第7話 残念系女子
二人がバチバチと火花を飛ばし合い睨み合う中、俺の神経がすり減っていく。
俺は早く帰りたいのに、この二人はそうさせてくれない。
「桐原さん、いい加減にして」
「そっちこそ」
そこへ助け船がやってきた。
「貴女達!またそうやって喧嘩して……!ここは学校ですよ!?」
それはわが校の生徒会長兼俺の姉である
唯一家族の中で俺の事を良く理解してくれる人でもあり、かなりのブラコンを拗らせた残念系女子。
「……はやちゃん?後で憶えてね?」
「勝手に心の声を読むな、バカ姉貴」
「れいちゃん!はやちゃんがこの私に向かってバカって言った!バカははやちゃんなのに!」
こう見えてもかなりの美少女なんだけど、ご覧の通り俺を溺愛しすぎる余りはやちゃんだなんて愛称?で呼んでくる。
どうしてそうなったのかは、俺の過去が関わっている。
「……そんなこと知らないよ、はる姉さん」
これには流石の玲香も頭を抱えた。
「まあ助かったよ、姉貴」
「ふふーん、もっと褒めてよー?」
「……前言撤回で」
皆の前だと言うのにこのノリで生徒会長なんてやってんだから、人は見かけによらぬものなんだなと思い知らされる野次馬達。
何も知らない桐原はただ黙って俺達を観察していた。
☆
あの後、桐原は気が変わったのか一人で帰ると言い出して修羅場騒動はひとまず一件落着。
俺と玲香、そして姉貴を合わせた三人で帰路に着く。
「はやちゃん、今日は何するつもりなの?」
「まだなんにも考えてない」
「じゃあ今日こそ付き合ってくれる?」
その言葉を聞いて焦る玲香、かなり動揺したのかその場で止まって俺達に視線を向ける。
「……やだよめんどくせえ、帰ってゲームさせろ」
「そんなのじゃまた怒られちゃうよ?」
「いいよ別に……俺がやりたいことやってるだけなんだから」
そんなことお構いなしに話が進んだせいで、隣に居た筈の玲香が居ないことに気付いた。
玲香は俺をじっと見つめている。
「玲香?」
「……あ、ごめん。用事思い出したから帰るね!」
玲香は走って家に帰り、姉貴と二人きりになる。
「……はるちゃーん?」
俺は今絶対に振り返ってはいけないと全神経がコンディションレッド発令中。
また怒られる!そう思っていた筈なのに、背中から感じたのは姉貴の豊満な胸が伝わってくる感触だった。
「あれれー?照れてるのかな?ふふっ、そういうとこ好き」
「……うっせ」
端から見れば、姉貴の言う通り俺達二人って彼女が彼氏に甘えているような感じに見えるのだろうか?
俺は出来ればそう思いたくない。だって俺と姉貴は……。
「何があってもお姉ちゃんは颯斗の味方だよ。ゲーマーとして生きていくはやちゃんを私は例え一人でも応援する」
「姉貴……」
「だって、たった一人の弟で唯一の家族なんだから……」
そう、俺達二人には両親が居ない。
母親は俺を遺し、既にこの世を旅立っており俺は母さんの顔は遺影しか知らない。
父親は俺が小四の頃に、無理をした結果過労で死んだ。
「……分かってる」
俺達は一時期施設に預けられて、姉貴が高校に入った頃に二人暮らし。
姉貴は自分のやりたいことを犠牲にしてまで、俺を全力で支えてくれた。
俺は誰かの為に犠牲になれる、そんな姉さんが誇らしかった。
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