く暖かい。ぽかぽかする。
「大山は……?」
「……あの二人ならあっち」
俺の代わりに警察官に事情聴取されていたようで、二人とも無事だった。
俺は必死に彼女達をボロボロになりながら玲香を守れたんだと認識した。
「デートの続きといきたいけど……今日はもう帰りましょ」
「ごめん……俺のせいで」
「そんなことないから、早く手当てしないと」
俺は彼女に支えられながら、このままデートを切り上げて帰路に就いた。
折角買ったマウスの箱が酷い有り様で、後日新しいものを無償で交換して貰った。
玲香に格好悪いとこ、見せちゃったな……。
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