第9話 ゾーン
現在俺がやっているゲームは巷では大人気のFPSタイトル『Vermont』。
数年前に流行った戦略型爆破系のタイトルを今流行りの能力型にした新しいFPSゲーム。
このゲームはマネーという概念が存在しており、ラウンドが進むにつれて増えたり減ったりしていく。
試合が始まって数ラウンド取った時、俺達のチームは少し劣勢だった。
というのも、俺が足を引っ張ってしまっている。
それでも仲間のお陰でなんとか食らいついていた。
「三対五か……四本は確実に欲しい」
その為にもやっぱり俺が何処かで流れを変えなければいけない。
幸いさっきのラウンドを取れたのでフルバイは出来た。
俺はスコアと相手の傾向を思い出して、次の手を考える。
(今アルティメットを使えるのは俺だけ、でも開幕に使うのは得策じゃない。相手だってそれが分かってる)
けれど打開策が見つからない。
そんなこんなで九ラウンド目が始まり、俺は味方に合わせて進むしかなさそうだ。
☆
合わせて動いていた俺はCポイントに爆弾を設置は出来た。
相手は解除するために全力で向かってくる。
起爆まで半分を切った、やるならここしかない。
俺はここでアルティメットを切り、敵を索敵させる。
アルティメットスキルは三つの精霊のようなものを出し、自分の代わりに突っ込んでいくもの。
幸い敵は全員同じところに居るようで、そっちに向かって走っている。
『ごめん、もう一人ガレージに居た。体力は半分』
Zachさんの個人チャットの報告でまず一人の位置を特定することが出来た。
Zachさんがやられてしまい、人数状況は二対四で益々不利になっていく。
「考えてもしゃーねえ!やるだけやってやる!」
俺は形勢を変えるために受け身のスタイルから、本来の強気に撃ち合っていくスタイルに変える。
まずはガレージの奴を落とし、カバーに来ていた相手もダブルキルを発生させた。
これで人数状況は同じ二人だけど、現地に居た筈の味方はCロングまで引いて時間を稼ごうとしていた。
「そんなとこまで引いてどうすんだ!」
俺はガレージから窓枠に移動してCポイント側の敵の背後を取ろうと動く。
やはり敵も警戒してこっちを見ていたけど、飛び出していたおかげでトリプルキル。
劣勢だった状況が一転し、優勢に代わる。
『解除入ってるよ!』
俺は自分が設置した爆弾に向かって銃を乱射した――。
☆
「よっし!ダイヤ到達!」
あの俺の起点によって流れが変わり、クワドラキルが発生して味方の士気が最高潮になり、勢いそのままに無理なく勝てた。
ランクポイントは活躍ボーナスによって少し盛られた。
『おめでとうございます!私もいつか追い付きますね』
「ありがと、でも防衛は逆に何も出来なかったなぁ」
俺が逆転クラッチを決めた後は殆どZachさんの活躍で終わってしまった。
それだけ俺とは違う上手さを兼ね備えてるから凄い。
『そんなことないですって、カバーリング上手いじゃないですか』
「逆にそれしかないんですよ俺には」
『カバーリングの上手さなんて出来る人と出来ない人が居るんですよ?少なくとも私のプレイスタイル的に真似出来ません』
必死にフォローしてくれるZachさん、相当良い人なんだなと勝手に思った俺であった。
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