第10話 変化

 あの後も何試合か回してちょうど時間が良い頃合いになった。

 明日も学校がある以上、ずっとは起きてられない。


「今日はありがと、色々と助かったよ」


『こちらこそ助かりました!次までには絶対に追い付きますね!』


「あまり無理せずに頑張ってね。じゃあお疲れ様ー」


 そのまま解散となりゲームを閉じた。

 ゲーミングヘッドセットを外すと、背後から聞き慣れた声が聞こえてくる。


「お疲れ様はやちゃん」


「どうしたんだ姉貴?普段ならもう寝てるのに珍しいな」


「なんだか楽しそうな声がしたから気になってこっそり後ろでずーっと見てたの、なんかごめんね?すっごく格好良かったよ」


 まさかあの姉貴から褒められるなんて全く思ってなかった。


「……ゲームは興味ないって」


「あの当時は興味なんてなかったけど、私も変わったの」


「……そっか」


 俺は敢えて聞かなかった。

 俺の過去と父親との仲違いの原因が関与してるのは、身を以て知ってるから。


「じゃあ私は寝るから、はやちゃんも早く寝なさい」


「そのつもり、じゃあおやすみ」


「おやすみー」


 姉貴は笑顔で手を振りながら部屋を出ていった。






 ☆






 そして翌朝。


「――起きて。颯斗」


 今日も玲香が俺を起こしに来る。

 姉貴は生徒会長な為、俺を起こす暇なんてなく既に学校だ。


「んんっ……おはよ」


 普段はごねる俺が珍しく素直に起きたことに驚く玲香。


「なんだよその顔は」


「いや……あの颯斗が起きたから」


「最近はちゃんと早く寝てるっての、もうじゃないんだ」


 俺だって成長ぐらいする。

 いつまでも玲香にお世話されっぱなしはなんか癪だし。


「じゃあ外で待ってるね?」


「後で行く」


 玲香が部屋を出たのを確認してから制服に着替えて、朝御飯を食べた後に玄関で待つ玲香の元へ急いだ。


「遅いっ」


「飯食ってたんだからしゃーねえだろ」


 玲香はなんか呟いた気がしたけど、声が小さくて聞こえなかった。

 俺は改めて玲香の制服姿を眺める。

 髪は綺麗な黒髪でセミロング、胸は流石に姉貴には負けるが匹敵するぐらいの大きさ、いわゆるザお嬢様。

 顔のパーツなんて一つ一つが整ってて、一目惚れする人は数多く存在したようだ。


「な、何よ……?ジロジロと見て」


 頬を赤らめて目を逸らし、髪をくるくると巻き付ける。


「改めて見ると玲香ってさ、すっげえ可愛いんだなって」


「は、はぁっ?!?か、かわっ……!?」


「玲香?」


 いつもならここで鉄拳なり平手打ちが飛んでくるのに、今日に限っては出てこない。何があったんだろうか?

 玲香は後ろを向いていて、今どんな表情をしてるのか見えない。


「ふ、ふーん……わ、私の事……か、可愛いんだ?」


「まっお前は運動出来ないけどな」


 その後鉄拳が腹に飛んできたのは言うまでもなかった。

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