第43話 ショッピングセンター2
お気に召すものがなかった玲香だけど、収穫はあったようで楽しんでいた。
三階に着くとまず目に入ったのは大手家電量販店で、そこは俺がまだ父親が居た頃によく連れて行って貰った店の名前だった。
まさか本当に玲香とここに来るとはな……父さん。
「ボーッと突っ立ってどうしたの?」
「え?あ、あぁ……悪い。ちょっと思い出してさ」
幼馴染で現在は彼女の玲香は、不思議そうに俺の顔を見つめて頭を傾げた。
そんな時、何処かから聞き覚えのある声が聞こえた。
「せんぱーい!……っとと、ごめんなさい!デート中でしたか」
振り返るとそこに居たのはあの上村萌々香。
制服とは違い、かなりラフな格好でここへ来ていた。
「むっ……この子、何処かで」
彼女に警戒しながら俺の腕を抱く。
「どうも、上村萌々香です。そんなことしなくても、萩谷先輩は獲りませんよ?」
「な……っ!何なのこの子!めっちゃムカつく!」
嫉妬してるのがバレた上に後輩にからかわれる玲香。
「まあまあ落ち着いて……今日は一人?」
「いえ……私もデート中でして」
頬を赤らめてチラッと後ろを向いた上村は、乙女のような表情を浮かべていた。
……ん?こいつ……。
「え!?大山?!」
「偶然ってあるもんだな」
玲香も驚いてて、俺と顔を見合わせる。
「……通りで気楽に絡んでくるなと思った」
「ほ、本当に居たんだ……彼女さん」
「ははっ、よく言われる」
そういや大山と玲香はそこまで親交がないから、噂ぐらいしか聞いたことないんだな。
一緒に居るようになったと言っても、つい最近だし。
「あ、そうそう荻谷。最近新しい奴が出たみたいでさ、一緒に見ねえか?」
「あーあの噂の?いいよ。玲香も上村もいい?」
確認の為に彼女達に聞く。
「はい。元々そのつもりで来ましたから」
上村は元気よく承諾して荻谷の隣へ、一方玲香は。
「ねえ颯斗、私も着いてって良い?」
「うん。てかデート中」
玲香は前に新調したいって言ってたっけな。丁度良い。
「んじゃ行きますかね」
二人きりだった俺達は上村と大山を連れて、ダブルデートの形で家電量販店のゲームコーナーへと足を運んだ。
☆
家電量販店のゲームコーナーはそこそこ高いなりにも、最近のはパソコン関係のものまである。
玲香は初めてここへ来たのか、目が輝いていた。
「す、すごい……こんなにいっぱい……」
「専門店行くともっと凄いけどな、んで例の奴は……お、これだな」
俺が手にしたのは最新型の無線マウス、今までの無線より更に軽量らしく愛用する選手も居るとか。
俺が今使ってるのはそこそこ重たい為か、腕が悲鳴を上げていてそろそろ買え時かなと。
「大山、これのレビューってどうなんだ?」
「噂では今までより軽いのもあって、高いパフォーマンスを叩き出せるらしいよ」
「へえ……じゃあ買うか」
俺は無線有線どちらも使うけど、折角来たからには買う以外無いな。
俺達はその他にも色々と見て回った、一方女性陣はというと……。
「先輩先輩、これとかどうでしょう?初心者でもそこそこ使えますし。結構性能良いですよ?」
上村が玲香にお薦めのデバイスを紹介していた。
「そういや大山、上村のランクいくつ?」
「んー?確かシルバーだったかな。俺のひとつ下なのは憶えてんだけど……最近部活が忙しくてさ」
シルバーか、だったらそろそろ玲香もランク戦をさせても良いかもな。知識も腕前も十分身に付いてるし。
最近のアップデートにより、ランク差はあっても俺の取得ポイントがペナルティ受けるだけでプレイ可能になった。
「てか何でそんなことを?」
「そろそろランクさせたくてさ」
「あー、そっか。今までランク以外をやってるだけなんだっけか」
「そそ、だからね」
そろそろ一緒にランクやりたいなと思ってたから。
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