第13話 玲香なりの縮め方1
玲香と桐原に告白された俺は一人、教室に残ってた。
あの二人とどっちかと付き合うというより、どうすれば平穏な日常を送ることが出来るかと考えていた。
ただ今日一番の驚きは……。
「まさかあの桐原がZachさんだったなんて……」
通りで俺にあそこまで執着する訳だ。
「んー……どうしたものか」
なんて考えていると突然教室の扉が開く音が響く。
「はーくん、ここに居たんだ」
「……れ、玲香」
「待っても来ないから迎えに来たの。帰るわよ」
少し怒った口調で扉の前で仁王立ちしている玲香、心なしか若干頬が赤い。
「わ、悪い……考え事してて」
「ふーん……どうせあの転校生に何か言われたんでしょ」
妙に鋭い推理に俺は何も言えなかった。
「やっぱり……はーくんを唆す泥棒猫め」
なんか変なこと言ってる……。
「とにかく!帰るわよ」
俺は先を行く玲香の耳まで赤く染まった後ろ姿を追った。
☆
二人で校門に近付くと、活動中の姉貴と偶然鉢合わせた。
「あ、二人とも。今帰り?」
「はい、はる姉さん。一足先にはーくんと帰ります」
「……随分仲の良い呼び名だね?れいちゃん?」
何故か姉貴は玲香に圧をかけていた。
「はい、私はもう逃げませんから」
「……そう」
姉貴の威圧感が消え、いつもの調子に戻った。
「じゃあ二人とも、気を付けてねー」
俺はただ見てるだけで二人の間に何があったのか、少し気になった。
☆
校門を出て、歩いて帰路に着く俺と玲香。
いつもならチラチラと視線を送るだけの玲香は、何処か嬉しそうな雰囲気を醸し出していた。
「ねえ」
突然玲香から話し掛けられる。
「な、何?」
「家、行っても良い?」
あの玲香が放課後、俺の家に来る……だと?
「どういうのが必要なのか、色々と教えて欲しいの」
俺に告白した後、一緒に伝えたゲームの事か?別に今じゃなくても良いって言ってたような……。
「それ、休みの日じゃダメなのか?」
「駄目。休みの日に買いに行くんだから予算とか考えなきゃいけないの」
「え……?本当にやるのか?」
本当に玲香に何があったんだ?
「……何よ?私がゲームなんて信じられないの?」
「それもだけど……告白も急すぎて、俺なんて言えば良いのか分からないんだ」
今日は流石に色々ありすぎて頭の中が一杯で脳の処理が追い付かない。少しでも考える時間が欲しい。
別に姉貴に聞いても良いが、本人が居る今のうちに聞いておきたいことを聞いてみた。
「昨日、姉貴と何かあった?」
「え?」
「いや昨日、姉貴が部屋に来ててさ……普段なら興味ないゲームを真剣になって観てたっぽいのと、帰りの姉貴の態度が気になって」
玲香は一度は驚いてたが、一旦冷静になって静かに口を開いた。
「……相談、してたの。どうすればはーくんとの距離を縮められるか、あの転校生に負けないで済むか。とか色々」
それで姉貴の奴……成る程な。
「告白は……はる姉さんが言っちゃえって言ったからで……キ、ス……も」
「……全くあの姉貴は」
「で、でも……!す、好きって気持ちは……嘘じゃない、から」
涙目で真っ赤になった顔をした玲香が、なんとなく可愛くて愛おしく感じた。
「分かってる。そういうことなら昔使ってた奴あげるよ」
「い、良いの……?」
「うん。どうせもう使わないし、姉貴もあの感じじゃやりたいなんて言わないだろうしさ」
あの玲香と一緒にゲーム、か。
考えただけでなんか楽しくなってきた。
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