第16話 姉貴と義姉さん

 翌日、いつもと同じ朝を送って学校に向かい教室で一人ボーッとしていると、珍しく桐原が絡んできた。

 ただどうも機嫌が宜しくない。


「荻谷君、時間ある?」


「質問を質問で返して悪いが、あると思うか?」


「そうだった」


 改めてそう言われるとなんか腹が立つ。


「……で、何の用だ?」


「この間の事」


 俺は玲香に聞かれてないか周囲を見渡して、桐原の言葉を待つ。


「誰かと一緒にゲームしてたっぽいけど、誰と?」


 そういやあの時間、桐原こと『Zach』はログインはしていた。

 ということは俺のログイン状態を見られてたのか。

 玲香と一緒になんて言うと面倒なことになるからな……。


「知り合いとしてた」


「……の割には、カスタムやカジュアルやってたっぽいけど?」


 そこまで見てたのか……。


「誰とやったの?」


 桐原に問い詰められる俺。

 なんて言い逃れようかと考えていたら、玲香がやってきた。


「私とよ、桐原さん」


「河瀬……!」


「……やっぱり」


 二人がまた睨み合ってしまった。

 周りのクラスメイト達はまたかというような視線を送っていた。


「何?何か悪いことでもある?」


「ある。貴女のようなと一緒にする時間はない」


「……颯斗、どういうこと?」


 玲香の視線が俺に変わると、周りのクラスメイトは事態の急変を感付き、ざわめき出した。

 桐原に玲香と一緒にやってるのがバレたのと、クラスメイトにはただならぬ関係性だという誤解まで広がっていく。


「荻谷君は――」





 ☆






 放課後。俺は生徒会室に呼ばれた。

 理由は姉貴の気紛れ。

 でも俺としては助かったから終わってすぐ生徒会室に向かい走って逃げた。


「……姉貴」


「厄介なことになっちゃったね?誤解を解くのに時間掛かっちゃった」


「ごめん……また迷惑、かけた」


 俺と桐原と玲香の三人で不純異性行為をやっているなんて噂をどっかの誰かが広めたことがきっかけ。

 周りから見ればそう見えるのも無理もないが、俺としてはそんなことはないとはっきりと言いたかった。


「ちゃんと皆に言っておいたから大丈夫、でもごめんね?私が言い触らしたから……」


 ただその代償として、俺がゲーマーであることを姉貴が広めたことによって肩身が狭くなり、俺は我慢できずにここに来たということ。

 まだ世間に俺はゲーマーだなんて、名乗っても良い時代じゃないのは分かっている。

 出来れば卒業するまで隠しておきたかった事だった。


「姉貴は悪くねえ……!俺がこんな性格だから……」


「……本当優しいね、はやちゃんは」


「そんな、こと……」


 ないと言おうとした時、突然姉貴が俺を抱き締めた。


「この場でこんなこと言うのも何だけど……お姉ちゃんはいつまでもはやちゃんの味方だから」


「……知ってる」


「そう、それでいいの」


 姉貴は俺に微笑んで優しく頭を撫でる。


「姉貴……いや、。いつもありがとう」


「急にその呼び方はやめてよもう……びっくりするから」


「ごめん……」


 姉貴はふとこんなことを言い出した。


「れいちゃんと桐原さん……だっけ。はやちゃんのこと好きって言ってくれたの」


「え?あぁ、うん……そうだけど」


「良いなぁ二人は同い年で……まあ私は同居してるけどさ」


 姉貴はソファーに俺を追いやって覆い被さった。


「ちょ……っ、姉貴!」


「ふふっ……顔真っ赤、お姉さんに照れてるのかな~?」


 目の前に見えるのは姉貴の豊満な丘と揺れる目。


「私もう我慢出来ない……はやちゃん、好きだよ。一人の男の子として、んふっ」


 俺は姉貴にまで告白とキスをされ、もうどうしたら良いのか分かんなくなってきた。

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