第14話 河瀬家訪問
玲香と一緒に家に帰った俺。
極普通のアパートで姉貴と暮らしてるし、なんなら何度も家に来てる玲香は今更漁ったりはしない。
「……あれ、前使ってた奴何処やったっけ」
物置と化したもう一つの部屋に置いておいた筈のパソコンがこの部屋にない。
別の部屋か、まだ俺の部屋にでも置いたか?
「……あ、良かった。まだ綺麗で」
今俺が使ってるのと同じデスクタイプのパソコンとモニターを物置部屋から引っ張り出した。
「玲香ー、こんなので良ければ」
「えっ……本当にいいの?」
「全然いいよ?ていうか姉貴は使わないって言ってたから、処分に困ってたんだ」
姉貴はいつの間にかノート型を購入していて、生徒会の件で使うらしい。
まあこれと比べたら持ち運び楽だし、業務用で十分っぽいから良いんだけど。
「マウスとかキーボード辺りはどうする?新調するなら着いてくし、古でも良いならあげるけど」
「……ありがと、何から何まで」
「まあ今出来ることはこれぐらいだし、でもおじさん達になんて言おうか……」
父親が他界し施設に預けられた時期に疎遠になってから、久しく会ってない。
そういやよく遊んで貰ってたっけな。
「それは私がするから、一旦帰りましょ?」
俺は段ボールに配線やらを乱雑に突っ込み、久し振りとなる玲香の家に向かった。
☆
重たい段ボールを持って歩くこと八分。
小学生以来となる玲香の家に着いた。
「あんま変わってねえんだな。玲香は変わったのに」
「う、うっさい!ほっといてよ!」
「はいはい」
玲香は独り言をぶつぶつと呟いていたが、何を言ってるのか全く聞こえない。
その代わりと言っちゃなんだが、懐かしい声が俺の耳に入ってくる。
「姉さんおかえ……って、颯斗兄さん?!」
「久し振り、麻那ちゃん。見ない内に大きくなったね」
玄関に居たのは制服に身を包んだ玲香の妹、
姉の玲香と違って、凄く大人しく人見知りも激しい。
俺の父親が居た頃は実の妹のように可愛がっていた可愛い女の子が、いつの間にか姉に負けず劣らずな容姿を持っていた。
「え……!姉さんもしかして……?!」
「な、何?」
「そういうことならお赤飯を……!」
ただたまにこうやって暴走するのが玉に瑕。
「ま、麻那?!まだ違うから!あっ……」
「まだ?何をやってるんですか姉さん……もう通い妻にまでなってるのに」
「通い……!?もう麻那ー!」
何の話してるんだろうか?俺は一人突っ立っていた。
「それで颯斗兄さん、その荷物は?」
「ああこれ?前に使ってた奴――むぐっ!」
「よ、余計なことまで言わなくて良いからさっさと来る!」
俺は重い荷物を持ちながら部屋まで連れていかれた。
「……変な姉さん、颯斗兄も随分格好良くなって驚いちゃったなぁ」
☆
部屋に連れてこられた俺の腕は限界を迎え、中に入ってる精密機械をゆっくりと床に落とした。
置いた瞬間、玲香が胸に飛び込んできた。
「玲香……」
「もう少しだけ……このまま」
玲香は満足したのか俺からそっと離れ、段ボールを開け出した。
モニターを勉強机の上に置き、デスクタイプを拡張タイプの天板の上に乗せた。
「これではーくんと同じになった」
「それじゃ使えないから配線繋ぐぞ」
それから数分掛けて配線を繋ぐ作業が終わった。
「後はキーボードとマウスか……でも今からじゃ遅いな」
「しばらくはお父さんの借りてやるから。色々と教えてくれてありがとう」
「ん、何かあったらまた連絡……って、そういや持って来てないんだった」
あいにくスマホは家で鞄の中に突っ込んだまま、こういうことなら持ってくるべきだったなと後悔。
玲香はメモ帳らしき小さな紙に何かを写していた。
「はいこれ、私の」
「良いのか?」
「連絡、するんでしょ?」
俺は素直に紙を受け取った。
「帰ったら送るよ、またな」
「はーくん!」
俺が振り返るのと同時に玲香が俺の唇を奪った。
「また、ね?」
後ろを向いた玲香の顔はかなり真っ赤に染まっていた。
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