第19話 遅すぎた返事

 翌日、俺は普段より早めに誰かに起こされた。

 まだ眠い目をゆっくりと開けると、目の前に居たのはなんと姉貴だった。

 しかし、どうも様子がおかしい。


「姉貴……?どうしたの……?」


「お、おはよ……!」


「普段なら起こしてくれないのに……本当に今日はどうしたの?」


 まだ覚醒しきってない俺は今の姉貴の表情等が分からない。


「はやちゃんって……いっつもれいちゃんに起こされてるんだよね?」


「そうだな……もう日課レベルで」


 徐々に覚醒し出した俺、時計を見ると普段より一時間も早かった。

 いつもこの時間に姉貴は準備してるのか。


「じゃあ、今日から毎日お姉ちゃんが起こすね!」


「……どういう風の吹き回し?」


 今まで一切無視していた姉貴が今頃になって起こしに来るだなんて、何か裏があるに違いない。

 だが、さらにややこしい人物が俺の部屋にやってくる。


「はーくーん……いつまで寝て……え?」


「れいちゃん……?!」


「……なんでここにはる姉さんが?」


 お互い驚きを隠せず、玲香は急に俺の左腕を抱き寄せて姉貴に威嚇。

 姉貴も負けじと右腕を抱き寄せ、玲香に威嚇し出す。


「ちょっ……二人とも何やって……!」


 二人のその大きな二つの柔らかい感触が俺の両腕と理性を刺激してくる。

 どっちも年齢の割に大きいから、彼女も居ない俺には強烈すぎる。


「今日からはやちゃんは私が毎日起こすから、れいちゃんはもう来なくて良い」


「姉貴……!?」


 姉貴は突然何言い出すんだ?!


「わ、私のはーくんは誰にもあげないんだから……!」


 顔を真っ赤にして玲香も玲香で変なことを言い出す。

 ただ必死になってるせいで、玲香の胸の感触がさらに強くなっていた。


なんかに負けない!私が一番はーくんが好きなんだから……!」


「……っ」


 玲香の言葉に俺は胸が苦しくなっていた。多分顔も熱い。


「だから今更はーくんにお姉さん面しないで……!誘惑なんかしないで!……私の幼馴染を盗らないで!」


「……れい、ちゃん」


 玲香に気圧された姉貴は、気付いたら俺の腕を離してた。

 それもそのはず、だってあの玲香が泣いてたから。


「お姉ちゃんがはーくんのこと好きなのはよく知ってるんだから……!」


「お、おい玲香……!」


 だけど玲香の口は止まることを知らない。


「はーくんもはーくんだよ……?あれからもう一ヶ月も経つよ?返事、してくれないの?」


「それ、は……」


 今の俺は何も言えなかった。だって怖いから。


「はーくんがその調子なら……桐華ちゃんだって黙ってないよ」


「ならどうすれば……」


「私か、桐華ちゃんか、お姉ちゃんか。今ここで選んで」


一ヶ月も経っても返事がなく、姉貴が参戦したことによって玲香も焦っているのかもしれない。

それに最近玲香と居る方が凄く安心するというか、近くに居るとドキドキするっていうか……。

玲香じゃなきゃ、駄目みたい。


「……まだ、よく分かんないけど……俺、玲香が好き、なんだと思う」


「……はや、ちゃん」


姉貴は膝からがっくりと崩れ落ち、覇気を失っていた。


「それに……もう一回……キス、してみたい……なって」


もう一度するならファーストキスを奪った桐原でもなく、今目の前に居る姉貴でもなく、玲香だ。


「だから……その……つ、付き合う?」


「……最初からそう言ってよバカ、でも嬉しい」


最初からこうしとけば、良かったのかな……?


「ごめん……大分待たせて」


「本当遅すぎる。でも今スッゴい幸せだから……許す」


間近で見る玲香の笑顔はとても輝いていて、凄く可愛くて思わず顔を逸らしてしまった。

興奮が治まらない俺は変な雰囲気の中、玲香と付き合うことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る